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命の価値B12

 様々な情報の奔流。


 感触だけでもすごい。ユリンの肌は、緊張と火照りで少しだけ汗が滲んでいるようだった。


 指先で鎖骨辺りから滑らせるように指を這わせると、しっかりとボディラインを確かめられた。


 彼女の熱を帯びる息遣い以上に荒ぶる俺の呼吸。どれだけ吸っても酸素が足りない。


 考えるという行為の一切が無駄となる。


 女性の、未成年とはいえ完成に向かいつつある肉体美は背徳感がありつつも、俺の興奮を増すこれ以上とない燃料となる。


 なにより驚いたのが、右手の義手のことだ。


 これまではタキオンのインターフェースや、アーレスのトレーニングで俺の体重を支える役目しか与えてこなかったし、リンゴを割ってしまえるピンチ力があった。壊れやすいなにかを掴んだまま維持するという特訓はしていないはずなのに、俺は伸ばした右手でしっかりとヒナを抱き寄せていたのだ。


 義手兼インターフェースは、神経を接続することでしっかりと稼働する。残念ながら感触までは伝わらないが、触っている分には楽しい。腰に手を伸ばして抱き寄せる。


 あの日───ヒナが告白してくれた日から、欲しくてたまらなかったものが目の前にある。


「あ、わかったエー先輩。これが欲しいんでしょお? いいよぉ」


 ヒナが俺の顔を抱く。ヒナの体に顔を埋める。異性特有の甘い香り。ユリンと同じくらい緊張していたのか、しっとりとしていて気持ちがいい。


「ちょっとエー先輩、そりゃヒナの胸に比べたら、かなり………いや、それなりに差があると思いますけど、私を忘れないでくださいよ」


 ヒナから引き剥がされ、シェリーに抱きしめられる。


 ヒナと比較してスレンダーではあるが、しっかりと女性らしさを主張する双丘。銃撃に等しい衝撃。ユリンの胸を弄んでいた指を離し、シェリーの腰に腕を回す。


 驚いた。差異こそあるが、女の子ってみんな柔らかいのだと。


 パイロットとして鍛え抜いた体ではあるが、指を這わせるとどこまでも沈んでいきそうな感触があった。


「ん」


 普段なら聞かない、色香を纏う息遣い。


 辛うじて繋ぎ止めた思考の片隅に、一般兵よりも立場が下落した、とある副艦長の妄言を思い出す。


 俺は、あの副艦長を笑えなくなった。


 まさに奴の言うとおりだった。俺はしなやかな肢体に唇をつけ、舌を這わせる。


 口で頬張り、舌で堪能する。そうせざるを得なかった。それが本能とでもいうような、原始的な雄としての行動。衝動。憧れ。


 俺は今、クズになろうとしている。初心者の分際で3人も相手にするなど、贅沢でありながら、本来なら俺のポリシーに反する行為。推し活の申し子として、今すぐ切腹を1000回行わなければならない失態。


 予備知識だけは満載のこじらせた童貞の前に極上の女体が3人並べば、もうマナーなんてあったもんじゃない。


 胸を指先で遊ばれたユリンは恍惚としながらズボンに手をかける。ヒナまで加担した。


「間違ってはダメよ? エー先輩。これは半分はエー先輩が選んだことではあるけれど、半分は私たちの選択なのだから。ふふ………いいえ、意地悪を言ったかしらね」


「そうだよユリンちゃん。これはもう、ほぼ7割くらい私たちが強制してるようなものじゃない」


「かもね。エー先輩、断れるはずがないって知ってるもんね。だからこれは………うん。私たちがエー先輩を襲ってるのかもしれない」


 ものは言いようだ。


 3人はなるべく非がないよう言葉を選んでくれている。そして、早くも息が続かない、というか痩せ細ってしまった俺に体力がないのに、最初から本気を出してくる肉食系女子3人に組み敷かれては、どうにもならないのだ。


 汗ばんだ肌と肌が触れ合う。個体差のある柔らかさと重さのある感触。恍惚とするほどの弾力と温もり。


 俺はなんらかの魔力に魅了されたように、ただされるがままになっていた。最初の3分だけは自分の意思で動けていたが、それを過ぎると手を掴まれて、押し当てたところに手を当てられて固定されてしまう。


