撃てよクソ野郎A03
「次。砲雷科」
「はい。私どもも可能だと推測できます。艦の兵装に問題はありませんし、補給は済んでおります。そしてなにより、レイライトブラスターも修復が済んでおります。整備科のカイドウ主任による協力のもと、改良を加えることで主砲をより安定させ、かつ短時間で再度の発射を可能とするでしょう。Eタイプには欠かせない主戦力のひとつですからな」
アーレスの力強い肯定に、各主任は「おおっ」と歓声を上げた。
俺の予想よりも早い改修がレイライトブラスターで行われていたようだ。
もう少し遅くともカイドウが最善策を発見するが、もっと早期になるとは以外だ。
「よし、ならば整備科と連携をとり、Eタイプへリベンジを果たすその日に万全にしておくように。次、整備科」
「おう。まぁなんていうかよ。予想以上に若い衆が働きまくっちまってよ。砲雷科と合同の勉強会したりしてたガキどももいたっけな。モチベーションは悪くねぇし、なにより俺らの分野であるガリウスも、これまでとは違って半分以上が運用されてらぁ。パイロットたちもよくやってる。んで、とあるクソガキのオーダーだったオリジナルガリウスを製造中。そのクソガキにもちょいとした改造を施せば、全部が完了するだろうぜ。俺らもEタイプとの再戦までにゃ間に合わせる。可能だと考えるぜ」
「ちなみに、カイドウ氏より要請があれば、我が砲雷科の人間を整備科に助勤させるつもりであります。兵装の調整で役に立ってみせましょう」
「わかった。整備科は砲雷科と連携し、来る日に向けて準備を。………最後だ。パイロット科」
「ハッ」
どのセクションも気合いが入ってるなぁ。と感心していたら、今日一番の気合いが俺の隣で炸裂した。
クランドに大声で応えるシドウ。叫びながら起立し、敬礼。俺も立ち上がり敬礼しようとし、右手がないのでパッと切り替え左手で行う。
「パイロットは全員、慣熟訓練を終了するとともに、各々の課題に取り組み、日々成長しております。私もガリウスG七号機に搭乗。八号機を使用したドローンカメラによるダイレクトサポートの円滑化も進み、一号機のエースパイロットの成長も目覚ましい。個人の技術の向上はもちろん、連携と統率。どの部隊と比較してもトップレベルであると胸を張って断言できます。その段階である以上、あとは装備を整えるだけです。不測の事態に備え、主砲抜きでEタイプを殲滅しなければならなくなった時を想定し、撃破を視野に入れております。私たちならできると確信を持っております」
言うねぇ、隊長殿。
レイライトブラスターを抜きにして、Eタイプの殲滅か。
それもある意味で正しい。けど、可能にするパイロットがどれだけいることやら。
けど、それでもやらなければならない。パイロットがEタイプを倒す。その頃には俺も本格的にパイロットになっているはずだ。
「承知した。では、地球へ進路を向けつつ、Eタイプの殲滅を目的とした任務を開始する。………そして最後の議題となる。エース・ノギ、前へ」
「は、はい」
これが俺も呼ばれた理由ということか。
次の議題ってなんだ? 俺はクランドが認可したからクルーに戻れたんじゃないのか?
「そう不安になることはない。きみの今後のことだ」
「は、はい」
「きみの退役は取り消され、正式にグラディオスのクルーに配属される。しかし、それにはたったひとつの条件がある。………きみの頭のなかにあるものだ」
「脳内チップ絡みのことですか?」
「そうだ。実は、その脳内チップというのは未だ治験段階にも至れていない代物で、人体で検証する機会というのが滅多にない。これを口にするのは気が引けるのだが………」
「ああ。なるほど。数少ない輪唱実験の被験者として、症例なども含めてデータを提出しろということですか」
「………物分かりがいいのも問題だな。わかっているのかね? きみはっ………」
「辛うじて人権は残っているんでしょう?」
「保証されていると言いたまえ」
「同じことですよ。構わないのですが、うーん。思考まで提出するというのはなぁ」
「いや、個人のプライバシーは尊重する。我々が提出してほしいのは脳内チップを介し、日々の生活のなかでなにか困ったことはないか、あるいは可能になったことはないか、つまり行動によるデータだ。きみも知ってのとおり、その脳内チップを設計したのはケイスマン教授だ。教授亡き今、きみが唯一の………」
「仰りたいことはわかりました。日々の行動のなかで支障を感じたこと、可能にしたこと、まとめてレポートとして提出します。………え、これがクルーに戻る条件ですか?」
「いや、ある程度の回数を終えれば、次に………インターフェースの件についても提出することになるだろう。そちらはカイドウやアーレスが補助する。………きみにとっては辛いことや負担が多くなるだろう。それでも、よろしく頼む」
「わかりました。まぁ任せてくださいよ。可能というか、得意になったことがあるんですけどね? 指でタイピングするよりも早く文字を打てるようになったんですよ。数千字が数秒でできあがるんです。しかもイラスト付き。チートですよこれ。学生の時に欲しかったなぁ。レポートが一瞬で作成できて昼寝し放題!」
「馬鹿野郎。なんて使い方しやがる」
カイドウがツッコんでくれた。お陰で微笑が広がる。
「相変わらずきみのメンタルの強さには驚かされる。………いや。そうであるがゆえに、きみは強いのだな。エース・ノギ。正式にきみをパイロットとして復帰を認める。正直、私はかなり嬉しい。またきみとともに戦えることを。だがこれだけは自覚してほしい。それだけきみはグラディオスにとって必要不可欠な存在となったのだ。以後、きみに降り掛かる火の粉は我々が全力で振り払おう。大人として。ゆえにきみはもう、自虐的な行動は謹んでほしい。きみのガリウスが完成してからもだ。きみが脳死したと聞いた時、私とて倒れそうになったのだからな」
「以後、気を付けます」
そんなに重宝されていたとは知らなかった。知ろうとしなかっただけか。
クランドが起立すると全主任が立ち上がり、俺に敬礼する。満場一致で復帰を認めてくれた証だ。ただデーテルだけは俺を見ていない。渋々といった感じ。
これで会議は終了し、各員仕事の現場に戻っていく。
シドウはまた俺を運ぼうかと提案してくれたのだが、パイロットになるために体力をつけたいと申し出て断った。まずは艦長室の前から歩いて自室に戻れるようにならなくては。
次々と各主任が俺に声をかけて追い抜いていく。アーレスなんてあの大きな背中を差し出してくれた。丁重に何度も断った。筋トレ目的だと言うと「努力家で偉いね!」と叫び号泣してしまう。
数分後、えっほえっほと足を進める。顔に汗が滲む。歩くだけでこれだ。参ったなこれはと苦笑する。
自室には戻らず、展望デッキへ向かい、涼しくて広域のあるそこに設置された手すりに両腕を置き、厚みのあるガラス越しに宇宙空間を眺めた。
───エース・ノギ。いや、小此木瑛亮。
脳内でビーツの声が再現される。
提出するのが行動パターンくらいでよかったと思う。もしこれらの記憶を抽出し、思考さえも誰かに知られてしまったら、いらぬ混乱を引き起こしていたに違いない。
それにしても、なぜビーツは俺の前世の名を知っていたのだろうか。
まさか、俺とビーツは前世で顔と名前を知っていたか、ビーツだけが知っていたのか。
どれだけ考えても答えは出ない。
ガラスに映る俺の顔は、いつになく疲れて見えた。
2回目です!
次回は12時頃に更新となります!
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