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撃てよクソ野郎A04

 苦労が絶えないもんなぁ。


 この数週間で色々なことがあった。そう、色々。


 右脇腹に太い鉄が突き刺さり、右腕が吹っ飛び、脳が欠損して機械に頼らなければ立ち上がることさえできなくなった。


 クランドやカイドウは言った。


 俺のメンタルは強いと。


 なにかの冗談かと疑った。


 それは違う。すでにボロボロなんだ。


 ぶっ壊れていると言われればそう。ソータやアイリたちが背負うことになるデバフを一身に背負っている感じ。これで壊れないはずがない。


 それでも平常心を保てているのは、みんなの笑顔が見れるから。そこにいてくれて、触れ合えるから。コミュニケーションができるというのは大切だ。


 一時、なにもかもに嫌気が差して、自棄になってヒナの代わりに死のうかとも思ったが、ソータとアイリの仲違いを防いだことで気付いた。それが生き甲斐なのだと。とても楽しかった。白く干魃した地面に水を吸わせて、黒々とした潤いを取り戻したように。


 そこから芽吹き、成長する大樹こそが俺。深く根差し、例え台風に晒されても倒れず、しっかりと大地に広がるすべてを見渡す。


 それこそが推し活。俺のすべて。


「ビーツはなんでこれが理解できない………って考えるだけ無駄だよな。個人の意思と趣味だけは、個人でしか変えられない。俺にとってねじ曲がっていたとしても、それがビーツにとっての常識ならなおのこと。………待てよ? ビーツっていえば………脳内チップを2枚も埋め込んでるって言ったよな? ならなんで今さら俺の症例を調べたがる? あいつを調べればもっと効率がいい………違うか。巨大な後ろ盾があるとかほざいてたもんな。どうせ上層部の一部しか知られてない。なら俺が実験動物第1号か」


 モルモットになった気分でもある。


 ビーツが脳内チップを秘匿するからだ。まんまと嵌められた気分にもなる。


 じゃあ俺はなにか? 遠く離れていても、今だってビーツの手のひらの上で転がされている駒ってわけか。


 面白くないな。


「………なんでビーツは脳内チップを埋め込んだ? ………いや待て。クランドも言ってたな。症例が少ないどころか、俺がただひとりの被験者で、しかも製造を可能にしたのはケイスマンだけ。なら………今ビーツが埋め込んでる脳内チップは誰が作った?」


 謎めいた事実が、脳内チップを皮切りに、次々と湧出した。


「脳内チップだけじゃねぇ。ガリウスHだ。第八世代ガリウスなんて本編に登場してすらいない! タキオンは元々アリスランドに配属される予定だったけど、今じゃないはず。………ケイスマンの他にも、それらを作れる奴がいるってのか!? それもアリスランドにいるってことかよ!」


 俺ですら知らないメカニックがいて、現在もアリスランドに搭乗していると考えれば辻褄が合う。


 なんて恐ろしい仮説だろう。


 ビーツが得たのは連合軍の後ろ盾だけじゃない。ビーツの恐ろしい野望じみた妄想を現実にしてしまえるメカニックだ。


 そして最後に送られてきた映像。


 まだ製造途中ではあったが、それは俺も知る機体だった。


 本編ではアリスランドに配置されることはなかった無二の機体。とあるオリジナルガリウスだ。


 それを使いこなせる人物がいるのかはわからない。


 不安は加速する。俺の知らないところで、またなにかが音を立てて動き始めた。


「もし仮に、ビーツの野望が万全な状態になったとして。会敵して………勝てるのか?」


 脳内チップでシミュレーションをする。地上。海の上。上空でのドッグファイト。グラディオスとアリスランド。総力戦。


 戦力は───おそらく差がない。


 俺ももちろん指を咥えてその時を待つつもりはない。やれることをやる。


 やはりものを言うのはソータの覚醒。そして俺とビーツがどこまで読み合いを制することができるのか。


 俺はビーツのすべてを理解して、読み合いで勝てるのか。


 ビーツは当然、その他にもなにか用意するだろう。なら俺も用意するしかない。


 そうなると、趣味全開の、整備士泣かせの()()しかない。カイドウやその弟子らにぶん殴られる覚悟でコンペしてみるか。


「………ダメだ。落ち着かねえ。今は休んでる場合じゃ───」


「ダメだよぉ、エーせんぱぁい。仕事しに行くつもりだったんでしょぉ?」


「ひ、ヒナ………いつからそこに!?」


「アリスランドにいたってことかよ、の辺り? エー先輩ったらまったく気付かないんだもん。隙だらけの脇腹をくすぐってあげようかなって考えてたけど、怖い顔してたからさ。やめちゃった」


