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命の価値C02

 俺が復活して、4日が経過した。


 急変というのは、時として意識などの内面の変化では留まらない。


 俺の肉体のことも同じ変化が起きていた。


「改めて思わされるぜ。………バケモンだよな、お前」


「これでもしっかりと人間してますよ。おやっさん」


 俺を見上げたカイドウや、周囲の整備士たちが、以前とは違う意味で恐怖する。


 理由は明快。俺の体についてだ。


 あれから毎晩、ヒナたちにレイプ───もとい愛のある蹂躙を受ける。


 その甲斐あって、性欲パラメータが減少し、睡眠欲パラメータが上昇。限界まで搾り取られると睡眠欲が勝り寝落ち。毎日6時間以上の睡眠で睡眠欲パラメータが減少。その代わりに食欲パラメータが上昇。


 そんなメカニズムがあって、俺の三大欲求が満たされて、俺は人間を取り戻すことができた。


 人間が人間たる所以。それは単に、人間らしいことをするだけだった。笑って、怒って、泣いたりするだけでも効果があるかもしれない。


 人間は他の生命体と異なり特別であり、独特だ。


 意志の力が宿ることがある。肉体が精神に応えようとする。


 それこそ俺の分野だ。この体は一時期脳内チップが支配し、半ば機械化されてしまいかけたが、その性能を強固な意志でねじ伏せ支配することで、ナノマシンさえ制御下に置く。


 するとたった4日で、機械化する前の体どころか、筋肉もだいぶ発達していた。これが脳内チップを制御下に置いた成果だ。骨折を瞬時に治療できるなら、筋肉の育成も最短でこなせるはず。と予想したら的中。もう腹筋だって割れ始めている。あり得ないくらいの速度で筋肉が出来上がった。


