終焉の譜B08
「ビームシールド! 出力全開!」
『警告。タキオンのダメージが許容値を超えています。レイライトリアクターが停止し、生命維持装置が作動しなくなる可能性が───』
「うるせぇ! 俺に従え!」
ハルモニの制止を振り切って、脳内チップでタキオンの両腕のビームシールドを展開した。
途端に、発熱と頭痛、吐き気と倦怠感が襲う。強めの酒をがぶ飲みした翌日のような症状よりも酷い。
それでも俺が盾にならなければならない。限界値に達した脳内チップでは性能の限界があるが、アドレナリンの過剰分泌でEタイプの雷撃がスローモーションのように見えた。タキオンの動作も遅い。それでもまだ間に合う。
すべてがスローモーションとなった世界でも、俺の思考だけは通常と変わらない速度で回転している。
雷撃はやはりグラディオスを狙っていた。また、グラディオスも俺の指示どおり、冷却剤弾頭誘導弾とスモーク、チャフを発射している。雷撃ですべて吹き飛ばされないように俺が盾となり、俺が構築したすべてを敢行しなければならない。
「う、がっ」
雷撃がビームシールドを直撃する。右腕のコアが弾けたが、左腕のコアはまだ生きている。
この判断は正解だった。雷撃が逸れてグラディオスの上を通過する。
『次撃、来ます』
「は?」
嘘だろ。と目と耳を疑った。
傷無しの方のEタイプが、角に紫色の光を纏い、放った。
「クソがぁあああああああああああ!」
左腕のビームシールドで受ける。だが片手では足りなかった。
コアが消失し、腕ごと焼き切られる。
雷撃が先程のレイライトブラスターのお返しだと言わんばかりに、グラディオスに直撃した。
「くそ、が………」
『エー先輩! 戻るよ! 大丈夫。グラディオスはダメージこそ受けたけど、まだ飛べるから!』
ヒナの六号機がタキオンを救出に現れた。抱えられてグラディオスに戻る。
もう、なにも言えなかった。俺自身の限界だ。やはり連戦となると、脳内チップに支障が出て言語機能が停止してしまう。
辛うじてグラディオスを見た。メインスラスターは無事だが、今の一撃で酷く損傷している。
六号機はグラディオスの前方に回ると、ガイドビーコンを出す余裕もないカタパルトに強引に突撃した。緊急着艦システムが作動し、六号機とタキオンはネットに捕縛されて停止。ただタキオンは損壊部分が多いため、冷却と消火を兼ねた冷却剤が散布された。
すべてが正常とは言えないが、熱は冷めたタキオンを六号機が抱え、隔壁が開いたハンガーにゆっくりと運び入れた───その時。
『きゃあああっ!』
『うわぁああ!?』
『被弾したぞ!』
『どこだ!?』
『メインスラスターではありません! まだ動けます! アンノウンEタイプ、冷却剤弾頭誘導弾命中! スモーク、アンチレーダーチャフ正常に作動! グラディオス、宙域を突破します。Eに動き無し!』
ハンガーで一際大きな振動があり、照明が明滅する。それだけならまだしも、一瞬だけグラディオスとのリンクが切れた。機関部ではないものの、どこかに3撃目が被弾したのかもしれない。
整備士たちが騒ぐなか、アイリだけは八号機から冷静に戦況を告げる。ガンビッドはソータとともに帰還したが、アイリのドローンカメラだけは依然として艦外にいる。本格的に加速した今、主翼のハードポイントに接続して後部を見張る役目を果たしていた。
俺もドローンカメラのひとつを拝借する。脳内チップを駆使すると目眩と頭痛がするが、艦の外を見ずにはいられなかった。
冷却剤を弾頭に詰めて誘導弾で発射するのは原作にあった作戦だ。いかにEタイプとはいえ、熱を奪われてはすぐには動けない。スモークでグラディオスを隠し、アンチレーダーチャフでアンノウンの嗅覚を奪う。
これでグラディオスは逃亡できる。
明らかな敗北。ただし、次の勝利に繋がる、意味のある敗退だ。
「Eタイプが………雷を使うなんて………炎熱を吐く以外に………そんな………」
Eタイプの最後の追撃。
それは原作にはない攻撃だった。アンノウンは熱の塊である。よって使うのは炎くらいなのだが、電流まで発生させられるなんて見たことがない。
原作破壊行為のツケ。歪められた史実が、こんな形となり跳ね返り、グラディオスを襲った。
俺の責任だ。俺が推し活を優先したばかりに、本編にはなかったラスボスの増殖と、パターンにない攻撃を発生させてしまった。
最悪な展開だった。
「結果として述べよう。………グラディオスは、戦える状態ではない」
敗退から2時間後。Eタイプの追撃もなく、罠から脱したグラディオスは、近年アンノウンに襲われて無人となった、中破したコロニーの港に接舷していた。
そのコロニーを待避壕とし、アンノウンの索敵から逃れてやり過ごし、ダメージを受けた場所の修理を行っていた。
ミーティングルームに集まったのはグラディオスの各セクションのリーダー。そしてパイロットの全員。
「クソが! こんなところでよぉ………!」
ハーモンは悔しそうにデスクを拳で叩いた。
ミーティングルームのモニターには、外の景色が広がっている。ドローンカメラをコロニーの外に設置し、ハルモニに見張らせていた。その景色があるからこそ、ハーモンの悔しさが現れている。
小休憩後、ミーティングルームに集合をかけられた俺たちは、今後の指針について話し合っていた。
すべての状況を通達されたクランドの、やるせなさの現れた現状報告。
俺たちは今、遠回りをして、やっと地球を目前としたポイントに駐在するしかなかった。
もう、目と鼻の先なのだ。なんなら数時間もあれば、地球に降下できる。
だが、今それをやると確実にEタイプに発見されてしまう。
忘れてはいけない。アンノウンにはワープ能力があることを。
もしかしたらすでに発見されていて、グラディオスの最後の足掻きについて高みの見物をしているのかもしれないが。
「艦長。連合軍本部に連絡をして、増援を呼ぶことはできないのでしょうか?」
アーレスが問う。
しかしクランドはかぶりを振った。
「もう問い合わせたが………本部の返答は芳しくなかった。艦隊を月方面へ動かしているらしい。………間に合わんだろう」
「では、やはり」
「グラディオスのみでEタイプ、それも2体を撃破せよ。とのことだ。豚どもは本艦を囮に、遠くへ逃げたいらしいな」
「………我々は生贄として捧げられたのですか。つまらない時間稼ぎのために。………誠、豚ですな。本部の人間は」
あのアーレスでさえ辛辣な評価となる。
それは本編でもあったとおりだった。
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