反撃のグラディオスA02
結局、ミーティングには間に合わなかった。
俺たちのミーティングが10分では済まなかったからだ。
でも、脳内チップを介して、リモートで参加はしている。きっとモニターには俺のアイコンが表示されているはずだ。
最初に各セクションからの報告。どれも似たようなものだ。
状況は好転せず。欠員した人員も復帰が見込めず、操舵には影響がないものの、どこかで遅れが生じるかもしれない。
機関科の報告。後部レイライトリアクターに問題なし。推進器は修復。これはいい。
アーレスの報告。ミサイルは使えない。片舷のビーム砲、リニアキャノンは修復できた。だが多用はできない。
カイドウの報告。あの雷撃を食らって、ケーブルに接続したガリウスGがショート。修復はできたが不安あり。一部機能が未だ停止。ジャケットは使えない。各機、ソータのファストパックで推進力を増強するしかない。
こんなところだ。
絶体絶命。まともに戦えないし、まともに戦える相手でもない。
誰もが死を連想し、消沈していく。
そんな時。狙ったような、というか狙ってたんだけど、そこで俺がミーティングルームに入った。
「遅くなりました。申し訳ありません」
「………」
おっと。無言の圧力。
最初のミーティングより人員が増えてる。全員が俺を無言で見ていた。
クランドもそう。俺を叱らない。
いや、これは───
「エース・ノギ」
「はい。艦長」
「きみは………意味もなくミーティングに遅れるような男では………ない」
今にも消え入りそうな声で言うクランド。
葛藤しているんだな。続きを言うべきか。言えば、自分が許せなくなるくらい情けなく思うだろう。活路を見出せない艦長であると。
………そうか。みんな、そうなんだな。
ソータ、アイリ、ヒナ、シェリー、ユリン、ハーモン、コウ、シドウ、カイドウ、アーレス、レイシアも。
整備科も、砲雷科も、機関科も、航海航宙科も、船務科も、衛生科も、補給科も。
学徒兵の同級生らも、下級生らも。
みんな、俺を待っていたのか。
大人として子供に頼ってはいけない。プライドもあるだろう。エリートの軍人揃いの最新鋭艦のクルーとして、守るべき市民に頼ってしまうという、掲げていたはずの指針を曲げることになるのだから。
「だが………それでも………もし………」
歯切れの悪い艦長さんだこと。
はっきり言えばいいのにね。
あーあ。見ちゃいられねぇな。
暗いったら、ありゃしない。
「艦長。少し、時間をいただいてもいいですか?」
「………いいだろう」
「どうも。ではメインモニターをお借りします」
脳内チップを介して、モニターを切り替える。腕の端末に同期して、作り上げたものを展開した。
照明を落としたミーティングルームが、より暗転する。
そして、次に現れた文字に、クルーは震撼せずにはいられなかった。
「お、ぉお………ぉおおお!」
「これは………っ」
「OPERATION-TENHA………!?」
アーレスが縋るような声をあげると、モニターに映し出された作戦名に、震えるクルーたち。
俺の、俺たちのプレゼーテーションだ。オペレーションテンハ。天破作戦。名付けたのは俺だ。いや、本編ではカイドウが名付けるんだけど。これからやるのは天を破るなんてことはしない。むしろ逆だ。絶対に天破なんて名付けない。だから先んじて作戦名だけを考案した。
「エース・ノギ………これは、いったい」
目を丸くするクランド。
俺はクランドに、強気な笑みを浮かべてみせた。クランドは息を呑み、汗を滲ませる。
「まぁ、足掻けるだけ足掻いて、生きて地球に降りましょうや。………そのためには………来い! クスド!」
「はい! 失礼します!」
大声でクスドを呼ぶ。ミーティングルームの外で待機してもらっていた。クスドは呼応し、大声で叫びながら入室する。こういう演出は大事だからな。
本編では意気消沈した雰囲気のなかを、焦りながらクスドが入り、プレゼンした。最初こそ嘲笑されていたが、次第に誰も笑わず、前のめりになったものだ。