「そ、そっか。ありがとな。それが正解だよ。飛び上がっちまうところだった」


 奇襲みたいなタイミングで現れるんだもんなぁ。


 俺が振り返った先にいたヒナが、満面の笑みを浮かべてるんだもん。これで恐怖するなって方が無理がある。


「で、なんでここに?」


「なんでって、もう夜だよ? 消灯時間間際だし」


「ゲッ………やべぇ。夕飯食いそびれた!」


 どうやら休憩とリラックスついでに展望デッキに寄ったはいいが、長い間考え込んでいたらしい。


 会議はすぐに終わったが、夕飯前だったしな。数分休んでから食堂に向かうつもりが、ビーツの問題に苦難して時間を忘れてしまい、今さらかよと訴えるようにグゥと腹が鳴る。


「あはは。エー先輩らしいね。大丈夫だよ。エー先輩のお夕飯、受け取ってあるから。お部屋に運んだんだけどいなくて。コールしたけど出ないし。レイシアさんに頼んで探してもらったんだ」


「ありがとな、あはは」


 俺の居場所を特定できる人物が、この艦には数人いる。グラディオスを管理する高性能AIたるハルモニが使えるクランド、カイドウ、そしてレイシアだ。ハルモニに尋ねれば監視カメラなど、腕の端末などで居場所を知ることができる。


「さ、行こう。一緒に食べよ」


「あ、ああ」


 ヒナは俺の腕をがっしりと掴んで離さない。そのまま歩く。なにげなく支えて歩行を介助してくれた。退院後ゆえに体力が衰えていることを承知している。


 けどね、ヒナさんや。


 がっしりと腕をホールドしてるから、二の腕全面にあなたの幸せな感触が押し当てられているんです。


 嬉しいよ? とても嬉しい。すごい嬉しい。男で喜ばない奴なんていないくらい。


 けど今それをされるとさぁ。生殺しなんだよなぁ。


 結局、彼女と致すまでには関係が達していないわけだし。俺が返答を先延ばしにしているせいだとは自覚しているけれども。


 ああ、ヒナが俺を見上げて「ニタァ」と笑っている。確信犯だこりゃ。


 正直に言えば触らせてあげる。って言いたいわけね?


 はいはい承知しておりますとも。


 わかってるんだよ。


 ビーツの言うとおりだよ。



 俺は、ヒナが好きなんだってくらいさ。



 推し活の申し子であるからにはお触り厳禁。破ったら切腹を信条にして、逃げてるんだよな。


 多分だけど、ヒナの告白に応じて、致したとしよう?



《メカニック・エース。食後、パイロット・ヒナとの軽微な運動がドクター・レイシアから推奨されております》



《黙ってろハルモニ》



 必死に言い訳を探してる途中で、脳内チップからハルモニの音声が流れて苛ついた。


 レイシアの差金だろどうせ。


 で、情事を致したとして。そうすると俺はヒナしか考えられなくなるんだな。


 それって本末転倒だろ。俺はソータとアイリのカップリングを推してるんだ。


 だから負けるな俺。


 勝て! 肉欲を断て───


「んちゅ」


 ───ぁぁぁあああああああああヒナがほっぺにキスしてくれたぁあああああ!!


 肉欲ぅぅぅうううううう!!


リアクションありがとうございます!

3回目です!

4回目は13時頃に更新します!

明日はもっと多くを更新する予定ですので、皆さまからのありがたい応援をこれでもかとぶち込んでいただけると、エールを力に変えて筆が加速することでしょう!

もうプロットが尽きて、その場で考えて書いています! 体力勝負です!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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