撃てよクソ野郎B01
パイロットである以上、ある程度の体力は必要不可欠である。
隊長であるシドウが述べるまでもなく、サフラビオロスでアスクノーツ学園航宙学部パイロット科に在籍していたソータたちの共通の認識である。
アスクノーツ学園には最新のトレーニング機器が揃っており、学生は誰でも好きな時に使用できる。
しかしグラディオスにはそんな施設はなかった。
いかに最新鋭艦といえど、スペースは限られている。前後左右上下と、拡張できるところなどなく、また限られたスペースをいかに有効活用するかで日々の生活でストレスを感じずに過ごせるかが急務とされていた。
ゆえにパイロットたちは、ある程度拓けていて、体に負荷をかけられる場所で訓練するしかない。展望デッキがその例だ。クルーの憩いの場所ではあるが、あくまで休憩時間で過ごす場所で、長時間滞在できるところではない。パイロットたちの筋トレには適していた。
シドウやクランドには許可を取っている。むしろここしかないだろうと認可された。
走り込みができるほど広くはないが、全員が手を広げて並んでも、手がぶつかることはなく、あと10人ほど横一列になっても端から端まで届かないくらいの奥行き。各自、決められたプランに従って、黙々とトレーニングに励んだ。
休憩は自由である。サボろうと思えばサボれる。ユリンがその例だ。半分ほど終わらせて無言で出て行ってしまった。とはいえ彼女のストイックさは全員が知るところ。トレーニングよりも優先したいことがあるのだろうと、あえて指摘も呼び止めもせず背中を見送った。
「ふっ………」
「あ? んだよ。いきなり笑いだしやがって。気持ち悪ぃぞ」
腕立て伏せをしていたコウが、80回を悠々とクリアした時点で不敵な笑みを浮かべた。隣でスクワットをしていたハーモンの耳に声が届いたのだろう。いつもの挑発をするも、決して喧嘩腰のトーンではない。口が悪いだけなのだ。
「いや、悪い。俺たちがこうして、パイロットとして組んで、トレーニングをして………よくもまぁ、長続きするものだと思ったら、急におかしくなってきてな。不快だったか。許せ」
「そういうことかよ。なら、不快じゃねぇ。なんなら、いっそのこと大声で笑っちまえよ。その方が、すっきりするだろうぜ」
ふたりともトレーニングをやめずに会話を続ける。
それを聞いていたヒナ、シェリー、アイリは腹筋をしながら顔を見合わせて笑う。クランチをしていたソータも薄くではあったが、ちゃんと笑っていた。
グラディオスに収容された当初なら、こうはいかなかった。
面識はあれど友人でもない彼らはバラバラで、連携など可能にするはずがなかった。その上、ハーモンとコウは妥協というものを知らない。誰かが合わせなければならないが、調子に乗って増長させるのも嫌だった。
犬猿の仲であるハーモンとコウ。喧嘩であれど負けん気が強いシェリー。誰かを破滅させたい願望のあるユリン。他人に興味がないソータ。そして元気はあれどいつも空回りするヒナ。
初めての実機演習後、ヒナは嘆き、アイリはパイロットにならなくて良かったと告げたほど、最悪な6人だったのだ。
それが今はどうだ。
軽い言い合いはするがじゃれ合い程度のハーモンとコウ。負けん気はあれど誰かをサポートしたいと願うシェリー。悩みを解決したいと願うユリン。他人への興味と調和を覚えたソータ。死ななかったヒナがうまく全員をいい方向にまとめている。
体力もつき、操縦に磨きがかかり、なにも言わずとも連携を可能にした。
シドウも各々が一人前だと認めた。
最新鋭機とはこれまでのガリウスFと違い、操縦に難がある。癖が強いとも言うべきか。
しかし、個々が懸命に課題に取り組み、それらをクリアした上で、ハーモンとコウはタイタンジャケットを装備して貢献するようになった。パピヨンジャケットも製造され、ユリンもすでに演習で使いこなし始めている。
これを盤石と言う他、なににも例えようがなかった。
───だというのに。
彼らが数ヶ月の努力と交流で築いた絆が、数分後に崩壊することになるとは、パイロットのやり取りを微笑ましげに見ていたアイリが予想できるはずがなかったのだ。
それはもう、大きな騒ぎとなった。
大乱闘である。混戦である。味方などいない。そこにいたパイロット5人が主張を違えた結果、陣営など築く暇もなく拳と蹴りが飛び交った。
幸いだったのが、そこが展望デッキであったこと。鍛えているとはいえ子供だ。誰かが畜層された強化ガラスに思い切り体を打ち付けてもガラスは亀裂さえ入らない。そして監視カメラが多かったこと。死角無き配置。防犯目的で設置されたそれを管理するクルーがトラブルを発見。使用許可もあるし、子供のみであったことからパイロットリーダーに通報。それでも人員が足りないであろうから整備科と砲雷科にも通報。上長を召喚した。
「この雑魚どもっ! 俺のなにが間違っているのか言ってみやがれってんだコラァッ!」
「やかましいぞ馬鹿猿! そこの姑息なスナイパー女とともに俺の後ろで大人しくしていれば万事解決するんだ!」
「誰が姑息だって? この脳筋ども! 男って本当に馬鹿。猪みたく突っ込むふたりと、実力を過信するエースパイロット。ふわふわしたことしか言えない馬鹿。大したもんだわ!
「弱いくせになに一丁前に言ってるの? 俺を落としてから文句言いなよ」
「ふわふわしてないもん! 最初はチームワーク最悪だったみんなに、そんな偉そうなこと言われたくないよバーカッ!!」
………阿鼻叫喚とは、このことだよなぁ。
アイリから知らされて、駆けつけてみれば、これだもん。
ユリンとともに展望デッキに入れば、シドウ、カイドウ、アーレス、整備士と砲術士たちに引き離されても口喧嘩をやめようとしない5人が、傷だらけになって拘束を逃れても殴りに行こうとしていた。
ハーモンとコウならわかる。久々にキレちゃったんだなって。なら仕方ない。営倉に入って頭を冷やしてもらう。連帯責任で俺も入る。で、説得して終わり。
………のはずが、なにを間違えたのか、喧嘩っ早いシェリーは当然、珍しくソータとヒナが殴り合いの喧嘩に参加してるんだもんなぁ。
筋力の関係から、ハーモンはアーレスが、コウはシドウが止めている。シェリーは女子だし女性の整備士と砲術士が、ソータはカイドウが、ヒナはアイリと他の女子が阻止している。
「………なにがどうなってこうなったんだか………」
《メカニック・エース。前方注意》
「え? うぉお!?」
「エース先輩っ!?」
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