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終焉の譜A07

 カイドウは自力で最適解を導き出した。


 イリスも言っていた。タイタンジャケットの予備を2機揃えていると。


 しかしそれは予備ではない。主砲を挟んで効率的な冷却を促し、暴発を防いで連射を可能とするものだ。本編第2クールでこの方法を編み出した。第1クール終盤ではあるが、模範を自力で発見したカイドウには賞賛を送りたい。


 しかし、レイライトブラスターが連射できるようになったからとはいえ、それでEタイプを圧倒できるわけではない。


「艦長。こちらはEタイプの対策を練ります。………その時、私の意見を参考にしていただけますか?」


 クランドは無言のまま、俺を見上げる。


 否定こそしていないが、肯定とも言えない。無言こそ、回答なのだ。


 ケースバイケース。クランドの側で策が尽きた頃に、俺の意見を採用するという答えだ。


 だが、それでいい。


 もし窮地に立ったとしても、俺はこれまで手塩にかけて育てた人員がいる。


 彼の意見なら反対はないはずだ。それに今は、唯一の反対を言葉に出すデーテルも不在。


 ならば、きっと───


「エース副隊長。きみの意見は理解した。もう敵襲はないようだ。下がりたまえ」


「………失礼します」


 ブリッジを後にする。クランドは愚かではない。俺の真意は伝わったはずだと信じるしかない。


 無言で通路を歩く。他に誰もいるわけではない。


 この後はハンガーでタキオンの調整を行う予定だ。あの模擬戦で得た情報を基に、最適な装備を作らなければ、俺のタキオンはアリスランド勢に勝てない。アークのタキオンよりも尖った装備になることが予想される。


 その間に、第11話のことを思い出す。


 前半から始まる試練とは、敵に包囲され、身動きが取れなくなることだ。Eタイプは出ない。後半からついに姿を現す。


 そこでグラディオスにトラブルが発生するのだ。後部のメインスラスターへエネルギーを供給するレイライトリアクター1基が不調を起こす。原因は明確に書かれてはいない。


 機関科の人間が奮闘して不調を修理するのだが、その頃になると艦の被害も続出して、敵の布陣も突破できず後退を選ぶのだ。


 天破のグラディオス始まって以来、初となる大敗。そこから這い上がる第12話に必要となる重要なピースだ。


 だが、ここで余計な梃入れをするべきかどうかが重要となる。これまで原作破壊行為を繰り広げてきて、なにを今さらと笑えてしまったが。


「………俺抜きで戦って勝てるくらいの実力にはなっているとは思う。けど、俺のせいで敵の力も増している。ビーツの件だってある。死人を出したくはないけど、もしみんなが俺に依存してしまうと、いざ俺が不在って時に、いつもの力を発揮できない………下手に手を出すより静観するべきか? いや、もう試練が始まっているなら、静観こそ失着だ。予定にはない死者が出るかもしれない。もし………世界ってやつに元の姿に戻ろうとかいう斥力があるっていうなら………俺の手抜きを見逃すはずがない。結局は少しの油断もできないな」


