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撃てよクソ野郎A01

 ペンタリブルを去って3日。


 特殊強襲特装艦グラディオス級一番艦グラディオスは、連合軍の本部より、任務の更新を伝えられた。


「………そうくるか」


 端末と同期しているパソコンが立体投影する半透明のモニターから、内容を読み取ったクランドは、椅子により深く腰掛ける。


「そうなると………やはり、また彼の力が必要となる。………地獄を歩ませる」


 未来を担う子供たちを地獄に突き落とすために戦ってきたわけではない。


 しかし、時としてはこのような、やむを得ない事態もある。


 クランドは頭のなかでは理解していた。いつものように割り切るしかないと。


 だが、どうしても───若年ながら達観し、大人のような視点をして、放置すればとんでもないことを仕出かし、そしてクランドのことを理解し、好きだと言ってくれたあの少年の笑顔が曇ってしまうことについてだけは、どうしてもいつまでも割り切れずにいるのだ。


 それを旧友であるカイドウとアーレスにも打ち明けた。


 往年の艦長らしからぬ、年端もいかぬ小僧に心を揺さぶられた情けない大人。などと非難されるだろうと予想していたが、結果は異なる。


 カイドウは「わかるぜぇ」と大仰に首肯し、アーレスは「代われるものなら代わってやりたいなぁ」と大男らしからぬ男泣きをする事態。


 これには逆に毒気を抜かれ、苦笑してしまうクランド。


 ともかく、これはこの3人だけで解決できる問題ではないのだ。今後の指針もそうである。


「………デーテル。各セクションの主任を招集してくれ。本部より辞令が降った。それについての会議をする」


『承知致しました。艦長』


 その1時間後、艦長室が臨時の会議室になる。軍法会議を行ったような馬蹄型の並べではない。さらにテーブルを出して四角に並べる。人数がゆえに。


 そしてそこには、新顔───というわけではないが、本来なら呼ばれるはずのない少年が「やっぱり場違いじゃないですかね?」なんて言いながら、恐縮しながら着席したのだった。






 それは突然のことだった。


 入退院を繰り返し、もう士官室が俺の部屋なのか、メディカルルームのベッドが俺専用なのか、判別がつかなくなってきた。


 そしてその日、今日も今日とてレイシアの有難いお説教でゴリゴリとメンタルを削られた俺は、定期検診を終えてメディカルルームを出る。やっと退院の許可が出たのだ。


 やっぱり人間、歩けるならしっかりと両足で歩きたいものだね。


 一時は歩くことも喋ることもできなかったけど、脳内チップが俺の脳を代用してくれるので、支障もなく歩ける。


 けど、長い間ベッドで過ごしていたせいかな。


「ハァ、ハァ………ふぅ」


 少し歩いただけで疲れてきた。


 鈍ってるなぁ。


 原因はただひとつ。レイシアの厳しすぎる監視のせい。歩いたりするのはもちろん、筋肉の衰えについて危機感を覚えて、ベッドの横で腕立て伏せと腹筋を興じたら、ファイルの角の硬いところで殴られるんだもんなぁ。


「汗臭くなるでしょぉ? 怪我人がなにしてんのぉ?」


 だとさ。


 監視の目が無くなったところで筋トレをするとメディカルルームではレイシアの方が権限が上だから、俺の言うことを無視するハルモニが通報して、鬼の形相をして駆けつけたレイシアに5回くらいファイルでぶん殴られて、ベルトで四肢拘束の刑。


 こんなのがずっと続くんだもんな。体力だってそりゃ落ちる。運動してないもん。


「あー………なんか体動かしてぇ」


『メカニック・エース。あなたには最適な運動が用意されています。ドクター・レイシア曰く───』


「却下」


『異性とのコミュニケーションの一環として───』


「却下」


『早々に性交渉せよとのことです』


「却下だっつってんだろ! お前までイカれたカウンセラーに毒されてんじゃねぇよ!」


 ハルモニがずっとこんな調子だ。


 高性能AIが聞いて呆れる。


 俺は前世では成人したけど、転生したら未成年に逆戻り。酒も飲めない。


 そんな俺に、異性と性交渉させることを推奨するとか、このAIの性能を疑う。だって相手だって未成年なんだぜ?


