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命の価値A03

『全クルーに通達。レーダーが救難信号をキャッチしました。同時にアンノウンの出現を感知。データベース照合。救難信号を発信したのは民間のシャトルと判明。シャトルは航行が困難な模様。パイロットはただちに出撃してください』


「………だってさ。ほら、急げみんな。俺はここから行くから」


 危うくも昼寝と称して、肉食系女子たちに襲われるところだった。レッドアラートとあっては彼女たちも出撃しないわけにはいかない。


 渋々と引き下がり、更衣室へと走っていく。


「ふぅ………けど、喜んでばかりでも、いられないんだよなぁ」


 ストーリーはすでに第10話に進んでいるはずだ。


 第10話「命の価値」ではグラディオスに新風が巻き上がり、震撼するようなイベントが発生する。


 すべては航行不能に陥った民間シャトルを助けたのが始まりだ。


 シャトルには新しいキャラクターが乗っている。気のいい奴だ。だが………それがストーリーを良い方向に運ぶとは限らなかった。


「おやっさん。ガンビッドで先行します。ドローンカメラより先に出してください。けどドローンカメラも1機つけてください。目的のシャトルまで俺が誘導します」


 シートの上に移動する時間もない。ベッドの上に仰臥しながら、意識を射出前のガンビッドにリンクさせる。


『珍しいじゃねぇか。アイリよか先にって………いや、まぁいい。むしろそっちの方がいいな。あいつもまだかかる。お前はゼロタイムで出撃できる分、シャトルの救出もやり易くなるだろうしな』


 カイドウの許可を得て、ガンビッドが床のレーンを移動しながらカタパルトまで移動する。


 数秒でグラディオスから発進できるのが無人兵器の強みだ。この前の戦いで中破した2番の修理は済んでおらず、1、3、4、5番での出撃となる。


「………あそこか」


 4機のガンビッドと1機のドローンカメラを俺の意識下に置く。5機の同時操縦は推奨されていないが、ドローンカメラはあくまで誘導するだけだ。ガンビッドの戦闘の頭数には加えない。


 とはいえ、やはり推奨されていないとおり、いつもより負荷が強い。「くぅ」と唸りながらもドローンカメラを追従させる。


 ドローンカメラの望遠レンズがシャトルを捉える。その映像を参考に、ガンビッドを展開させた。


 目的とするポイントに確かにクリーム色のシャトルがいた。情報どおり航行はできておらず、何人かがノーマルスーツを着用して修理に当たっていたが、接近するアンノウンに焦っている様子だった。


「こっちだアンノウンども」


 1、3番が発砲。先頭のBタイプ2体をヘッドショット。4、5番が集弾させて倒す。


 すると敵勢力と断定し、アンノウンの注意を引くことができた。


 その隙にドローンカメラをシャトルに向かわせる。


「………やっぱり、いるよなぁ」


 シャトルの窓から数人の乗組員を発見。そのなかにいる、今回の波乱を巻き起こすであろう対象。


 正直、助けるべきか迷った。けれど俺はビーツではない。損得勘定だけで動かない。


 クランドが助けると決めたなら助ける。


 それが例え、俺の推し活対象者ではなかったとしても。


「おやっさん。ドローンカメラ12番をシャトルに設置します。通信をオペレーターへ繋いでください」


『あいよぉ! よくやった!』


 ドローンカメラをシャトルの上部に接続すれば、救難チャンネルでなくとも、ドローンカメラを介したダイレクトな通信が可能だ。俺がドローンカメラのリンクを切ると、カイドウの操作でオペレーターとシャトルの操縦士の通信が始まる。


 通信内容は聴こえていた。


 やはり推進器をやられたようだ。姿勢制御などに使う補助スラスターでなんとかしようとしても、望んだ速度は出ない。アンノウンに追いつかれてしまう。メインバーニアを修理するしかない。


