終焉の譜B07
そういえば、レイライトブラスターをこの目で見るのは始めてだった。いつも画面の向こう側からだったし、この世界に転生してからは、レイライトブラスターを管理する区画で暗躍していたし。
それで、いざやっとその機会を得たと思ったら、まさかの俺がターゲット。フレンドリーファイアの極み。
この鬼畜的所業は、俺の発想の転換というべきか、命を投げ出すことも同然の賭けだった。
すべてはタキオンのスペックと、パピヨンジャケットの性能にかかっている。
タキオンはすべてのガリウスの上位互換だ。レイライトリアクターの出力も高い。そこから生産されるエネルギーがあるからこそ、4機のガンビッドへ同時にエネルギーを供給できるのだ。
ユリンの二号機よりも高い出力ゆえにパピヨンジャケットのビームウィングも刺々しくなり、矛盾を抱えながらも意外な空力特性と安定した機動を実現した。案外、大気圏内であっても予想を上回る機動を見せるかもしれない。
要点は機動性ではなく、ビームウィングの揚力だ。
物理的、そして光学的な攻撃に対して揚力によって回避を促すジャケット。触れる前に相手の攻撃力の速度と衝撃を利用する翼。だが実際には、これは相手の攻撃の機動を変えず自分が避けるという特性であるものの、出力を上げれば相手の攻撃の軌道を変えられることに気付いたのだ。
ガリウスGのレイライトリアクターでは数秒が限界だが、タキオンなら数十秒は持続する。それが高性能AIであるハルモニが出した結論である。
タキオンから発するビームウィングが、より拡大していく。それはまるで、蝶ではなく、鳥の翼だ。もはやパピヨンの名に相応しくない形状である。
そのビームウィングがタキオンを包み込む。
コクーン状───いや、前面へより展開している。ハルモニが導いた最適解だ。
そして今、オペレーターがカウントダウンを終え、クランドの掛け声と同時にレイライトブラスターが放たれる。
淡い緑色のビーム砲だった。ただしその直径はタキオンを軽く2機分並べても両端が届かないほど広い。
息を呑む。すぐにビーム砲が来る。
「うっ───!」
怖い。死ぬかもしれない。
でもやるしかない。意を決する。みんなを守るのは俺だ。
斜め下からの砲撃。タキオンを直撃。
ビームの嵐に呑まれる。それでもタキオンは健在。通信のすべてにノイズが入る。みんな心配そうに叫んでる。
「う、ぐ………ぉ、ぉ、ぉお、ぅおおおおおおおおおおおおお!!」
確か、巨大なレーザー砲からコロニーを守るため、自機を盾にサイコティックなフィールドを展開したアニメがあったっけ。天才だと思った。感動した。覚醒も兼ねた演出に、涙を浮かべた覚えがある。
丁度、まさにそんな感じ。
コクピットだけでなくタキオンが激しく振動する。パピヨンジャケットが無ければ、もうとっくに消滅していた。
飛びそうになる意識を繋ぎ止め、動かす必要のない操縦桿に左手を伸ばして掴み、しがみ付く。
「ハルモニィィイイ! 今、っだぁああああ!」
《イェス。メカニック・エース》
神経接続で操縦桿を操る必要はないとはいえ、こんな状態では俺の脳波もまともに機能するはずがない。ハルモニに補助してもらった。
激しいビームの奔流を逆らうように進む。タキオンならびにパピヨンジャケットはまだ生きていた。
角度を修正。
光の屈折をイメージ。陽光を鏡で屈折させ、異なる場所にスポットを当てるように。
ブワッとレイライトブラスターに変化が起きた。斜め下から打ち上げられたそれが、ついに軌道を変える。
「みんなぁああああ! ソータァアアアアアア! 避けろぉぉおおおおお!!」
どうか全員に聴こえていますように。と願いながらレイライトブラスターを屈折させる。
そして「くの字」状に曲がるレイライトブラスター。
《メカニック・エース。パピヨンジャケットの耐久値限界まで、あと20秒です》
「だあ、くそっ! レイライトブラスターが強すぎるのか! でも20秒もあれば、どっちも焼き切ってやるよぉぉおおおおおおおおお!!」
鶴翼の陣の左から狙う。屈折したビーム砲は左へと振り下ろされ、多くのアンノウンを消滅させる。
そしてタキオンの姿勢制御用のサブスラスターでゆっくりと左から右へと回転する。
タキオンを中継して、ついにグラディオスは背後の敵に主砲を直撃させることができた。
ビーム砲を刃のように一閃させる。
タキオンと同格のサイズのビームと、乱反射するビームが無差別で拡散してしまう。
それでも敵の攻勢を削ぐことはできた。Eタイプにも被弾している。
レイライトブラスターの掃射が終了すると同時にパピヨンジャケットも限界を迎えた。ハルモニが急ぎパージしていなければ爆発に巻き込まれていた。
「よし、今のうちに………え」
いかに小規模になってしまったとはいえ、レイライトブラスターの直撃を受けて、すぐ反撃に転じれるはずがない。
追撃ではなく撤退を優先。第11話の筋書きに戻す必要があった。
レーダーは狂っているが、辛うじて味方陣営の所在は掴めた。奇跡的に被害は軽微。最前線で孤軍奮闘していたソータの一号機も無事。全員、シドウの指示で撤退し、グラディオスに帰還しようとしていた。
ところが、アラートによってほぼ強引に意識を繋ぎ、タキオンのメインカメラに集中する。
「嘘………だろ」
絶句してしまう理由が、そこにあった。
まだ距離があり、敵は直掩を失いながらも足を止めている。それでも絶望する要素がある。
頭部にレイライトブラスターが直撃し、すぐには修復できないとはいえ、傷有りの方のEタイプに変化があった。
龍の頭部を模した全貌の、耳の上にある鹿の角のような部分で、淡い紫色の閃光が散った。
「なんだあれは………マジかよ………嘘だろ? やめろ………まだなにかしようってのか? させるか………させられるか!」
『メカニック・エース。脳内チップのキャパシティの限界です。これ以上の操縦は推奨できません』
「そんなこと言ってる場合か! Eタイプがまだ動いてる! ここで止めない限りどんな被害が出るかわからねぇ! グラディオス! クランド艦長! 冷却剤弾頭誘導弾、スモーク、アンチレーダーチャフを発射してください! 全速力で宙域の突破を!」
タキオンはグラディオスを通過し、帰投途中のソータをも追い抜いた。
仲間がなにか言おうとする前に、Eタイプの角で紫色の光───雷撃が発射された。
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次回は13時を予定しております。そのために0時の更新をしませんでした………というのは嘘で、ストックができていなかったからです。すみません。
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