 いくら艦内での恋愛が自由だからって、イカれたカウンセラーが薦めるまま肉欲に従うわけにはいかない。俺にだって節度くらいはある。なによりビーツと同じになりそうで吐き気がした。


 そして俺は転生者にして、ファンである。キャラクターにお触り厳禁を決め込んだからには、破れば切腹をいつも心掛けていた。似非紳士っぽい信条ではあるけど、それでうまくいくこともあれば、失敗することもあるから、難儀している。


 だからこうして、安直ではあるけど無重力区画を迂回して甘えず、重力発生区画をウォーキングして軽めな運動をしているわけだ。


「ハァ。先が思いやられる………ん? シドウ少尉から?」


 端末に通信が入る。シドウからだ。


 ちなみに脳内チップを使用すれば脳内で通信が可能。その場合は俺の声を模した機械音声が相手側のスピーカーから鳴るが、かなり便利。戦闘時は多用していた。


 けど平時なら別だ。喉を使わなければ、すぐに筋力が衰えて滑舌が悪くなる。喋ろうにもすぐに噛んでしまったり、相手に聞こえづらい声になってしまう。


 人間はせっかく喋れるのだ。他の動物とは違う。なら喋った方がいい。


「はい。エースです」


『急な呼び出しで済まないな。クランド艦長より招集だ。緊急会議を開く。お前も呼ばれているので、10分後に艦長室に来てくれ』


「え、俺がですか?」


 艦長室で行う会議といえば、各セクションの主任が集まる、所謂グラディオスの運営委員会、重鎮らが参加するトップ会議だ。カイドウは整備科の整備長、あるいは整備主任として、シドウはパイロット科のパイロットリーダーとして参加する。それならわかるけど、俺はパイロット科のサブリーダーだ。仮にシドウが不在なら代理として参加できるが、健在である以上、俺が参加する理由がわからない。


『艦長直々の指名だ。残念ながら拒否権はない。今どこにいる? 退院したばかりで体が辛いだろう。運んでやる………っと、なんだ。そこにいたのか』


 冷や汗が滲む。あの下手をすれば銃殺刑になりそうだった、軍法会議を思い出す。若干ながらトラウマになっているようだ。


 通路で立ち止まっていると、背後からシドウが現れた。メディカルルームから追ってきてくれたのか。


「やはり体力が戻っていないようだな。楽にしていろ。ほら、行くぞ」


 シドウは高身長で、ハーモンより細いが筋肉質だ。


 俺はソータより高くハーモンより低い。男子の平均的な身長。であるにも関わらず、シドウはひょいと俺を横抱きにする。トゥンクと心臓が高鳴った。男相手なのに。いや違う。年上のイケメンのご尊顔を間近で見てしまったからだ。


 腐女子の方々が喜びそうなシチュエーションだこと。


「こういうの、レイシアさんにやってあげたらどうです?」


「最近、やたらと抵抗される。尻に敷きたい願望でもあるようでな。それに………艦長の目が光っている。どうやら色々バレて………それよりなぜお前が俺とレイシアの関係を知っている!?」


 ギョッとするシドウ。


「あはは。バレないと思ってました? 割と初期から気付いてましたよ。大胆ですねえ。メディカルルームで()()()んでしょ?」


「………頼むから艦長の前では軽率な発言は控えてくれよ?」


「はいはい。わかってますよ隊長殿」


 面白ぇなぁ。シドウは。わかりやすいんだもんなぁ。


ブクマありがとうございます!

明日は7回更新します! 最初はいつもどおり0時です。

最近、PVなどで把握するのですが先週のような盛り上がりがどうも薄くなってきているようですので、明日明後日の更新で取り戻せたらと思います!

今日明日明後日で10話くらい書かなければならないのですが、なんとかやりとげて見せますので、応援よろしくお願いします!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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