撃てよクソ野郎A08
「お前ら、おはよー」
カイドウから叱られて、面談みたいな会話をしたあと、俺はシミュレーションルームに向かった。
そこには日々成長する予備パイロットたちがいて、こんな生活を続けること数ヶ月だというのに、全員が正規パイロットになるために日々努力と研鑽を重ねていた。
「おはようございます。エース先輩」
「あーざまっす。先輩」
「あ、そこ段差ありますよ」
「気をつけてくださいね」
相変わらず好印象を向けてくれる、名も無きキャラたちだこと。
でもなんでかな。日に日に、扱いが学園の先輩だった男から、介助が必要な老人みたくなってきてるような?
「おお、ありがとな。………クスドいるか?」
「あそこに」
「ん。あんがとよ」
横にいた少女の頭を撫でて通る。
スタッフロールには名がないだけで、作中では台詞もなくただ動いてるキャラクターであっても、ここでは感情と名前があるのだ。確か彼女の名前はジェシカだっけ。緑色のショートヘア。活発な印象のある少女。
いきなり髪を撫でるのはセクハラだけど、先輩と後輩の仲ってことで見逃してもらうとして………あれ?
「えへへ。やったー」
あらら。嬉しそうにしちゃって。
周囲が羨ましそうにしてる。
それを横目に、いつもの中央コンソールで作業をしていたクスドのところへ移動する。
「おはようございます。朝からモテモテですね。エー先輩」
「これ、モテてるのか?」
「あとは、エー先輩の神通力を目的にしてるのかもしれませんよ」
「は、はぁ? 神通力だぁ?」
クスドは俺の接近に気付いていて、振り返るとふにゃっと笑った。
これで本編ではエースに陰で嫌がらせをしていた姑息なクズという印象の少年だったのだから、大した変わりようだ。
「エー先輩の手には妙な力があって、撫でられると出世するって噂が出回ってますよ? 知りません?」
「初耳だぞ………え、なにそれ。怖っ」
いつから俺の手にそんな力が宿ったのやら。
けれど経緯は予想できる。
俺はグラディオスに乗ってから、いったい何人の主要キャラクターの頭を撫でてきたのだろうか。
大半がネームドキャラで、そりゃあ大成もするけど。尽力した甲斐あって生き残った奴もいるけど。
けど、だからって神通力が宿るゴッドハンドなんて噂を流されちゃな。
そしてモテ期とやらは勘違いで、ここにいる連中が俺の左手が目当てだと知ってしまい、複雑な心境になる。
俺はいつからグラディオスで神格化されてしまったのだろう?
「でも、エー先輩自身だって、ただの整備士見習いから出世してパイロット科の副隊長になったじゃないですか。そういう功績があるから尊敬を集めているんですよ。知ってますか? 女子たち、パイロットはイケメン揃いでアイドルみたいって騒いでますけど、最近エー先輩の人気が上がって、なんでもしてくれるスパダリみたいって憧れが………って、聞いてますか? エー先輩」
「んあっ………ごめん。ちょっと自分の世界に浸ってた」
「また無理してるんでしょう? ダメですよ、休まないと。………って言っても、どうせ聞かないんでしょうけど。エー先輩って、どこか自分勝手なところがあるからなぁ」
「さすがクスド。俺の良き理解者! 褒めてやる。こっち来い」
「い、痛い痛い! 痛いですってエー先輩!」
「喜べクスド。神通力のある左手で撫でられてるじゃないか。出世するぞ」
「手のひらで優しく摩ることを撫でると言うのであって、拳でグリグリするのは撫でてるって言いませんよ!」
あの、原作ではいつも他人の顔色をうかがって、人陰に隠れてオドオドしているだけだったクスドも言うようになったじゃないか。殻を破ることでありのままの自分を晒してくれた。本気を出せば、怖くてたまらないはずのコウにだって強気に出れる。
成長を感じながら、右腕をクスドの首の後ろに回して固定し、左手の拳で頭をグリグリとしてやる。先輩後輩の仲だ。痛がってるけど喜んでいるに違いない。
数秒の褒美という名称の罰を与え終えて解放すると、クスドは涙目になりながら、コンソールを見るよう俺に促した。
「それより先輩。これなんですけど」
「………うん。いい感じだな」
シミュレーションルームはコクピットブロックを模したカプセルがいくつもあり、予備パイロットが毎日順番で訓練に励んでいる。正規パイロットが使用する際は優先される。
仮想空間でガリウスの操縦や指揮系統の練習を終えた者は、中央にあるコンソールに自分のアカウントでログインし、結果の分析をすることができるのだ。もちろん自分の腕の端末でも可能であるが、詳細を知るにはコンソールを操作した方が利便性に富んでいるため、クスドは優先的に使わせてもらっている様子だった。
クスドには俺が課したふたつのシミュレーションをやらせている。
ひとつはEタイプを想定した攻略戦。そしてもうひとつはアリスランドと敵対した場合の攻略戦。
「ふむ………どっちもD判定ね」
「すみません。ご期待に応えるには、もう少し時間がかかりそうです」
軽く頭を下げるクスドを責めるつもりは毛頭ない。
「仕方ないさ。俺も、条件を次々に更新しているから、難易度も上がりまくってるんだ。むしろ無理させて悪いと思ってるよ」
「そ、そんな! 刺激的なシミュレーションができて、僕、とても興奮してるんです! 最近なんですけど、力がついてきたとか、そう思えて、自信に繋がってきました。見ててください。明日にはどっちもCランクにしてみますよ!」
強くなった。クスドは以前のように結果を出せないからって喚き散らしたりすることはなくなったらしい。
今クスドにやらせているシミュレーションで、C判定を出せる者が、果たしてこの艦にいるだろうか。
一度、全体的な戦闘指揮を執っているクランドにもやらせてみたい。
多分だけどF判定にもならないと思う。数分で全滅だ。
それだけクスドのレベルが高くなっているということだ。
「へぇ。言うじゃん」
「え、えっと」
自信がついたなら、なによりだ。
ならばと、さらなるレベルを更新する。丁度、今朝に組み立てた対アリスランド戦のものだ。
脳内チップを介してコンソールに送る。更新された戦闘内容を見て、クスドは「うわぁああ!」と悲鳴をあげ、それを聞いた同期らが集まって青褪める。
「な、ななっ………なんですかこれは!」
「地上戦を想定した、対アリスランド戦な。けど、前は逆に、これは放置していい。今はこっちをやってくれ」
別のシミュレーションを送信。むしろこれが本命で、条件を解除して、本番を模したシミュレーションをさでることが目的である。
「これって、Eタイプの………」
「Eタイプの正しい情報を入力しておいた。まずはCランクを取れるようになってみな。最終的にはSランクを取らせる。そのつもりでいろ」
更新した戦闘こそ、第1クールの終盤を模したものだ。クスドには最短で学んでもらう必要があった。ゆえに渡した。
愕然としていたクスドだったが、急ぎ走ってコクピットブロックを模したカプセルに飛び乗った。どうやら火がついたらしい。いい傾向だ。
俺はそんなクスドを振り返らず、シミュレーションルームを出る。
しかし、すぐに足を止めた。
脳内でレッドアラートが鳴る。脳内チップが、ではない。
俺の経験と、本能が「即刻逃げるべし」と警戒をしていた。
「こんにちは。エース先輩」
「ああ。ユリン。どうした? 休憩か?」
シミュレーションを出た先に、ユリンがいつもどおりの上品な笑顔をして立っていた。
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