命の価値B11
「エー先輩が自分を独立させる?」
「機械化しないでいられる条件が性欲って………えっと、エー先輩? アニメの見過ぎなんじゃないかしらぁ?」
シェリーは顔を赤くさせる。ユリンは苦笑した。
「大真面目なことなんだよ。最低で、最悪だけど。………俺は今、欲がほとんどない。みんなも知ってのとおり、食欲も、睡眠だって欲してない。まるで機械みたいに。でも俺が機械化しないでいられる条件こそ、人間の三大欲求だったんだよ」
三大欲求───大きく振り分けて、食欲、睡眠欲、そして性欲。
今、俺のなかで脳内チップによって、このふたつが欠如している。
けれど残りのひとつだけはなぜか、まざまざと俺のなかにいて、ヒナたちの接近によって急激に活性化したのだ。
「ビーツは多分、これに気付いてた」
「………そっか。だから女のひとを侍らせたんだ」
「っ、ああ」
シェリーとユリンにはまだ教えていないので首を傾げていた。ヒナだけというのは不公平だ。部屋のモニターに、以前ヒナに見せたイメージ画像を表示して軽く説明する。
「………つまり、エー先輩とビーツ艦長は、脳内チップによって脳から機械化されてしまう影響で食欲と睡眠欲が極端に消えてしまう代わりに、性欲だけが昂ってるのねぇ。生存本能とでもいうのかしら? それとも種の保存? ほうほう。なるほど、なるほど………確かに」
いつもなら「なにが確かにだよ。顔を見ろ」と突っ込んでいる。ユリンは明らかに下半身を凝視していた。そんなに違いがあるかな。オープン状態にしているつもりはないのだけど。
「………そっか。だからエー先輩、さっきまでこんなに荒れてたんですね。アリスランドでビーツ艦長がそうしているように、私たちを性処理の道具みたくしたくないから」
「………ああ。そうだよ。だってこんなの………最低だろ。無いだろ普通。もし俺が、仮に他の女に惚れていて、その女が脳内チップの影響で感覚まで機械化して、解消するために体を捧げてくれだなんて言われたら………きっと、複雑な気持ちになる。こいつに本当の愛情があるのかって疑問に思う。泣いて懇願されても、それって機械の頭脳の演出なんじゃないかって疑って………おい。待て。話の途中だろ。なにやってんのお前ら? 俺の話聞いてた? 結構真面目に話だったんだぞ? 真剣に悩んで、軽蔑されたり殴られたりする覚悟で打ち明けたのに、え、マジでなんなの? なんでお前ら、平然と服脱ぎ出してるの?」
おっかしいんだよなぁ。
俺、これでも話している途中でユリンの抜き手とか回し蹴りとかで半殺しにされる覚悟でいたんだけど。
それがなにを勘違いしたのか、トチ狂ったのか、ベッドに上がったヒナ、シェリー、ユリンがなんの躊躇いもなくジャケットを脱ぎ出した。まるで「よしきた。任せろ」と即決していたように。
「え、だってもう我慢できないんでしょ?」
ヒナに「なに言ってるんだろうこいつ」みたいな目で見られた。実に遺憾である。
「お、俺は不純な動機と最低な理由で、お前たちを………」
「エー先輩らしいっちゃ、らしいですけどね。でも私たち、それだけがエー先輩じゃないって知ってますから」
「俺はっ! 彼女とかができるなら、ちゃんと交際してからこういう行為に至り、ィイッ!?」
今日、一番大きな声が出た。そういえば最近、叫んですらいなかった。
理由は単純。シャツさえ脱ぎ捨てたユリンは大胆にも、下着以外を取り外して、俺に覆いかぶさるように跨った。眼前には綺麗な肢体と、平均的なサイズをしているだろう双丘を包む、可愛いデザインの下着が迫る。
「ああだこうだ言い訳してないで、はっきり言ったらどう? 触りたいって。ほら。あと少しで鼻先が触れてしまうわね? さ、エー先輩。どうしたいの?」
うりうり。とわざと胸を接近させて俺のリアクションで遊ぶユリン。
左手からはシェリー。右はヒナ。逃げ場は無い。
「な、んで………受け入れるんだ………?」
「理由が必要ですか? ならヒントです。今日はなんの日でしょう?」
「え………なんの………? あ………そういえば、あれから2週間目………とか?」
「ブッブー。不正解だよエー先輩。正解は15日目。昨日までなら、まだ選択権があったんだけどなぁ。タイムオーバーだよ。エー先輩は選べなかった。だから、私たちは私たちで動くことにしたの。エー先輩が選べないなら、喧嘩になる前にみんなでエー先輩を食べちゃえばいいよねって」
イカれてやがる。
普通さ、取り合いになるだろ?
