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撃てよクソ野郎B06

「チーム分けは無し。好きなようにやってみな。全員が敵。俺も途中から入るけど、味方だと思うなよ?」


 どちらかといえば、それが目的だ。


「へぇ………容赦しなくてもいいんですねぇ?」


 ユリンのマルチロックオンシステムは広すぎるから困る。


「いいぞ。遠慮なくかかって来な。俺もお前たちを落とすつもりでやるよ」


「いや、エー先輩。そりゃなんでも」


「俺たちの敵になれるかどうかもわからん相手に、本気を出せるはずがないだろうが」


 ハーモンは苦笑し、コウは困った表情を浮かべる。


 こいつらめ。勘違いしてやがるな。


「ふーん。なんだそりゃ。負けた時の言い訳か?」


「負けた時? 俺の耳がおかしくなったのか? エー先輩。まさか俺たちに勝つつもりでいるのか?」


「おう。なんだったら武装も制限してやるよ」


「………好きにしろ。勝負になるはずがないだろうがな」


 コウはやる気になった。クランドにボロクソに言われて、不調に陥った彼への荒治療として、挑発が最適だな。


「他のみんなもな。ああそうだ、アイリも入っていいぞ。なんだったら八号機でエントリーしな。たまにはパイロットとしての経験を積むのも必要だろ。ただし、みんなはアイリへの攻撃は禁じる。攻撃されたら避けるか防御。反撃とカウンターは禁止。ハンデは必要だ。それくらいやれないとな」


 パイロット6人の他にドローンカメラの操縦士であるアイリも呼んだのはそのためだ。


 アイリは第2クールで八号機のパイロットになる。今から訓練させて損になることはない。


「は、はい。わかりました。頑張ります………」


 乗り気ではないアイリは初めてのガリウスGの操縦とあって緊張しているようだ。適正試験としてシミュレーションをした結果、スコアはEだった。よって整備士に配属された。が、ドローンカメラの操縦で経験を積んだ今の彼女なら、Aに近いBのスコアは出せるはずなのだ。


「じゃ、搭乗開始。なお、今回は予備パイロットには見学してもらってる。正規パイロットとして、模範となる操縦を見せるように。以上」


 パンパンと柏手を打って合図する。


 やる気がないソータは、いつも以上に憂鬱そうな面持ち。


 しかし俺はその理由を知っている。昨日の聴取で、ソータは喧嘩してしまったハーモンたちに罪悪感を覚えていて、どう謝ればいいのかわからないと語っていた。


 それはハーモンも同じで、謝りたいのに、どう謝ればいいのかわからない。こんな悩みは初めてだと困惑しながら俺に打ち明けた。


 みんな変なところで頑固だからな。多分、ユリン以外はそうなのだろう。自分が悪いとわかっているのに、謝り方がわからないのだ。きっときっかけさえあれば、元に戻れる………と信じていたかったのに。


 5分後───シミュレーション開始と同時に、



『死ねやオラァァアアアアアアッ!!』



『死ねとか言うなら、一回でも落としてから言えば? ダサいよ』



 コンソールから表示される複数のモニターで、一号機と三号機が早速衝突した。


 スピーカーから発するハーモンの怒号。ソータの冷笑。これは酷い。もう昨日のリターンマッチをするとは思わなかったよ。


 クスドを中心とした予備パイロットたちが、青褪めて複数のモニターを見上げていた。ドン引きしている。


 かと言えども、決して乱暴に特化した操縦はしていない。数々の修羅場を潜ったパイロットだ。スロットルの緩急など、緩めるべきところは緩めている。それがあるから複雑な軌道を描けるのだ。


『くっ………な、なんだこの動きは!?』


『どうしたの? 猪突猛進その2! 当ててみなさいよぉ! あはぁ、あはははははっ!』


 別のポイントでは、コウとシェリーとヒナがユリンに集中砲火していた。ヘイトを集めた結果だろう。しかし、パピヨンジャケットを装備した二号機に、銃弾が一発も掠めることはなかった。


 このパピヨンジャケットは上半身に被せるタイプであり、大気圏内外共有できる優れものだ。タイタンジャケットと比較しても半分以下の重量と、高い推進性かつ予測不能な高起動性を両立している。


 名称どおり蝶を模したジャケットで、ビームの翼を発生させ、ヒラリヒラリと自在に宙を舞い、なおかつ敵の攻撃に対して、その勢いを利用した回避を可能にしている。これは空中で飛ぶ蝶を捕まえようと、手を差し出しても揚力で逃げてしまうあの飛び方を参考にしたもので、ユリンの操縦と戦い方と実に相性がいい。


『んふふ………そんな攻撃をしても無駄。永遠に当たらないわぁ』


 3機からの飽和攻撃をものともしないユリン。コウたちのフラストレーションも蓄積されていく一方だ。


 最初からふたつのチームに分かれてしまったのは、単に機体に乗ってしまっているからだろう。生身と機体では使い方が違うし、考え方も異なる。俺はてっきり、ソータとユリンを囲んでまとめて叩くと予想していたが外れてしまった。


「見ちゃいられねぇな。これじゃ、いつもと変わらねえじゃん」


「仕方ないですよ。みんな、ここ最近でシミュレーションルームでの模擬戦回数が200回を超えてますし、ユリンのパピヨンジャケットだって今日初めて実装したんですし。誰がどう動いて、どんな脅威になるのかわかってるんです。………想定外といえば、アイリだけですけど」


「………あー」


 喧嘩をしたとはいえ、互いに手の内を知り尽くした仲だ。口汚く罵倒しながらの戦闘であっても、いつもと変わらない不毛な時間になってしまう。


 そうならないよう、初の試みとしてアイリを参加させてみたところ、彼女にとって初めての模擬戦であるがゆえ、距離感がどうしても掴めず、離れたところでライフルを撃っているだけで当たりもしない。


「仕方ない。味変の時間だ。俺が出る」


「エー先輩。いいんですか? 本当に………」


「良い刺激になるだろ。クスド。設定を変えておいてくれ。みんな弾切れは無し。損傷してもすぐ回復するようにな」


「は、はい」


 俺はカプセルのひとつに搭乗する。すべての設定は事前に終わらせておいたのが幸いして、すぐに仮想空間での模擬戦に参戦できた。


 けど、いつもとたったひとつ違うところがある。


 それは───



「なーにちんたらやってんだぁお前らはぁぁあああ!!」



 出撃と同時にフルスロットル。手近にいたハーモンに全力の()()()()()()()をかますと、奇襲に対応できなかったハーモンの三号機が面白いくらい突き飛ばされて、その先にいたコウたちに激突した。


「え、エー先輩………その機体って」


「ん。これが初となるお披露目だな。今ドッグで製造してもらってる、俺だけの機体だよ。オリジナルガリウス、タキオン。アリスランドのアークが乗ってた奴だな」


 臨場した俺が搭乗したのは、ドローンカメラでもガンビットでもない。


 グラディオス製の、灰色のタキオンだった。


ブクマ、リアクションありがとうございます!


は、8回目ぇ………ついにやりました!

朝から晩まで書いて書いて書きまくりました!

すごく疲れたぁ………でも終わりではありません。明日の分も書かなければ。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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