終焉の譜B01
《警告。グラディオス後方より、巨大ななにかが出現します!》
ああ、わかってるよハルモニ。今さら言われるまでもない。
オペレーターの声も緊張によって裏返る。
通信によるソータたちの会話も慌ただしくなる。シドウさえも狼狽するほどに。
「グラディオス! 急制動をかけて斜め前に進め! それしか逃げ場はない!」
オペレーターがなにかを言う前にブリッジに叫ぶ。
もうすでに、誰もが理解した。
最悪な事態を。
アンノウンEタイプ。数多の連合軍艦隊を潰した、超大型アンノウンにして、アンノウン母艦。それこそ生きている母艦と言えるだろう。
そんな敵が、音もなく虚空よりいきなり出現したのだ。それもクランドがもっとも警戒していた背後から。
Eタイプは龍の顔のような形状をしていて、口を開いてアンノウンを放出する以外にも、噛み付いて攻撃を繰り出す。動作は遅いが、グラディオスが自ら攻撃の射程に飛び込んできたようなものだ。Eタイプは大きな口を開いて待っているだけでいい。
ただし、それはクランドがそれを想定していなかった場合だ。Eタイプに背後を取られた時の対処法も、すでに持っている。
『誘導弾発射! 無防備な口に集中砲火せよ!』
すでに全砲門を開いていて、いつでも対艦戦に突入できるよう備えていたのだろう。グラディオスの後部にはミサイルハッチが備わっており、ブリッジにいる砲術長が全火器をコントロールする。
漆黒の宇宙空間に、青白い光が幾多も光芒を描き、ありったけの火力をEタイプに注いでいく。
これにはたまらず口を閉じざるを得ない。その間に追撃されぬよう急制動をかけ、斜め上へと上昇していく。
アンノウンの群れは即座に反応した。熱源が動く。グラディオスを追撃するように上昇を開始した。
それがおかしかった。
「なんで………わざわざワープするんだ?」
敵の母艦はすぐそこにいる。なんならダメージを負おうと致命打にもなっていないだろう傷を庇う必要もないし、再び口を開いて艦載機のごとくアンノウンを放出する方が早い。俺が行なっている掟破りによってワープをキャンセルされることもない。
それがなぜ、Eタイプはいつまでも口を開かないのだろう?
アンノウンはいつまでワープを続けるのだろう?
非効率なのに、なぜかそれが俺の心を騒つかせる。
そもそも原作では───第11話ならび第12話にもこんな展開はない。
斥候が接近するまでは同じだが、Eタイプはそんなポジションとタイミングでは現れないはずなのだ。
斥候を退けてから大軍が現れる。Eタイプが体内に蓄えられるだけの数には及ばないが、ガリウスをより前方へ誘い込むのだ。
そして、デブリ帯を突撃する形でグラディオスの横から現れる。大きな口を開いて、グラディオスへ噛みつき攻撃を仕掛ける。辛くも避けるが無傷とはいかなかった。
グラディオスはEタイプと対艦戦へと突入。互いに反転し、正面から全戦力を投入する。
グラディオスは砲火を浴びせ、EタイプはアンノウンBとCタイプを放出。
作中では滅多に見れない一斉射撃に心が躍るが、それでもEタイプが放つアンノウンが勝る。
シドウは焦り、戦力を分散させようとするもDタイプに襲われる。
足止めを食いながらも苦戦し、そしてソータがデバフによる呪いで強引な半覚醒。様々なものを犠牲にしながらも、アンノウンの群れを突破してEタイプに初めて傷を負わせるのだ。
グラディオスはそれを見逃さず、レイライトブラスターを発射。
龍の頭部の左側に以前のレイライトブラスターの傷痕があり、そこが弱点だと判明し───
「………おかしい」
俺は目を細め、多くのミサイルを飲み込んでしまったEタイプを観察する。
なにかが不自然だった。
まずEタイプの大きさ。全長約300メートルのはず………250メートルほど?