 もう鶏ガラみたいなヒョロガリとは呼ばせない。


 顔色もいい。毎朝ヒナたちに鏡の前でチェックされる。それが終わると愛の蹂躙を受けることもある。


 でも今日なんて初めて攻勢に出れた。シェリーを鳴かせた。ユリンに反撃されて落ちたけど、着実な成長を見込める。


「で、このままアーレスみてぇなゴリマッチョを目指そうってか?」


「いえ、そこまでは。もうちょっと筋肉は欲しいですけど。でも目標ならあります」


「なんだぃ?」


「ビーツとの差別化です。俺はあいつとは違う。そう思わないと、死にたくなる時があります」


「それ、あいつらには言うなよ?」


「言いませんよ。言えばなにされるかわかったもんじゃない! 恐ろしいこと言わないでくださいよ」


「がはは。久しぶりにお前が狼狽したとこ見たなぁ。………安心したぜぇ」


 カイドウは俺の整備もしてくれる。それゆえに、誰よりも正解がわかっていたのかもしれない。


 だから、俺がヒナたちとことに及んだと、すぐに察知して、その上でなにも言わなかった。


「さて、そろそろ始めるかぁ………本当に大丈夫なんだろうな?」


「これでもしなにかあったら、命懸けでタキオンのシステムを奪い合うかもしれません」


「おい。マジでそういうのやめろって。使いものにならなくなったら、そうなったで………いやかなり予算的には厳しいけどよ。お前が無事で帰ってくるなら、構わねえよ」


 愛されてんなぁ、俺。


 こういう意味では、俺とビーツの違いというものが理解できる。


 もし仮に、本当は嫌だけど、俺がグラディオスの艦長代行になったとしても、艦内の女性を侍らせて、男性を奴隷化したいだなんて思わない。今のままの方がもっと気が楽だ。


 ビーツはあれでアリスランドを軍属の艦として、しっかりと運営しているらしい。有能であるかないかの差が出たが、それなら俺は別の面で上を目指す。


 それが、今俺にできることだろうから。


「じゃ、行ってきます」


「………おう」


 最後の戦いに挑む心境だ。ある意味、これはタキオンのなかにいるケイスマンの精神体との最後の駆け引きになるだろうけど。


 跳躍してタキオンのコクピットに移る。


 全員が固唾を呑んで見守るなか、俺はシートに身を沈め、やや緊張しながら右手のインターフェースをスロットに挿入した。


「レイライトリアクター始動。回転数上昇。………タキオン起動。システム稼働開始!」


 ハッチが閉まり、完全な闇で閉ざされたなかで。インターフェースを通じて、タキオンを起動する。


 ヴッ───と鈍い音を鳴らして、モニターが表示される。


「お゛っ」


 インターフェースを通じて、脳内チップが発動。


 この前の廃人と化した際は脳内チップを閉ざされたが、今回は無い。ケイスマンの精神体が直接語りかけることもない。


 幾多もの情報の奔流に呑み込まれ、俺の意識はシステムの向こう側へと誘われた。


「………今度は宇宙ですか」


 目を開ける。


 意識をそのままシステムに持って行かれたようで、仮想空間に収容された俺は、かつての体を再現しつつ、宇宙空間を漂った。


 目の前には、白衣を纏うケイスマンがいた。


「私を作った私の、肉体の最後を迎えたのが宇宙だった。そして、きみという特異点と語らう最後の場所としては、これ以上に相応しい場所もないだろう」


 今回のケイスマンは、最初から俺を直視していた。


「それで? 今の俺はどうです? 合格ですか?」


「自分自身の独立。人間が人間たる所以。アンノウンを討つのは人間でなくてはならない。この3点が、私が出した課題。統合するに………きみは水準に達した。賞賛に値する」


「どうも。じゃあ、このタキオンはもらっていきますよ」


「まぁ待て。………きみはどうやら、エース・ノギよりもせっかちだな。かつて私は語ったはずだ。私を作った私が、きみの思想を助けると」


「いや、助けるとまでは言っていないような?」


「だが、同じ意味であることに違いない。きみは私が与えた課題すべてに取り組んだ。そして、タキオンを得てその先へと昇華する。その先にあるものこそ、私を作った私が目指したものだ。………受け取るといい。きみが特異点として活躍できるように。ビーツ・クノでも到達し得なかった未来を目指す切符を手にしたのはきみだ。………だから、頼む。この世界を………救ってほしい………」


「ケイスマン教授?」


「………どうやら、このシステムも限界だ。私は一旦、休眠する。私を作った私も、こうも何度もシステムを使うとは考えてもいなかった。レイライトリアクターのなかに私を保存するというのは無茶があったのだ」


 どこか苦しげにも見えるケイスマン。


 しかし、今にも消えようとしていても、いつまでも俺を凝視し続けた。


「掴め。特異点たるきみなら、きみの知る結末より良き方向へ運ぶこともできるのだろう? ならば、この機体とともに、この機体で得られるものとともに、行け。私を作った私が愛したすべてを守ってくれるというのなら、喜んで私の意志を与えよう。きみの力となるはずだ。そして忘れるな。タキオンは始まりでしかないと。きみが望めば、いずれ応える。頼む………頼むぞ。エース・ノギを語る者よ」


「………わかりました。持っていきます。背負いますよ。俺は別に大した奴でもないし、自分が特異点であるって自覚もない。それでもタキオンをケイスマン教授から託された者として、掴みに行きます」


「それで、いい………」


 視界が揺らぐ。


 前にも感じた、どこまでも落ちていく感覚。宇宙空間が砕け、やがて仮想空間を突破し、俺は俺の体に意識を戻した。


 コクピットで目を開ける。


 結果はすべて目の前にあった。



「神経接続完了。システムオールグリーン。タキオン正常に稼働。………コンプリート」



『うぉぉおおおおおおおおおおおおお!!』



 ハンガーで大歓声が上がった。


 歴史的瞬間である。ついにグラディオスでもタキオンを、それも隠しイベントを中継したためケイスマンが設計したものを手にしたのだから。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

も………申し訳ありません。土日のたくさんの更新を控えていながら、風邪を引きました………

帰り道ですがかなりしんどいです。書けるかどうかわかりません。

よって、今週に限りたくさんの更新はお休みさせていただきます。ですが現在書き溜めたストックはございますので、いつもどおり2回の更新とさせていただきます。どうかご了承ください。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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