終焉の譜B03
艦外カメラに接続して、状況を分析する。
緊急で下方に潜航するグラディオスは、後方と頭上のEタイプをうまく躱したものの、2体に背を向ける形で逃亡していた。
もちろんただ逃げ回るだけではない。グラディオスはガリウスと協力し全火力を叩き込む。
しかしビームやミサイルだけでは焼け石に水だ。グラディオスと同等の質量を持ちつつも、耐久値は上をいくアンノウン。このまま消耗戦を続けていては意味がない。
その上、傷痕のあるEタイプは、ついに口からアンノウンを射出。やはり隠し持っていた。ソータたちは、ここは原作どおり大量のアンノウンに追われてしまう形となる。
「………レイライトブラスターでなければ、Eタイプを倒すことはできないか」
ガリウスとタキオンはレイライトリアクターを積んでいるとはいえ、出力がグラディオスとは比較できないほど小さい。これは動力源となるリアクターの大きさも関係している。
一般家庭用のコンセントから供給できる電力で、観覧車は回せない。
「けどよ………反転しようにも、タイミングがな」
「うまく反転できたとしても、仮に1体を倒せたとして、もう1体をどうするか………でしょうね」
この2体のEタイプが厄介なのだ。どちらも特殊個体で、異様な成長を遂げて巨大化したアンノウン。
どちらを潰しても意味がない。
どちらも潰さなければならない。
第12話で使った方法が、使えない。あれは1体のEタイプを潰すための攻略法だ。それも失敗すればすべてが潰える。今回はもう1体が控えているゆえ、必ず反撃されてすべてが潰える。
「………おやっさん。こうなったら腹括るしかないかもしれません。用意してほしいものがあります」
「やるだけやるしかねぇか。だが、こっちも色々作ってばかりで、余計なものを製造している時間なんてなくてな。ガリウスの武装くらいしか量産できてねぇぞ」
「構いません。まずは………この状況を乗り切るのが先です。倒すことはできなくとも、体勢を整えなければ。反撃もできない」
このまま倒されるよりも、生き延びるのが先決だ。
生き残るための、そのすべてにかけた逃亡プランを伝えた。
「出撃は3分後に。俺が合図したら、グラディオスも撃つようクランド艦長に伝えてください」
「なにもやらねぇよかマシだな。今んとこ、お前以上の奇策を出せる奴もいねぇだろうしな。よし、わかった。任せろぃ」
カイドウはコクピットから出る。部下たちに装備の変更を伝達する。生きるか死ぬかの瀬戸際に、手前を惜しんだり最善を尽くさないような気骨のないクルーはいない。突然の換装に異論を唱えるような奴はカイドウの弟子に相応しくない。誰もが黙って作業を始めた。
「………ハルモニ。状況は?」
『パイロット・アイリのドローンカメラから戦況を分析します。………こちらの損耗率は20パーセントを超えました。なお、敵勢力の損耗率は5パーセントほどです』
厳しいな。
敵の総数を考えれば、ソータたちも今まで以上に奮闘している。多分だけど、40体くらいは倒しているはずだ。
ただし、忘れてはならない。戦闘が始まって、まだ数十分しか経過していないことを。
まだ序盤なのだ。これから中盤に差し掛かるだろうが、弾薬や推進剤の摩耗や、損傷などを総合していきなり20パーセント。まだやれることはやれるだろう。しかし、やはり長続きはしない数字だ。
だが、同時に忘れてはならないことが、もうひとつ。
それは今回の戦い───例えるなら第11話の現時点が第1ラウンドだとすれば、そこでKO判定を出さなければいいだけだ。どれだけポイントを奪われようが、次の第12話の第2ラウンドでこちらがKO判定を出せばいい。それだけのこと。
つまり、強引に勝つ必要はないのだ。
「………アイリ。まだやれるか?」
『かなり厳しいですけど、なんとか!』
アイリも大したものだ。
この瀬戸際でしのごのと言っていられないものな。使えるものがあればすべて使う。よって4機のドローンカメラを駆使してダイレクトサポートする以外にも、懸架しているビーム機銃でソータたちをフォローしている。
「おやっさん。ガンビッド、あとどれくらい使えますか?」
『量産できたのは10番までだけだぜ。2機はハーモンとコウにくれてやったんだろ。それは予備を出すから心配すんな』
ガンビッドはドローンカメラより生産性が劣るが、その分高性能だ。脳内チップがある俺だからこそ脳波で存分に操ることができる。
しかし、この時の俺は、ガンビッドの有用性を別のことで使えないかと考えていたが………途中でやめた。それは反撃の時だ。今のままでは反撃の時をも迎えられない。
「ドローンカメラの予備は?」
『アイリも奮闘してるんだが、この物量差じゃあな。22番まで量産できたが、次々と落とされてらぁ。今出してるのは17番までだぜ』
つまり、残り5機。それはまだいい。どうせ、地球に降りたら重力で無人兵器は飛べなくなる。ここでありったけのストックを使ってしまっても問題はない。
『よし。換装終了! いつでもいいぞ、エース!』
「無茶言ってすみません。おやっさん」
『気にすんな。現場の意見に応えるのが俺らメカニック家の仕事だぜ』
優秀な整備士たちが揃うと、やはりこうも違う。学徒兵だった同級生らや下級生たちも、もう一人前の顔をしていた。
カイドウはサムズアップを掲げ、背後にいる部下たちはタキオンを見上げて敬礼する。
クレーンが動き出し、固定具とともに開いたばかりの隔壁へ。それが閉まると、スロットにインターフェースを接続。タキオンを起動。直後、頭が重くなる。俺自身の疲労回復は効力を得なかったか。ただカイドウの調整で、脳内チップのキャパは少々回復していて、帰投前と比べると段違いに処理が早い。
「っ………じゃ、2回戦目といきますかね。ブリッジ! タキオン、出ます!」
『艦長の承認はすでに降りています。戦力差は依然として差が広がっています。どうか、奇跡をお願いします。副隊長』
「了解! エース・ノギ、タキオン! ブラストオフッ!」
カタパルトに接続されたタキオンが、スキージャンプの要領で加速し跳躍。
2体のEタイプから逃亡するグラディオスの直掩に回る。
『来たかエース。しかし、そのジャケットは』
『面白いわねぇ。まさか私の予備ジャケットを着てくるなんてねぇ!』
シドウだけでなく、ユリンも興奮気味に応えた。
そう、タキオンに装着しているのはガンビッドジャケットではない。
ユリンの二号機が装備しているパピヨンジャケットだった。
ただし、タキオンの設計との相性は悪くないのだが、その特性上、二号機のような蝶の両羽状にはならず、かなり尖ってしまっている。
ケイスマンが託そうとしたオリジナルガリウスであるタキオンは、アリスランドで製造されたそれとは異なり、ガリウスGと互換性がある。そのため、グラディオスのタキオンはハードポイントもガリウスGと統一されている。というかガリウスGの予備パーツを流用しているため、どうしてもそうなる。
今回はその設定に救われた。さもなくば、タキオンにパピヨンジャケットという、高機動戦こそ実現可能だが、コンセプトでは矛盾している組み合わせは決してできなかっただろう。
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