 通路を歩きながらこれからの展開を推測する。脳内チップを駆使してシミュレーションしてみた。


 快勝………とは少し異なるが、今のところなにも問題はない。


 時間の流れに逆らわず、その時を待ちながらやれることをやる。


 俺はこれまで展開を推測しながら、引き算と足し算を繰り返した。それにより良い方に変えられたものはごくわずかだ。悪い方に変化したことの方が多いかもしれない。


 しかし第11話なら大きく変えられるはずだ。この時のために対策を練った。長い時間を使って。


 それが俺なりの改善だと信じて。


 今日もハンガーでタキオンを俺の色に染め上げる。


「おやっさん。タキオンの装備、どうですか?」


 ハンガーに入ってまず、タキオンの面倒を見てくれているカイドウに声をかけた。


「おう、エースか。クランドとの会議は終わったみてぇだな。オプション装備のことなら………ほらよ。見てのとおりだぜ」


「会議ってほどのことでもないですよ。ちょっと意見を求められただけです。………へぇ。こうなりましたか」


 タキオンをカイドウと並んで見上げる。


 ガリウスGよりも一回り大きいタキオンは、これまでネイキッド状態と呼ばれる素体のままであったが、製造ラインにより急ピッチでバックパックが製造された。


 バックパックはショルダーストラップが肩から胸に伸びて固定されているような仕組みである。もちろん背部のハードポイントにも接続している。


 メインスラスターの増設。その左右の両端から伸びるのは───俺が設計した、趣味全快のオリジナルマルチプルジャケットである。コンテナような長細い五角形の箱が接続されている印象だ。


「ハァ………ビームシールドの次は、まさかお前のオリジナルジャケット作らされるたぁ思ってなかったがよ」


「すみません。でも、どうしても必要でして」


「だろうなぁ。けどよ、ビームシールドよか良心的だったぜ? なにせ、お前が設計したジャケットは、現代ガリウス兵器のいいとこを寄せ集めた寄り合い所帯みてぇなもんだったしなぁ。こんな我儘なハッピーセットじゃなかったけどよ、少なくとも俺ぁそれぞれ1回は作ったことあるわなぁ。問題はそれをこんな小さなボックスに全部押し詰めることだけどよぉ。………できちまったぜ」


「流石です。おやっさん」


「うっせぇクソガキ。それこそガチでガキみてに光る目をして設計図持って来やがった時ゃ、ああまたかって頭抱えそうになったがよぉ。中身見てみりゃ、整備士として心躍るような設計図を書きやがって。作っててマジで楽しかったぜ。俺だって目が輝いてただろうよぉ。なんたってこれは俺だってガキの頃から憧れた、なんでも揃った万能ツールじゃねぇかよ! 面白くねぇはずがないだろうが!」


 そのとおり。あのカイドウが全力で興奮するくらいの万能ジャケット。


 長い五角形のコンテナは左右に分割───するわけではない。装甲が開いて、そこから様々なギミックが現れるのだ。まずタキオンに凄まじい加速を与えるバーニア。サイドハッチが開くと姿勢制御用のサブスラスター。


 さらにハードポイントからグルリと回転し肩に懸架させるとキャノンが現れ、さらにミサイルハッチも現れる。


 ………まぁ、他のアニメを参考にしながらも、俺なりの改造と追加を施したものなのだけど。カイドウは喜んで作ってくれた。こういうのが好きなんだな。


 キャノンとミサイルと推進器しかない───違う。魔改造はここからだ。


「んで、それでも飽き足らずコンテナにガンビッドを設置させやがってよぉ。お前、下手したら先に脳みその方がぶっ壊れるぜぇ?」


 そう。カイドウの指摘のとおり、俺はついに機体を操縦しながら無人兵器を遠隔操作する自機を作ってしまったのだ。


「そうならないための改善は、もちろんやりますよ。………とりあえず、アンノウンが来ないうちに試してみたいんですけど。できれば今日中に」


「わかってらぁ。とりあえずダミーを用意しておく。クランドは俺が説得してやるから、着替えてきな」


「はい」


 カイドウも滅多にないくらい面白がってる。タキオン魔改造プランの第一人者として、どんな効果を発揮するのかと。


「………とりあえずガンビッドジャケットとでも名付けておこうか。大気圏内だとデッドウェイトだしなぁ。なんか、すげぇ勿体ない気がするなぁ」


 これが終われば、ついに第2クールだ。しばらく宇宙に上がることもない。


 しかしこれがソータのイレイザーのためになるのだ。努力は惜しまない。


リアクションありがとうございます!

復活! ………したわけではないのですが、仕事には復帰しまして。

今日から書き溜めますので、明日にはいつもの12時頃と19時頃の2回更新に戻させていただきます。

土日は………減ってしまいますが、4回ずつを目指します。病み上がりですので、どうかご了承ください。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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