撃てよクソ野郎B12
『なるほどなぁ。なら、仕組みがわかれば、こっちのもんだぜぇええ!』
ハーモンも腕を上げた。
タイタンジャケットの応用だ。
最後の1体がソータの背後から刺殺するべく接近したところに、斜め下からの強引なアッパーカット。
Dタイプは長さがCタイプほどあるが、細身である。脅威は先端に触れたり、衝撃波に晒されたりすることだ。
しかしタイタンジャケットという重厚で重量のある装備なら、衝撃波などものともしない。細身なドリルは横からの衝撃に弱く、殴られたDタイプはひしゃげ、自分の回転力によって乱雑に踊り狂う。
『ナイス、ハーモン』
「まったくだ」
一号機のロングソードとガンビッドのビームナイフが、Dタイプの両端から一閃。真っ二つになって放熱しながら消滅。
「ソータ。ハーモン。お前ら、マジで成長したな。Dタイプをこうもあっさり倒すとはさ。感慨深いもんがあるよ」
そう。感慨深い。
ヒナが殺されたことでDタイプがトラウマになりつつあったソータは、会敵時にはまともに戦えなくなり、ハーモンは怒り狂って無謀に仕掛けた末に機体を中破させた。
それを思うと、冷静に対処し、背中を預けられる仲になり、Dタイプをこうもあっさりと倒してしまえるふたりに、俺は涙を浮かべずにはいられなかった。
『なに言ってんの? エー先輩。灰色のタキオンの方が強いよ』
『まったくだ。俺なんか1回しか勝てなかったぜ』
『ちなみに俺は3回』
『まぐれでな』
『そっちはシステムのバグでしょ』
『やんのかテメェ』
『その可愛いパジャマ脱がせてあげようか?』
………忘れてた。ソータとハーモンは、一応喧嘩中だった。
原作でもそうだった。もっと殺伐としてたけど。
原作ではこの戦闘の終盤で、ハーモンは無茶が祟って敵に囲まれる。そしてシドウたちに挑発するように言うのだ。「撃てよクソ野郎」と。自分ごと敵を倒してみろと。
シェリーはもちろん撃てない。シドウもなんとかしようとするが、敵の包囲網が厚く、接近できなかった。
そこで覚悟を決めたソータが、初めてライフルを使用。ハーモンに「絶対に動くな」と言って、狙撃を開始。
危うくフレンドリーファイアするところだったが、窮地を脱したハーモンは反撃を開始。ソータと組んでアンノウンを撃破する。
両者とも、決して謝りはしなかった。
ハーモンはソータをずっと気遣っていたんだな。
いつまでもヒナの死とアイリの負傷を気に病んで、ウジウジと腐っていたソータを見ていられなかった。
よって荒療治的な、覚悟を決めさせるような演出で、ソータが奮起するよう、あえて敵に囲まれた。
まんまとハーモンに乗せられたソータは「やりゃできるじゃねぇか」というハーモンに苦笑して、それから嬉しそうにしながら敵を倒す。
実にハーモンらしいやり方で、ファンらの評価が裏返る。俺もそう。ハーモンがいい子だったと初めて知った。
「あー、はいはい。そこまで。戦闘中に喧嘩すんじゃないよ」
剣と拳を向けようとした2機の頭部を、ガンビッド2機の銃口で軽く小突く。ガンビッドで拳骨代わりの衝突なんてさせようものなら、こっちが壊れてしまう。
『けど、エー先輩!』
「勝ったって実績がありゃいいよ。回数なんて問題じゃない。どんな形であれ、試練を乗り越えられたなら上出来だ。俺は嬉しいよ」
『………まぁ、エー先輩が喜んでくれるなら、いいっすけど。てか、俺らに怒ってたんじゃないんすか?』
「ふたりにゃ怒ってないよ? 俺がどうのとか噂を流してくれた、悪戯好きな子猫ちゃん3匹を、どうやってお仕置きしてやるか楽しみにしてるだけさ。くくく………なぁハーモン。あいつら、1週間お菓子禁止って言ったら、泣くかな?」
『発狂するんじゃねぇっすか?』
「いいね。じゃあ採用。くくく………あははは!」
『うわ、エー先輩が壊れた』
ソータとハーモンが引いている。でも構わない。
「じゃあなにか? ソータはあの3人にどんな罰を与えればいいと思うよ? ま、まさかお前………赤ちゃんプレイ風オイルエステを本当にしてもらいたいのか!? マジかぁ………ソータはえっちだなぁ」
『か、勘違いしないでよ! な、なんだよ赤ちゃんプレイ風オイルエステって………』
うは、照れてるぞこいつ。
相手はもちろん、アイリだろうなぁ。それをイメージして恥ずかしそうにしてるってか。
よし。アイリに報告して俺の部屋貸してやろう! アイリの反応が楽しみだ!
セクハラだって本当に訴えてきたら、元凶のレイシアも道連れだ! 絶対に凶悪プランAからRまでを暴露してやる!
っと。まだ戦闘中だった。
原作にない流れになってしまったが、一応、ソータとハーモンは大人しくなっているし。これで両者とも謝らせれば引っ込みもきくだろう。
「戦線に参加するぞ。かなり遅れてる」
『う、うん。そうだね………』
まだ照れてるのかこいつ。ついでにとどめだ。一号機の肩に接触して、通信回線を個人で合わせる。
「ソータ。あとで俺の部屋貸してやるよ。あの子と楽しみな」
『ちょっとエー先輩! なんでアイリと───』
「おやおやぁ? なんでアイリの名前が出てくるんだぁ? 俺、あの子って言っただけで、一言もアイリだなんて言ってないよなぁ?」
『っ………も、もういい!』
初い奴め。
素直にさせるまであと一歩。肉欲はあるみたいだし、あとは機会さえあればアイリを欲するようになるだろう。しめしめ。
一号機がガンビッドを振り払うように飛翔する。ガンビッドと三号機もそれを追った。
一方的にニヤニヤしているとハーモンに『なんかあったんすか?』と聞かれたが、ハーモンとカップリングができる女子がいない以上、教えても仕方ない。「ちょっとからかってやっただけさ。あとで教えてやるよ」と濁す。さて、どう誤魔化したものかな。
なんて考えていたのも束の間。
戦線に復帰した俺たちを待っていたのは、本当に、いやもう本当に、どうしてこうなった? とも言えるようなカオスだった。
『撃ちなよシェリー』
『そういうヒナだって撃ったら?』
『ちなみに私は撃たれても問題ないから撃ち放題よぉ。さっさとしなさぁい?』
なんか………ね?
原作でハーモンが「撃てよクソ野郎」と挑発していたけど、なんでよりにもよってヒナ、シェリー、ユリンが敵陣のど真ん中にいて包囲されているにも関わらず、互いに挑発し合っているんだろう?
え、待って?
意味不明なんだけど?
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