終焉の譜A09
カタパルトから射出された灰色のタキオン。
その瞬間、ガンビッドを展開。
2機をハルモニに託し、もう2機を追従させる。
ハルモニに操縦を託した2機は、ドローンカメラの役割をしてもらっている。ドローンカメラのパイロットたるアイリも、まだ時間が必要だ。ガンビッドにも小型化しているとはいえ高性能カメラを搭載している。
艦の被害状況を外から見た方が、ブリッジにいるクランドも指示が出しやすいだろう。
「メインスラスターは失っていない。機銃を潰されたか。………こんなことができるのは、やはり!」
タキオンのメインカメラを、射線軸から沿うように逆算させて辿る。
すぐに発見した。
新種のアンノウン。通称Fタイプ。大気圏内外を問わず、人類を殺した狙撃手。第6話でも俺のドローンカメラを狙撃したが、音沙汰なかったので忘れていた。
上空15キロメートル先。やはり両腕を合わせて銃身にしていた。
「次弾は撃たせねぇ!」
ガンビッドジャケットの本領発揮。
バーニアによって直線での加速力を得る。その速度は、今ならDタイプをも追いつける。姿勢制御の必要はない。
「ぬ、ぐ、ぎっ」
Gによって全身が押し潰されそうになるくらいの苦痛を耐える。
数秒でFタイプに肉薄する。この加速中、キャノンは使えない。出せば基部から折れてしまう。
右腕のヒートナイフを展開し、擦れ違いに斬りつけようとする───が。
「あぐっ!?」
『も、もう1体が急接近! レーダーではタキオンの近くにいます! 大丈夫ですかエース副隊長!』
オペレーターのガイダンスが遅れたわけではない。敵の接近が速かっただけだ。
「マジかよ………Gタイプだと!?」
Fタイプに次ぐ、新種の出現。俺もここまでくると覚悟を決める必要がある。
GタイプはFタイプの対となる存在だ。近接戦に特化した人型を模したアンノウン。F、Gタイプともに全長10メートルから12メートル。ただFタイプは滅多に現れなかったが、Gタイプはかなりの頻度で出現した。
戦い方は知っているが、作中でもこの2体が同時に現れても、群れたことはない。
それゆえに、タキオンを横殴りにしてくれたGタイプがFタイプと組むと、厄介なことになるのは目に見えている。
「クソッタレが。けど………別にビビることもないか。ガリウスだから苦戦しただけで、タキオンで勝てないって決まりはねぇ!」
近接戦と遠距離戦に特化したアンノウンが揃おうとも、タキオンなら切り抜けられる。
ガンビッドジャケットからキャノンを展開。肩に懸架して連射。まずはGタイプから始末する。
Gタイプのイメージは、ボクサーのような動作を思わせる剣士だ。ヒットアンドアウェイを基軸とし、一度でガリウスを細切れにすることもある。対抗策は接近させないこと。キャノンの砲撃を左右に動いて回避するのだが、その程度の予想は脳内チップで一瞬で済ませている。
一撃の攻撃力は凄まじく、Cタイプの5倍の厚みを持つ装甲はロングソードを弾くも、着弾の衝撃までは緩和できない。左腕が消し飛んだ。
ただし、そこでFタイプが動かないはずがない。
「チッ!」
互いの距離はそう遠くもないが、近くもない。超長距離狙撃など必要なく。巨大な銃身を模る両腕を分割し、二丁ライフルとして凝縮した炎熱の弾を連射する。
超長距離狙撃が特徴であるFタイプは、一見接近してしまえば簡単に倒せると思うかもしれないが、その安直な思考は死を招く。
FタイプはGタイプと比較して、装甲の厚みや耐久値で言えばCタイプとそう変わらないが、早い上に近接戦も苦手としていないのだ。
体内の熱を銃弾にしている分、活動時間はGタイプの半分とはいえ、接近すればライフルような両腕で殴られる。シールドやロングソードなど近接武器で受けなければ、装甲は溶断されてしまう。
