表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

208/318

終焉の譜A02

「失礼しちゃうなぁ。これまで起動実験続きだったし、外装だって2日前に取り付けてから実験したの、隊長だって見てるはずでしょ? シミュレーションにも限界があるし、これが初めてに決まってるじゃないですか!」


 されども、いかにエースパイロットの風格があれど、タキオンの性能にナンバーズが追いつけるのかと言えば、やはり微妙なラインだろう。


 この時、シドウの七号機には以前の愛機、第六世代ガリウスFに取り付けていた外装と推進器を外し、七号機に強引に取り付けていた。シドウの七号機のジャケットは地上で作る。ゆえに今はガリウスG七号機Sカスタムとして、俺の模擬戦の相手をしてくれていた。


 ほぼネイキッド状態ではあるが、素体に多くの推進器を用いることで機動性を向上させ、ソータのような変態的な反転を可能にしたのだ。


 ただし、タキオンの性能をそれで上回れるはずがない。


 ペイント弾を3点連射するライフルではあるが、その間隔を縫うように左右に移動しながら距離を詰めるタキオン。シドウからすれば、そのマニューバこそソータのそれだろう。ソータの瞬間的な判断力は人間離れしていて、例え銃を撃つ相手だろうと平然と間断を狙うように接近する。


 またシドウもプロとして、弾切れを配慮した撃ち方をするが、どうしてもそれが隙となる。ゆえにマガジンひとつ使い果たす覚悟で途中からフルオートに切り替えるも、タキオンはローリングして回避。


『同じ人間とは思えない………!』


 ソータのマニューバもパターンとしてインプットしている。同じ動きを再現すると、シドウの驚愕ともとれる賞賛を受けた。


 ヘビィガンを発砲する。シドウは危うく回避。


 その回避運動でフルオートが止まる。一気に加速して距離を詰めた。


『くそっ!』


 タキオンの右腕から出現したヒートナイフが出現する。ただし熱はあれど鉄を溶断するほどではない。精々、装甲に傷を付ける程度。俺たちの機体は今、特殊な水溶性のトップコートを吹きかけていて、熱で色が変わる仕組みとなっている。ヒートナイフを滑らせればヒットしたと判別できる。


 シドウの判断は早い。悪態つきながらも近接戦に切り替えた。バックパックのハードポイントに接続したアームが動いて、左手にロングソードを持たせるポジションまで運んだ。それをスライドして抜き取りながら、シドウの剣戟。ヒートナイフを防ぐ。


「これを防ぎますか」


『舐めるなよ副隊長。いかに脳内チップがあろうと、パイロットとしての経験で言えば俺は100倍以上はある。スペックの差など、パイロットの技量でどうにかするさ。必ず覆す!』


「いいですね、それ。そういう熱いスピリットは大好きだ」


 カイドウの教えを忠実に守るシドウ。早くも後継機に乗り換え、さらに技量を増した甲斐あって、ガリウスGを手足のように操っている。


 だが手足のように操るだけでは足りない。こっちはマニュピレータを狂いなく操れる。ヒートナイフで殴り付けるような攻撃の途中で、七号機の腕を負荷をかけることなく掴んで背負い投げた。


 安定した姿勢制御で、すぐに体勢を整えると距離を取ろうと飛翔する七号機。しかしメインカメラだけではタキオンの姿を失う。


『後ろだと!?』


「これがタキオンですよ」


 索敵のためのレーダーには、七号機に張り付く敵の気配があっただろう。


 そのとおり。背負い投げてから加速し、シドウが距離を取るだろうと予測して、ピタリと張り付いたまま七号機と並走するように飛ぶ。


 脳内チップの未来予想が働いて、七号機の背部にあるメインスラスターやサブスラスターの動きを寸分の狂いなくコピーし続けた。


『だが背後にいるということは!』


「おっ」


 シドウめ。やっぱりやる。


 メインスラスターをフルスロットルにすると、タキオンのメインカメラが閃光で包まれる。目眩しだ。シドウがまだガリウスFに搭乗していた頃、模擬戦でコウの四号機に背部に張り付かれた際、同じ手段で逃れたのを覚えていた。


 だが、それは読めていた。


 すでに比較的光を浴びなかったサブカメラに切り替えているし、今の俺に肉体の眼球から得られる視覚的情報は必要ない。


『やはり化け物だなお前は!』


 目眩しをしても離れないタキオンに、シドウはゾッとしているだろう。


 これでもかと加速しているのに、両機の距離は開くことはないのだから。


「じゃ、そろそろ決着といきましょうか。背面を緑色で染められる覚悟はできましたかぁ?」


『ッ………させるかぁ!』


 ローリングして対峙する七号機とタキオン。反転した勢いに任せて、刃引きしたロングソードを振るう。


『なっ………』


「曲芸飛行のお返しです」


 初撃を交わしたシドウのマニューバを真似てみる。前後を入れ替え、間髪入れず上下を入れ替える。頭上をロングソードが通過した。そのまま飛行。


「なるほど。背中の傷はパイロットの恥ですか。では顔や胸を塗りつぶしましょうかね。操縦が大変だぁ」


『その掃除、お前もさせてやる!』


 七号機はライフルを。タキオンは左腕のヘビィガンの銃口を突きつける。


 距離にして1メートルもない。シドウは準エースパイロットとしての沽券と、隊長の立場にかけて、至近距離での撃ち合いでドローに持ち込むつもりだ。


 それでいい。シドウは登場するパイロットのなかでも上位だ。例えタキオンに勝ることはないとしても、敗北を受け入れず足掻けるだけ足掻く。それでこそ隊長だ。


 俺も敗北するつもりはない。シドウがその選択をするなら、どれだけペイント弾を着弾させたかに勝負を切り替えてやる。


 ハンガーに戻ってともに自機にブラシがけしながら、笑い合えればそれでいい。


「勝負ですよ隊長───ッ!?」


『お、おい! エースッ!?』


 おかしいな。と疑問に思った時にはタキオンは失速していた。七号機が追い抜く。宇宙空間では無限ともいえる慣性が働き、止まることはないが、タキオンの機能は停止に近い状態になっていた。


『シドウ隊長! エース副隊長の意識レベル低下! バイタルは安定していますが、模擬戦を中心し、ともにグラディオスへ帰投してください!』


『了解した。………なにがあった?』


『お待ちください。───整備長からの報告です。エース副隊長の脳内チップの処理限界を突破し、タキオンのリミッターが働いたと予想できます。そのため、緊急で機能停止。しかしパイロットの生命維持装置は働いています。焦る必要はありませんので、着実な着艦を』


 ヘルメットのスピーカーからふたりの声が聞こえる。


 俺は今、なにが起きてどうなったのか、判別ができない。


 覚えているのは、シドウとの模擬戦で充足感を得られたあと、女からすれば馬鹿らしく見えるような、男同士のプライドのぶつかり合いを興じようと、ヘビィガンのトリガーを引こうとしたところくらいか。


 あれでピンと張り詰めていた緊張の糸が、プツンと切れたような感覚があった。俺のなかでなにかが切れた途端、体が動かなくなった。


 おかしい。飯は食った。寝た。ヒナたちに毎晩襲われた。三大欲求は満たしたのに。


 なんでこうなったのか、原因が思いつかなかった。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

またしても遅れてしまいました。気づいたらこんな時間でした。風邪って嫌ですねぇ。

申し訳ないのですが明日も2回更新となります。ご了承ください。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