撃てよクソ野郎B05
「ふーん? で、エースくんはしぶとく耐えたんだ。なっさけないねぇ。女の子がここまでしてくれたのにさぁ、応えようとしないんだぁ?」
「………」
「うわぁ、怖い顔」
事情聴取を終わらせて、すっかりとヘトヘトになった俺は、少しだけ休んでから、メディカルルームへと足を運んだ。
ソータとハーモンのマッサージで、辛うじて歩けるまでに回復した。ヒナの生殺しは………言うまでもない。
で、レイシアは得意の観察眼を使って、カウンセリングに使う簡易デスクに突っ伏す俺を分析。
なにを白々しく言うんだか。ヒナをけしかけた元凶め。俺がどれだけ必死に、あの生殺しを耐え抜いたのか思い知らせてやりたいところだ。
「ハァ………それについてはこの前説明しましたよね? ビーツみたくなりたくないから、我慢してるんだって。それなのにヒナに余計な知恵を授けて。いったいどんなレクチャーしてくれたんですか?」
「んふふ。秘密だよー」
これは酷い。俺が負けるのも時間の問題だ。
いっそのこと、ビーツとの読み合いにレイシアを差し向けたら、いい感じの嫌がらせをしてくれるのではと、本気で考えてしまう。
「と、とにかくっ。これで事情聴取は終わったことですし。全員の話をまとめると!」
赤くなったクスドが身振り手振りしながら叫ぶ。
俺たちの智将とすべく育てたにせよ、性に対する知識までは乏しかったのだろう。俺とヒナの関係を知らなかったのだろうし、特にヒナの攻め方を耳にした途端恥ずかしそうにしていた。
そのすべてがレイシアによる差し金だったと知ると、信じられない、といった表情になっていたのも印象的だ。
「ソータたち5人は、フォーメーションのことが原因で喧嘩になりました」
俺とクスドの聴取を総括した結果、一致した部分をピックアップする。
「前衛と後衛。どちらが優れているか、ということではなく………ええと」
「俺のポジションか」
「あ………はい」
それはソータとハーモンも言っていた。
俺はこれからタキオンが製造し次第パイロットとなり、ミチザネ隊の一員として活動することになる。ガンビットも、もう使うことはないだろう。
しかしその編成による、ポジションについてまでは未定のままであったのだ。
「エー先輩がどのポジションになれば負担が軽減されるのかで喧嘩になったようです」
「ポジション、ねぇ。タキオンにポジション………一応、俺の想定ではオールラウンダーだし、どのポジションだろうがガンビットみたくカバーするつもりだったんだよなぁ」
「しかし、全員の意見では、えっと………誰がエー先輩とペアを組むのが効率がいいのかで争っていたとも」
「ペア………ペア、ねぇ」
俺たちはこれから本格的なチームになる。
俺が参戦することで発生してしまった争奪戦で、殴り合いが発生してしまったわけだ。
シェリーとコウも同じ理由と聞いて、嬉しくなって複雑な気持ちになってしまう。「やめて。俺で争わないで」状態だ。
「クスドはどう思う?」
「シェリーとコウにも聞かれましたよ」
「どう答えた?」
「エー先輩に更新してもらったシミュレーションで得た最適解を答えたら、怒られました。レイシアさんがいなければ殴られてましたよ」
「だよなぁ。悪かったな。損な役回りさせちまって」
「いえ。必要なことでしたので」
クスドはすでに理解している。
俺がタキオンに乗ったとして、誰と組むのが効率がいいのか。
けれども、まさかそれを巡って喧嘩になるとは考えてもいなかった。
原作とはかけ離れて、パイロット全員がバラバラになってしまっては意味がない。
梃入れしようにも、どこからメスを入れて修正したものか。
「わかった。とりあえずそのデータは俺がもらう。レイシアさんにも共有してもらおう。要点や結果を書いて、シドウ隊長に送って………あぁ………頭痛ぇ」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないけど、やるしかねぇよなぁ。………仲直りねぇ。さて。どうしたものか」
「ならいっそのこと、全員で暴れさせちゃえばいいんじゃない? シミュレーションとかでさ」
俺が頭を抱えると、クスドが妙案を出す前にレイシアが意外なことを言う。本当に意外だった。
「そうか。シミュレーションっていう仮想空間なら、どれだけ相手を叩きのめそうが怪我をしないし、機体の損耗や損傷がない! 模擬戦っていう名目の喧嘩をさせるのに最適ですね!」
クスドのテンションがいきなり高くなる。
酷い言いようをしているが、シェリーとコウに延々と愚痴をこぼされて参っていたらしい。
けど仮想空間で殴り合いというのは、確かに物理的な損害にはなっていない。妙案だ。
「わかりました。とりあえずレイシアさんのプランに従って、明日にシミュレーションルームの使用許可を提出。俺も仮想空間なら問題なく動けるし、一緒にやってみようかな。ストレスと本音をぶつけ合って発散させれば万々歳。納得するまでやらせてみよう。………ところでレイシアさん。ヒナに教えたイカれたプランですけど、Eの他にまだあるんですか?」
「んふふ。Rまで用意してるよ。楽しみにしててね」
「イカれてやがる………」
翌朝。
昨日のうちにシドウに事情聴取の詳細を送り、同時にシミュレーションルームの使用許可も取ってあったこともあり、円滑に全員を集めることができた。
パイロットスーツを着用した7人の前に立つ俺。俺はまだ右腕がないし、整備士用のノーマルスーツのままだ。
試しにシドウを真似して敬礼してみる。すると、アイリ以外が訓練された動作で同時に敬礼を倣った。感動しつつも左手を降ろす。
「さて………集まってもらったのは他でもない。昨日、散々やらかしたお前たちが、まだ暴れ足りなさそうな顔してたからな。昨日の喧嘩の続きをさせてやろうと思ったんだ。どうだ? 嬉しいだろ」
「素晴らしい提案だわぁ、エー先輩!」
「ありがとな、ユリン。けど喜んでるのお前だけって、どういうことだと思う?」
「気合いが足りてないんだと思うわぁ」
「そっか。気合いかぁ」
「気合いよぉ」
なんだかユリンと一気に仲良くなった気がした。ノリがいつもより良い。
それを見たヒナとシェリーがムッとする。視線に気付いたユリンが、挑発するように「フフン」と鼻を鳴らして嘲笑う。
7回目!
残り1回! それができれば8回目! 今年初めての無茶!
帰ってきたと同時に執筆に移ります。すごく忙しくて疲れて充実していました!
締切に追われている気分だったと思います。
では、次回………ラストは21時頃に更新します!
8話連続更新………約23,000文字を書きました! しかし今夜はあと2話書かなければなりません。つ、疲れたぁ………介護と一緒にやるもんじゃないですね。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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