アンノウンを口から発射しない………まさか艦載しているアンノウンがおらず、絶えず体内でワープさせている?
傷痕がない………レイライトブラスターで負った傷が、そう簡単に修復できるとは思わない。
つまり………これは。
「別個体だ! グラディオス後方に現れたEタイプはこの前の奴じゃない! 小さいし傷痕もない! グラディオス! 上昇を中止して下方に潜航! ガリウスはグラディオスの上に集合! 来るぞッ!」
また鳥肌が立った。
こんなことは想定すらしていなかった。
誰が予想できるのだろうな。こんなアクシデントを。
グラディオスへ向かいながらサーモグラフィーで艦の上を調べる。
最悪だった。これ以上の最悪をどう例えればいいのか、俺は知らない。
銀色の光を撒き散らし、グラディオスの頭上1キロメートル先に、あの超巨大なアンノウンがワープしやがった。
顔にレイライトブラスターによる傷痕がある。間違いなく、この前戦った相手だ。
この絶望を、どう例えよう?
そう………ゲームなどで言えば、最後の戦いに備えて装備を新調するだけでなく練度も高め、それでいて自分のレベルを上げなければ絶対に勝てないであろうラスボスが、まさかの序盤から2体登場して同時に襲い掛かってくるようなものだ。
ラスボスは常に一撃必殺の攻撃をデフォルトで放ち、掠めるだけでもゲームオーバー。
まさにクソゲー。やってられるかとコントローラーを放り出すこと確定。
そんなレベルの戦いを、いきなり強いられたのだ。
グラディオスは推進器を最大出力で使用して、上昇を中断して下降しようとしている。
その間にも龍の顎を開き、グラディオスのブリッジに齧り付こうとしているEタイプ。
そこで7機のガリウスと、タキオンが間に割って入った。
「全機、ビームシールド展開! グラディオスがこのデカブツから逃げる時間だけでいい! しのげ!」
さもなくば、グラディオスは第12話を迎えずに沈む。不沈艦伝説も今日で終わりだ。
「ぐぅっ!」
タキオンのコクピットで、これまでにない振動が走る。
ガリウスならびのタキオンにもビームシールドは標準装備されている。それで受け止めて、自機のスラスターで減速を促す障害物になるのが目的だ。
ただし、使用するには腕のガンビッドを外さなければならない。途中ですべてパージした。さもなくば、Eタイプの高熱で焼けている。
『や、ヤベェぞこりゃぁようっ!』
『タイタンジャケットでも冷却が追いつかない!』
ハーモンとコウが叫ぶ。
それでもEタイプは少しだけ減速した。その時間でグラディオスはより斜め下へ潜航する。
「今だ!」
コクピット内部の温度も上昇している。いくらパイロットスーツを着用しているからとて、俺たちもこのままでは無事では済まない。
指示するとガリウスとタキオンはパッとEタイプから離れる。超巨大な龍の頭部に引っかからないよう全速力で後退。
グラディオスは健在。しかし、代償は高くつく。
『だぁ! クソッ、やべぇ!』
『タイタンジャケットがオーバーヒートしている! パージする!』
三号機と四号機でボンと鉄が弾ける。強制的にパージした赤熱化したタイタンジャケットが、それで爆発した。
これで三号機と四号機は両腕を失ったことになる。飛行には支障は出ないが、丸腰同然だ。
初手チェックメイトとか、敵の手段がイカれているとしか思えなかった。
リアクションありがとうございます! あと少しでリアクションが600件を突破します。すげぇ。
明日から土日ですね。恒例のたくさんの更新をしたいと思うのですがぁ………申し訳ありません。やはり間に合いませんでした。日曜日の深夜からストックを開始しなければ間に合わないこれですが、やはり水曜日からというのは無茶でした。どちらも4回くらいが限度だと思います。何卒ご理解ください………。
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