撃てよクソ野郎A06
ヒナを着替えさせて部屋から出す。起床時間にはまだ早い。今なら誰にも気付かれないはずだ。
一方で俺はパソコンを開き、作業を始めた。早寝し過ぎたせいで妙に早く起床してしまい、二度寝をしようにも顔や全身を包んでくれたヒナの感触が忘れられない。こういう時は仕事に没頭するに限る。没頭し過ぎて朝食を食いそびれては意味がない。ハルモニにタイマーの設定をしてもらった。
「アリスランドが仕掛けてくるのは地球だ。まずはドイツ支部に降り立って、日本を目指すことになる。けどその航路で………初めてアリスランドと出会うことになる」
長方形の箱が本体で、モニターとキーボードは立体投影となる優れ物。立体投影された半透明のモニターに触れ、航路を描く。左手の作業も慣れたものだ。最初はタイピングも危うくて、慣れるまで脳内チップで一瞬で済ませていたからな。
「このままで行けばオリジナルガリウスは両陣営で2機は揃うことになる。でもあっちは原作にない、外伝とか資料集とかで存在をほのめかされていた第八世代機を複数持っている。………パイロットの質が高ければ、第七世代機でも第八世代機に負けることはないとソータが証明してくれた。でもビーツはそんなことを想定していないはずがない。必ず改良してくる。それに前回は宇宙だったからな。大気圏内で同じことはできない」
実は、タイタンジャケットは大気圏外を想定して製造されたものだった。
重力に囚われない宇宙空間だからこそ真価を発揮できるのである。
逆に大気圏内でネイキッド状態、つまり素体にそれを被せてしまうと、どうしてもデッドウェイトになってしまうのだ。
数あるロボットアニメで、機体の上から追加装甲と武装を取り付けて出撃するのは、大抵が宇宙空間という鉄則もある。追加装甲や追加武装がある程度の軽量化が施されているなら別ではあるが、無線兵器も例外ではなく大気圏内で使うこともままならない。
簡潔に述べれば、重いからだ。
タイタンジャケットもその例に当て嵌まる。ソータもコウのタイタンジャケットを装着した際、宇宙空間であるにも関わらず「重い」と嘆いていた。
しかしその重さを解消する推進器があれば別だ。
先の戦闘で言えば、ファストパックという追加推進器をパージしたソータに、俺のガンビッドを与えて補助スラスターとした。
けれど大気圏内ではそうもいかない。地球ではガンビッドもドローンカメラも使えない。ドローンカメラならプロペラを付ければ飛べるだろうが───もう今までのようなアイリによるダイレクトサポートも適わない。コンテナを射出しようと、コンテナ自体に推進器やプロペラを取り付けるわけにはいかない。コストがかかる。
「タイタンジャケットを装備する際は、大気圏内と大気圏外とで装甲の増減が変わったし、サポートするメカも登場した。………なら、これからは………ファルコンだけでなくイーグルジャケットを製造するか。………違う。そんなのビーツだって考える。原作に準じた装備なんて作ってたら、多分………勝てない」
悔しいがビーツの言うとおりだ。
俺はいつもビーツの後手に回ってしまう。アイデアの差がそうさせている。
ビーツさえも上回るには、やはり原作にはないアイデアで打開するしかないのだ。
「ハルモニ」
『イェス。メカニック・エース』
「仮にだけどさ………ガリウスGを改修したいんだけど、こういうのはどうだろう。ちょっと待ってろ。イメージ送る」
脳内チップの利便性が発揮する。
頭のなかのイメージがデータ化され、腕の端末に送られる。パソコンにも共有され、図面が現れた。時間にして約5秒。これまでだったらこうはいかない。ビームシールドだって図面を引くのに苦労した。
『───不可能ではありません。しかし』
「しかし?」
『莫大な予算と時間。メカニックたちの理解が必要となります。この図は従来のネイキッド状態のガリウスの約4割を改造しています。そして駆動箇所が増えるごとに、メカニックたちの整備の手間が必要とされます』
「………だよなぁ」
図面には二足歩行状態の、素のガリウスG。その横に改修案である、横倒しとなったものが並んでいた。
「………なら設定を変更。グラディオスとアリスランドが大気圏内で戦闘を行ったとする。この前の戦闘記録は残っているな? それを基に、敵はタキオンを………2機。ガリウスHを10機とする。こちらの戦力はそのまま。戦闘を行った場合、グラディオスの勝率を計算してくれ」
『イェス。メカニック・エース。───終了。勝率は約3パーセントです』
思ったとおりの数字だった。
むしろ0パーセントと突きつけるものだとさえ考えていた。大気圏内だと性能の劣るタイタンジャケットでしか出撃できないしアイリのダイレクトサポートもない。俺も乗れる機体がない。
「これから俺が付け加える条件で計算してもらう。その1。実戦データがないから未知数だがスペックだけで計算。ユリンの二号機にパピヨンジャケットを装備。アイリをシミュレーションスコアAと仮定して出撃。結果は?」
『───5パーセントです』
「まだダメか。ならその2。俺がタキオンに乗る。結果は?」
『───18パーセントです』
「一気に3倍になったけど、まだ低い。ならその3。ソータをタキオンに乗せる。結果は?」
『───49パーセントです』
「やっぱり、タキオンレベルじゃないと、向こうを抑えられないか。………最後。その4。さっき俺が出したデータがあるな。それにユリン、ハーモン、コウ、シェリー、ヒナ、シドウ少尉、アイリを乗せて出撃。ジャケットはそのまま。結果は?」
『───87パーセントです』
「………やっと堅実なものになったな。………最後に戦闘面以外の計算を。それを実現できる………つまり、ガリウスG試作改修機を配備できる確率は?」
『───現段階では23パーセント未満です』
「くっ………内訳は?」
『ドッグの製造が間に合いません。そしてそれを満たせるだけの製造ができるとは考えられません』
厳しいことを言うAIだ。俺の異性絡みとなると途端にポンコツになるくせに、こういう時だけは冴えていて容赦がない。
でも、それでいい。
ビーツには希望的観測で勝てるとは思えない。
無責任かつ適当に「これなら勝てるよー」だなんて言われても気休めにもならない。
あらゆる角度から可能性を模索し、敗北してしまう要因を潰していく他ないのだから。
「よし。計算終了。飯食ったらおやっさんに見せに行くか」
『マスター・カイドウに殴られる確率は100パーセントです』
「うるさいよ。余計なことまで計算すんな」
最近ハルモニが一言多くなってきた。いったい誰をディープラーニングして学習したんだが………どうせ俺なんだろうけど。
設計データを端末に保存して部屋を出る。ヒナと共にした夕食のプレートも携えて。朝一番に到着したため人数も少なく、仲が良くなった炊事兵のおっさんに「昨日はお楽しみでしたね」なんて揶揄われたけど、独自の童貞の美学を披露すると呆れられた。「もったいねぇ」だと。そんなこと俺が一番わかってるわこんちくしょう。
次回の更新は19時頃を予定しております!
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