その多彩な戦い方で、Dタイプに次ぐ「会敵したくない敵ランキング」上位だったかな。
まぁ、俺には関係ない。
炎熱の銃弾をばら撒くFタイプと、キャノンによる砲撃を中断したタキオンが回避運動に専念すると、Gタイプが銃弾の隙間を掻い潜って肉薄する。
「人間様の戦い方ってのは、卑怯だよなぁ。でもお前たちが強いからいけねぇんだぜ? こっちだって工夫しねぇといけねぇんだからな!」
叫ぶ。
刹那、Gタイプにガンビッド2機が頭上から接近。ビームナイフを展開し、残った右腕を攻撃。しかし流石の厚みだ。両端からのビーム攻撃では、しかもガンビッドの出力では切断までには至れず。
とはいえ動きは止まった。
Gタイプの横を通過しFタイプに迫る。
乱射でタキオンの接近を阻もうとするが、その程度の射線を読めないはずもなく難なくクリア。100メートルまで縮まるとFタイプも接近戦を選択した。
だが、所詮はFタイプのアンノウン。タキオンを止めたければ同系統の機体を持ってくるしかない。
「おおおおおおああああああああ!!」
ヒートナイフを突き出す。Fタイプは銃身をクロスさせて防御。決定打にはならないが、すでにガンビッドがFタイプの頭上にいて、肩口からビームナイフで斬りつける。肩から腕を半分ほど切断。ガードが下がったところでヒートナイフをFタイプの胸部に突き立て、貫通させる───致命傷にはならないか。やはり切断するしかない。
右耳の近くでアラート。Gタイプの接近。
ガンビッドの高性能カメラで位置を確認。誤差修正。ガンビッドジャケットのコンテナからキャノンを展開。肩に懸架せず、ノールックで背面撃ち。
その間にFタイプも復活。動きを再開し、タキオンの右腕に高熱を纏う銃身を押し当てて溶断を試みた。
その前にヒートナイフを放棄。タキオンの標準装備であるこれは、近接武器にしてはかなり小型だ。そのため予備のヒートナイフを2本は腕部にストックしている。これは切断というよりも刺突を想定した武器ゆえに、どうしても欠損してしまうため、ストックが必要となるのだ。
Fタイプの両腕はタキオンの右腕を掠めもしなかった。左腕のヘビィガンで頭部を潰しながら、右腕のヒートナイフをストックと換装。赤熱化したそれをFタイプの胸に突き立てる。
抵抗が激しくなる。死ぬ間際の最後の抵抗だ。Gタイプもキャノン砲の射線から外れる。ガンビッドをフォローに回すも、その機動に追いつけない。いや、俺の思考が遅れている。先読みを長時間使ってはいないが、短時間で連発し過ぎたようだ。
タキオンの初陣は、新型2体に挟まれるという異例の事態。緊張と興奮をしないわけがない。それでついペース配分を間違ってしまったか。
『エース副隊長! キャノン、ヘビィガンともに残弾10パーセント! ヒートナイフも残り1枚です! あと1分でミチザネ隊が現着しますので、無茶をせず現状維持、あるいは温存しつつ消耗を避けてください! 推進剤も40パーセントを切りました! その状態で新型2体を相手にするなど正気の沙汰ではありません!』
オペレーターが叫ぶ。ブリッジも緊張しているだろう。
いかにタキオンとて、新型を相手に善戦こそしているが、挟撃されてはいつ俺が潰されてしまうのかと気が気ではなくなる。
しかし、もうすぐソータたちが救援に駆けつけるからといい、消耗を避けていてはせっかく倒せる相手も───
「………このタイミングで新型が出た? 斥候? 本命? ………いや、そんなはずがない! ダメだシドウ隊長! こっちに来ちゃいけない!」
ブクマ、リアクションありがとうございます!
久々に夜にも更新できました!
昨日から書き続ける日が再開し、激っております!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!




