撃てよクソ野郎B07
オリジナルガリウス、タキオン。それはケイスマンが設計した、作中最強の機体のひとつである。
登場したのは第2クール中盤。謎のルートからアリスランドが仕入れ、アークをパイロットに添えた。
最大の特徴が神経接続型ガリウスであること。それは操縦桿を握り、スロットルを絞り、ペダルを踏むという作業を不要とする特殊なシステムである。さらに機体と接続されたパイロットの感覚を加速させ、熟練のパイロットでも不可能とされる反射や反応を促すことができる。
ガリウスGの全長は10メートルだが、タキオンはそれよりも高い12メートル。
バックパックも特殊な形状。大気圏内外問わず使用できるスラスターが、装甲を割って出現する。
ジャケットを装備するという概念はない。ネイキッド状態ですでに完成されたフォルムをしているからだ。
仮想空間に降り立つ、アリスランドの漆黒のタキオンと同型の、灰色のタキオン。
予想以上の加速だ。エンゲージした途端にハーモンに肉薄していた。今は仮想空間ゆえにダメージはないが、これでもし実機に搭乗していたら、下手をすれば初速でコクピットブロック内で俺が圧死していたかもしれない。
『ガンビットじゃ、ない!?』
『これってアリスランドの奴が乗ってた奴と同じ機体!?』
アイリとソータが叫ぶ。
「俺がいつガンビットで出撃するって言ったよ? 俺だってガリウスに乗るんだからさ。こうしてシミュレーションで訓練したかったんだ。それよりほら、かかって来い。コウ、ハーモン。同時でもいいぞ?」
カラフルなナンバーズとは違って、灰色という地味な機体だ。しかしナンバーズよりも一回り大きいこともあり、どう攻めるのが正解なのかと躊躇っている面々。
「あ、そう。じゃあ、こっちから行こうかな」
ペダルを踏み込む。俺だってプロトタイプガリウスGの搭乗経験がある。徐行はお手のものだ。スイーと泳ぐように三号機と四号機に接近する。
『………へっ。忘れたかエー先輩。こっちの方が場数踏んでるんすよぅっ!』
『派手な登場をしたばかりで申し訳ないが、手は抜かない!』
タイタンジャケットを装備した2機が左右から迫る。
「手加減? ああ、しなくていいよ。そんなもん。必要ない」
巨大な拳がタキオンに突き立つ寸前、ペダルから足を離した。
そして、タキオンがその名の由来となったように───加速する。
『なにっ!?』
『なんだと!?』
「頑丈な拳はアンノウンをも砕く。その熱にも耐える。けどどれだけ硬かろうが、同一の素材とほぼ同じ速度から、異なる角度から衝突すれば壊れるのは必然だ」
俺はペダルだけでなく、左手までもスロットルレバーから離していた。
タキオンはただ前進しただけだった。たったそれだけ。ハーモンとコウが反応するよりも速かった。
そして再び加速。回転。旋回脚。ハーモンとコウを弾き飛ばす。
仮想空間でよかった。ネイキッド状態のタキオンでは、関節になんら強化も施してないだろうから、実戦でやれば間接が弾け飛んで、カイドウたち整備士らの怒りを買っていたかもしれない。
「ほら、おいでみんな」
『くっ………!』
シェリーの五号機がスナイパーライフルを構える。しかしその瞬間にはもう、タキオンが五号機の眼前にいて、ライフルの銃身を掴んで曲げていた。………多分、これもやるとマニュピレーターがイカれて破損、全取り替えの羽目になる。あとでこの模擬戦の結果をカイドウに送って、要改善箇所として強化してもらわなくては。
『ね、ねぇ………おかしいよ。エー先輩、右腕が無いんだよ!?』
『そ、そうか! でもなんで、腕がないのにこんな複雑な操縦が………いや、俺に匹敵する技術を得られたんだ!?』
ヒナの六号機がライフルを発砲するも、もうそこにはタキオンがいない。ソータの一号機が仕掛ける前に背後に移動していて、ともに同じ軌道で飛翔する。
『………脳内チップ!』
「そう。当たりだよユリン』
神経を接続することで己がガリウスとなり、マニュピレーターの細部の動きに至るまで自分のものとする。それが神経接続型ガリウスのコンセプトだ。
その場合は欠損した肉体にインターフェースを埋め込んで、そこから接続しなければならない。
けど、まだ俺の右腕にはインターフェースがない。ラバー製のカバーだけだ。
そこで注目したのがシミュレーションによる仮想空間での模擬戦である。
ガリウスGの情報をインプットすれば、そのとおりの癖や推進力が反映される。しかしタキオンの情報をインプットした場合、インターフェースを挿入せずとも、脳内チップと同期しただけで同じ効果を得ることができるのだ。
「どうしたソータ。お前のマニューバはその程度か?」
『くっ………最初はゲロ吐きそうになってたくせに!』
「うるさいよ」
『うがっ!?』
どれだけ引き離そうとしても、脳内チップの演算機能を用いれば、ソータの次の軌道を予想することができる。また神経加速効果も併用し、一号機の背後から直近で見たメインスラスターの機微な動きさえ見逃さない。確実に、一瞬の遅れもなく背後にピタッとついて、ある程度飛翔したあとに蹴り飛ばす。その先にいたヒナにぶつけた。
タキオンのメイン装備はまだ実装されていないが、以前の戦闘データをハルモニに記憶させることで、ハードポイントの位置や、装甲の隙間、マニュピレーターの癖から凡その予想をすることができた。あとは俺の記憶を参考にする。
右腕の装甲が割れてヒートナイフ。左腕の装甲が開いて、実弾のヘビィガンを取り付けておいた。
俺の動きを予想していたユリンに狙いを定め、ヘビィガンを発砲するも、銃弾の速度を利用して、ヒラリヒラリと躱す二号機。
『無駄よエー先輩。パピヨンジャケットに銃は───』
「ブラフだよ」
『えっ』
六号機に衝突した一号機が持ち直す前に足を掴んで移動。
二号機の眼前で高速回転。一号機を巨大なバッドに見立てて振るう。
「パピヨンジャケットのその動きを封じるには、回避に必要とされる揚力以上の力と速度をぶつけるしかない。指先くらいの銃弾ならともかく、自分と同じ大きさの物体が迫れば、回避はできない」
『うっ!?』
『があ!?』
ファンならではの知識無双ってやつだ。
パピヨンジャケットは大気圏内では空気の抵抗を、大気圏外であれば羽から放出する薄いビームの膜を使って揚力を生み出す。
それさえわかれば、攻略は容易だ。まさかユリンも、こんな早期に弱点を突かれるとは思いもしなかっただろう。
「まだ終わりじゃないだろ。回復は無限にしておいた。銃弾も尽きることはない。溜め込んだものすべて吐き出しちまえ」
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