 抵抗するという選択肢を持てない俺に、次第に甘美であり銃撃に等しい衝撃が走る。


 ついに魔の手が、俺にも伸びたのだ。


 されども俺はそれを受け入れ、自戒も忘れて肉欲の虜となる。


 一糸纏わぬ美しい芸術品のような女神たちの、妖しくもあり魅力的な笑みの前には、俺という一個人など最初から無力も同然なのだから。


 ビクンと体が跳ねる。こんな快感があったのかと、脳裏で弾ける電流のような衝撃に、変な声を漏らしながらも抗うことなく従い続ける。


 やがて迫りくるエクスタシーに、成す術も持たぬまま、若干の間隔を置いて2回、3回と相手に抱きつき、あるいは抱かれて体に刻みつける。


 それは、俺が気絶するまで続けられたのだ───






「………う、わぁ」


 起床と同時に目にしたのは暗闇で、しかし普段なら感じることのない重みと弾力と、そして汗と動物の………なんというか、そういう営みをしたあとの異臭。


 首の筋肉を動かすだけで痛い。なんでかな。アーレスの鬼軍曹ブートキャンプでも使わなかった筋肉を刺激し続けたような。倦怠感と疲労感と、凄まじい筋肉痛に苛まれ続けた。


 俺は今、幸せの絶頂にいると思える。


 アイマスクにしたヒナの胸、あるいは俺を抱き枕にしたヒナ───同じことだが、なんとか拘束から逃れて這い出る。


 こんなつもりじゃなかった。


 こんなことをするつもりじゃなかった。


 今となっては言い訳でしかないが、それが俺の唯一の後悔だ。


 しかし、そんな言い訳は俺の思考の1割にも満たないのも、また事実。


《ハルモニ》


《イェス。メカニック・エース。ドクター・レイシアから与えられた課題のクリア、おめでとうございます》


《そういうのはいいから。………ったく。バイタルチェック。昨日までのデータと比較》


 脳内チップでハルモニと通信する。俺たちの端末は触れ合いの邪魔になると言われ、レイシアが押し付けた避妊具の使用の前に剥奪され、デスクの上に4つが並べられていた。


 それに、俺を囲んで寝ているヒナたちを起こしたくない。無言でのやり取りが正解だ。


《血圧、脈拍、ともに高い数値ではありますが、先日よりも改善されています。睡眠時間は約7時間。なにより、メカニック・エースの空腹感が刺激されているようです。マスター・カイドウならびドクター・レイシアが懸念していた問題が解決されております。おめでとうございます》


 バイタルは未だ高いままだが、回復の兆しが現れた。


 俺は泣きそうになった。


 様々な感情が押し寄せ、情緒不安定になりそうだ。


 泣き喚ければすぐに勘付かれる。ヒナたちを起こさないようベッドから脱出し、シャワールームに入り、シャワーを浴びながらそれらを放出する───つもりだった。


「おはよ、エー先輩。よく眠れたみたいだね。よかった」


「ヒナ………」


 ヒナは起きていて、シャワールームに入ってきた。問題は、昨日は薄暗い部屋だったのが、シャワールームは照明を付けているため、ヒナの裸体をダイレクトに凝視してしまったこと。


「ひ、ひひ、ヒナ」


「しー。ふたりが起きちゃうよ。シャワー浴びるんでしょ? このまま浴びちゃお」


 ヒナは大胆にも密着しながらノズルを回す。昨晩のことを思い出し、顔から火が出そうになった。


 頭から熱湯を浴びる。濡れた肌と肌。昨日とは違う感触。


「ヒナ………ありがとうな。元に、戻れたよ………」


「よかった。本当に元に戻れたみたいだね。もう1ラウンドしたいだなんて。すごい体力だねぇ」


「あ………」


 ヒナを抱きしめて感謝した。それが俺の精一杯の気持ちだった。


 だがヒナは違うようで、口にはビニールに包まれたそれが咥えられており───




 まぁ、結論から言えば、俺はまた搾り取られて死にかけました。



 きっと、バチが当たったんだと思います。



 女の子、怖いです。


評価、リアクションありがとうございます!

案の定、お下品でしたね。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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