負けたくないって思うもん。俺がその立場だったら悔しいし。
でもだからって、私闘が禁じられてるからって、恋愛絡みで3人仲良く分け合えるなんて都合が良すぎる。
なんでこうなった?
いったい彼女たちを、なにがどう変え………あ。
ちくしょう。あのひとだ。きっと、どうせ、あのひとだ!
あのイカれたカウンセラーの梃入れかよ!
「ほら。言ってエー先輩。どうしたいのか」
「俺は」
「うん」
「………みんなに」
「うん」
「………触れたい」
「はい。よくできましたぁ」
俺から解答を強引に引き出したヒナが、顎を掴んで先制する。優しさで蹂躙するキス。「あっ!」と声を上げたユリンとシェリー。
短い触れ合いが終わると、満足そうにしたヒナが離れる。ムッとしたシェリーが、不器用な指遣いで顎を手繰ると、ヒナよりも強めな蹂躙をくれた。しかし羞恥が勝ったのか、ヒナの半分の時間で終わると、パッと離れてしまう。
それからが早かった。
シェリーはドアの鍵を閉める。ヒナはクローゼットのなかにある、レイシアから渡された箱を取り出してくる。ユリンは俺を脱がせ始める。
「いや確かに触れたいって言ったけど、こんな情緒もないシチュエーションにするか普通!?」
「甘いわねエー先輩。エー先輩は彼女ができたら、ゆっくりと愛を育みたかったんでしょう? 私にもそれなりの憧れっていうものがあるけど、もう限界なのよねぇ!」
「ひ、ひぃっ」
ユリンが俺のシャツを破る勢いで剥がす。
安全確認とドアのロックを仕掛けたシェリーと、箱の中身をごっそりと掴んで戻ってくるヒナ。
ついでに「あ、レイシアさん? 明日の朝、エー先輩の部屋のシーツとか持っていくので、お洗濯お願いしまーす」とか余計なこと言いやがった。それでいでレイシアは『あははは! ついにかぁ! プランS発動。思い切りやっちゃいなさい!』とか余計なことを言う。絶対楽しんで言ってる。
てかなんだよプランSって。Rしかなかったんじゃないのかよ。その次ができるの早すぎだろ。
「エー先輩。私たちにも性欲ってのがあるんだよ?」
「ぅぬあっ!?」
変な声が出た。出さざるを得なかった。
ヒナがついにトップレスになりやがった。それを皮切りにふたりも脱ぎ取る。
まるでライトノベルのチート系ハーレム主人公になった気分。いや、それそのもの!
大きさ、形は差はあれど、目の前には女神かと錯覚するような女たちが、妖しい笑みを浮かべていた。
「ヘタレなエー先輩に教えてあげます。女の子って、そんなに怖くはないんだって」
「あとはエー先輩の根性次第かしらねぇ。こちとら全員、こういうの初めてだけど………ね? 憧れの方が強いの。だから………んっ。ふふ。エー先輩、もう素直になっていいのよぉ?」
ユリンが左手を掴んで、胸に押し当てた。
初めて触る異性の素肌。吸い付くようで、絹のような触り心地。
「あっ………っ!」
俺はもう、自分自身を抑えきれなかった。
似非紳士、終了のお知らせである。
ブクマ、リアクションありがとうございます!
はい。お下品ですね。実にセンシティブ。しかもまだ続くという。R18タグを付けるべきかどうか………?
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