 そこでドローンカメラ11番と、シャトルのサブスラスターを併用することで、戦線からの離脱、グラディオスに収容が決定した。


『待たせたなエース!』


『戦闘はこっちで引き受けるよ』


『帰ったら続きとしましょうねぇ』


 しばらくガンビッドと10体のBタイプ、2体のCタイプを交戦させると、シドウたち本隊が戦線に参加。猛烈な勢いでアンノウンを蹴散らした。


 戦闘時間は約3分。なかなかのスコアだった。






 その後、シドウたちミチザネ隊が民間シャトルの収容を補助して、カタパルトではなく、グラディオス後方の物資搬入用の巨大な格納庫に民間シャトルを収容した。


 全員が民間人だ。機密情報だらけのハンガーに入れるはずがない。


「グラディオス艦長、クランド・デネトリアだ」


「おお、連合軍の最新鋭艦ですな! なんと………なんと幸運な! 救助に感謝します。クランド艦長! 我々は幸運だ。噂に名高い連合軍の不沈艦に保護していただけるなんて!」


 大仰にする中年の男。名前はなかったが、確か軍人上がりだったような。


 今はその男と、副操縦士しかシャトルから降りていない。悪戯に外に出すわけにはいかないのだ。


「噂か。参考までに教えていただきたい。その噂、どこで聞いた?」


 この発言は本編にはない。ビーツの登場で疑い深くなったクランドの本音か。


「なに。民間シャトルであろうと、パイロットをやっていれば自然に耳に入ってきますよ。なにより、私もかつては軍属でした。怪我の影響で退役しましたが、リハビリを経て、再びパイロット職に就けました」


「そうか。あなたも軍人だったのか。ならば話は早い。軍規には従ってもらう」


「心得ております。クランド艦長」


 男が上機嫌で敬礼すると、クランドはやむなく、といった感じで敬礼を返す。


「んでぇ? このシャトルの修理だったか。ん。こんくらいなら3日で終わる。心配しなくてもいいだろ」


「おお、最新鋭艦のメカニックは本当に優秀なのですな。私の相棒は震えて使いものになりませんでしたよ」


「はっ。アンノウンに追われて、いつ死ぬかもわからねぇ状況で震えねぇ奴なんざいねぇよ。あんま責めてやらねぇこった」


 クランドに続いたカイドウは、数人の部下を連れて、早速シャトルの修理に取り掛かる。


「クランド艦長。保護していただいた上に、無礼を承知で申し上げます。治療を受けさせたい者がいるのです。お願いできますでしょうか?」


 シャトルのパイロットの男が、なかにいる誰かを見上げていた。


「怪我をしたのか?」


「それと、心の方を。アンノウンに襲われたせいで、かなり参っています。あのままでは、長い航行はできません」


「………ふむ」


 民間シャトルとは───便利であって、実はかなり不便なのだ。


 コロニーからコロニーへ移動する乗り物。


 地上を走るバスや電車。空を飛んで長距離を移動する飛行機とは、断然異なる。


 そのコロニーとコロニーが隣接していればいいのだ。


 しかし、コロニーとコロニーが距離があるとすれば。それなりの日数が必要となる。


 シャトルの規模と距離で料金も跳ね上がるが、なにより狭くもないが広くもないシャトルに拘束され、何日も過ごさなければならない。


 不自由を強いられるのだ。タイトな日々である。


 最上級のシャトルならある程度の自由もきく。それこそグラディオスの半分ほどの大きさのシャトルなんて、様々な施設を使えるらしい。豪華客船で宇宙を移動するようなものだ。ブルジョアたちの娯楽専用船だな。死ぬまでに一度は乗ってみたい。を企業がフレーズにしてるくらいだし。


 それに比べてこのシャトルは、庶民的というか、リーズナブルな代わりに色々と不自由を長時間課せられているような。そんな空間なのだ。プライベートな空間などないし、トイレは共用だしシャワーもなければ匂いもこもる。俺は………なるべくなら乗りたくはない。


 そんな劣悪に等しい空間でメンタルブレイクなんて引き起こせば、とてもではないが長時間をシャトルのなかで過ごせるはずがない。


 ゆえにパイロットの男は、クランドに医療の提供を求めた。


次回の更新は13時頃となります!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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