それと比較すると今回は───嘲笑というよりも、一部でなにかに気付いたような「ククク」と低い笑い声が目立つ。
そんな笑い声に対して、クスドは自信のある笑顔を浮かべ、胸を張る。
大した成長だ。本編とは比べものにならない。
「今回の、オペレーションテンハの作戦立案者、クスドです。ご存じのとおり、彼は予備のパイロットですが、俺は以前から彼の能力の高さに着目し、パイロットとして育成するよりも、作戦のアドバイザーになれるよう指導しました。間に合ってくれました。大したものですよ。クスドは」
「作戦アドバイザー………参謀に近いか」
「ええ。そうなります」
クランドは未だ脱力に近い状態にあったが、眼光が戻りつつある。
ミーティングルームに火がついた。それはまだ蝋燭に灯された火の大きさだが、俺が旋風を巻き起こし、巨大な炎にしてみせる。自信はあった。クスドの能力がここまで高くなるとは、俺も考えていなかったのもある。
「クスドには以前より、Eタイプに対する攻略法をシミュレーションさせていました。当初こそEランクでしたが、単独での出現なら、現在はAランクを叩き出しております」
「Aランクだって!?」
「マジかよ。おいクスド。お前そんな能力があったのか」
アーレスとカイドウが驚愕する。
「だが、Eタイプが2体となると話が違うだろう?」
「ええ。ですがEタイプ1体に対しAランクを得たのは昨日とかの話ではありません。先週だったよな? クスド」
「はい。Sランクを目指していたところに、Eタイプが2体出現してしまいました」
「Sランク………!?」
クランドも驚愕して言葉を失う。わかるよ。俺もそうだった。飛び跳ねながら報告に来たクスドにしばらく絶句していた。
「クスド。たった3時間しかなかったけど、Eタイプ2体に対し、現状のグラディオスの総力で………どれくらい戦えた? ランクは?」
この質問に、全員が固唾を呑んで見守った。
いきなりランクを尋ねた。勝敗の是非ではない。勝利を前提とした質問だ。
「………申し訳ありません。Bランクが限界でした」
「Bランク………」
「いや、Bって………」
「多分、俺がやってもFにもならねぇぞ………」
「クスドって頭おかしいのか? だって、Bって………勝ってるじゃん!」
そう。Bは勝利している。辛勝ではあるが、勝利には違いないのだ。
この判定に、クランド、アーレス、カイドウは目玉が落ちそうになるくらい、目を見開いた。驚愕しかないもんな。
「クスド。味方陣営の損害率は?」
「………40パーセントに留めるのが、ギリギリでした」
「敵の討伐は?」
「BやCタイプは無視して、Eタイプだけを狙った結果、2体とも消滅させられました」
「なるほどね。まぁ、こっちの損害率が40パーセントってのは気になるけど、そんなの機械が弾き出した予想だ。心配しなくていいぞ。そんなの、俺たちの気合いや気概でどうにでもできる。だからお前は、クランド艦長の近くにいて、これから始まるかもしれないオペレーションテンハについてのアドバイザーになるんだ。さぁ、なんでクスドがBランクなんて叩き出せたのか気になる方も多いでしょう。ご説明します。実は、そのための資料を作ってて遅れてしまったんですよ。申し訳ありません」
苦笑しながら頭を下げる。クスドも俺に倣ってペコリと頭を下げた。
「い、いや………待て………待ってくれ。その資料の製作のための遅刻なら………問わん。ああ。構わないさ。………Bランクの作戦を………本当に、きみが作ったというなら………わ、我々は………とんでもない逸材を………」
あらら。クランドは未だ半分くらい夢のなかにいるみたいだね。
錯乱し始めて、アーレスに腕を掴まれると、カイドウが差し出したパイプ椅子に強引に着席させられた。
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