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反撃のグラディオスA01

 プロットした立体図では、高高度───それこそ大気圏外にある廃コロニーに入港した、とある宇宙戦艦のポジションを示していた。


 自室のベッドに横たわる傷だらけの男。真新しい傷と古傷。どちらも隣にいる女───副艦長のエマが、愛でるように舐めていた。


「………そろそろ、動く頃かな」


 地球の、隠された日本支部にて。隠されたドッグに収容されたアリスランドの自室のベッドで、ビーツは瞳を開いた。


「ビーツ?」


「いや、こっちの話だ」


 ビーツの声に顔を上げるエマ。


 彼女は優秀な軍人で、ビーツがアリスランドにスカウトしたひとりだ。


 最初こそアリスランドの異常性に異を唱え、本部に密告したのだが、重鎮でありビーツの後ろ盾になっているオルコットという男性に握り潰され、果てにはビーツの毒牙にかかり、肉欲の対象となった。


 それが今となってはビーツのテクニックに魅了され、相性もいいことから、周りの女性とは違う、それこそ本妻のようなポジションにいた。


 ビーツは朝も昼も夜もなく女を抱く。飽きることない性欲。枯渇することのない体力。睡眠と食欲を犠牲とし、人間である自分を保っていた。


 で、あるにも関わらず、エマを抱く時だけは彼女ひとりなのだ。酒池肉林を興じるビーツらしからぬ、たったひとりの女を愛する、ひとりの男に戻っているかのような充実感があるからかもしれない。


「エマ。オルコットに連絡しな。俺はこのあと………そうだな。2週間後くらいにローマ支部跡地に単独で移動するから、しばらく連絡できなくなるってよ」


「あら、意外だわ。私の報告、忘れてたのかと思った」


「そういうなって。先遣隊が壊滅したんだ。俺だって様子見くらいするさ」


「仕方ないわね。………戻ってきたらコーヒー淹れてあげる。一緒に飲みましょ。………ん」


 エマは裸体を起こし、ビーツに深く口付けをして、床に散乱した下着類を手早くつけると軍服を羽織る。


 アリスランドはビーツが支配した。ビーツだけの王朝である。前艦長を事故を装って殺害し、ビーツは欲しいものをすべて手にした。それにも関わらず、渇きに支配されている。そんな飽くなき欲望の権化たるビーツは、男を周囲におかず、女性のみを近くに配置した。


 それにゆえに、軍服のボタンも閉めずに部屋を出られるエマ。どうせすれ違うのは女性だけだ。見られても関係ない。


 エマが部屋を出て、孤独に戻るビーツ。


 再び広いベッドに長い手足を放り出す。たまには開放感があっていい。いつもは全裸の女が数人いて、ビーツと体温を共有していた。狭くなるが異性の柔らかな感触に包まれて充実していた。


「さて………くくく。()()()のやつは、やっと第11話を切り抜けたか。それにしたってEタイプが2体とは………マジで運がねぇな、あいつ。俺だってこうも変化するとは思っていなかった。………とすると、そろそろ第12話か。いつもと違って、たった1日で、いや数時間で終わる。第13話まで半年かかるし………暇になるかと思いきや、原作にはない変化がローマにあった。こりゃあ………最悪、やつを利用した方がいいのか………」


 独りごちながら瞳を閉じた。


 脳内チップを介して、ハンガーの様子を見る。


 大気圏内装備に換装した第八世代ガリウスH。そして漆黒のタキオン。最後に………その奥にある、あと少しで完成する漆黒の機体があった。


「奴に見せつけてやるべきか………いや、データを取られでもすりゃ面倒だ。しゃーねぇな。俺もガリウスHで出るか」


 瞳を開き、意識を肉体に戻す。ベッドから起きがり、シャワールームに入った。


「精々、足掻くことだな小此木。もう原作どおりの、第12話で見せた攻略法はEタイプが複数現れたことで使えなくなった。一番の見どころなのになぁ。気の毒だが、それがお前の運命だというなら………あーあ。ドローンカメラを何機かあの空間に残してくるべきだったか。惜しいことをしたな。どんな方法で突破してくるのか、見てみたかった」


 唇を吊り上げるビーツ。


 高みの見物にしては、低いところからの見物だ。だが、放棄されたはずの日本支部からなら、ギリギリで観測が可能な距離である。


「くくく………ははは………苦しめ。苦しみを楽しめ。小此木ぃ。お前が悪いんだ。お前なんかがグラディオスの側に転生するから………どうして………どうして俺じゃないんだ。俺の方が優秀だって証明できるのに! なんで俺が敵側に転生して………俺の方がもっと輝けるのに! ぁぁぁ………ああああ! 憎い! 小此木めっ、死ね! 死んじまえ! 俺がアリスランド側に転生して、どれだけ苦労したのかも知らないで、のうのうと主人公サイドを楽しんでんだろうなぁあいつは! ふざけんな! アリスランドみてぇな肥溜めで、初めてできた………ナンシーが………小此木………そうか。全部小此木が悪いんだ。きっと小此木の陰謀だ。そうだ。そうに違いない。だってそうだろ? 優秀な俺を、なにをしても平々凡々だったあいつが上回るためには、きっと卑怯な手段を使ったんだ! くそっ………返せ………俺がグラディオス側に転生して、栄典するはずだった人生を返せよ小此木ぃぃぃいいいっ!」






 どこかで、誰かが叫んでいた。


 そんな気がした。


「………時間だ」


「ん」


「そうですね」


「3時間って早いわねぇ」


 3回絞られた俺は、ベッドの上で覚醒した。


 ヒナたちはすでにシャワーを済ませて、着替えて、軽食していた。体力ありすぎだろこいつら。


 俺は時間ギリギリまで寝た。寝る他なかった。気絶したし。


 でも不思議と、脳内チップのキャパは戻っていたんだな。妙に頭が軽い。体はちょっと倦怠感があるけど。


 俺もシャワーを短時間で済ませて、服を着て、ヒナが用意してくれたエネルギーバーを貪る。腹が減った。これで三大欲求は満たせた。俺は俺でいられた。


 もちろん、ソータとアイリのことは忘れていない。脳内チップにタイマー設定をしていたから、しっかり1時間でロックを外した。あとでカメラと盗聴器を回収しないと。ぬへへぇ。趣味悪いねぇ。


 ソータとアイリのイチャイチャラブラブの駄文を書いていた身としちゃ、後輩たちの情事も気になるのよ。ふたりには知られてはいけない。これは個人で楽しむための………ぬふっ。


 いや。今はやめよう。もう二度としない。こんな盗撮魔みたいなことは。


「お前たち、先にミーティングルームに行っててくれ」


「エー先輩は?」


「準備がある。ほら、俺ってなぜかみんなに期待されてるから。そういう演出が必要なんだよ」


 半分嘘です。更衣室に設置したカメラと盗聴器を回収するためです。家宝にします。我ながらキモいなぁ。


 ヒナたちが揃ってミーティングルームに向かう。3時間まで、あと10分。


 腕の端末を使って、とある人物にコールした。最後のミーティングだ。彼の存在が必要不可欠だった。


リアクションありがとうございます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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