どうせみんな死ぬC04
そうなると、アリスランドもグラディオスを追う。
しかしだ。タキオンがどうしても邪魔になる。すでにタキオンはカタパルトデッキ目前にいて、アリスランドの航行に合わせている。
そしてアークも突然のことゆえ、対処に困っているのだろうな。
ちょっと横、あるいは後ろに退がる選択肢はない。できないからだ。
アリスランドの航行速度はタキオンよりも速くはない。とはいえ、それはタキオンの推進器がある程度は揃っていればの話しだ。
俺のガンビッドとの戦いで、肩の推進器と足の推進器を失った。
されどもその状態ではアリスランドの航行速度に合わせるのが精一杯だ。姿勢制御に回せるサブスラスターがない。
よって、最大船速時の収容がどうしてもできない。
また、タキオンを中心に発生する煙幕が艦内にも充満して、混乱をきたしていることだろう。きっとドッグにも侵入している。
アリスランドは前方を煙幕に覆われ、さらにアンチレーダーチャフによって一時的にレーダーも封じられた。
タキオンを収容しようにも目視さえ適わず、レーダーも役に立たないのでは、それを収まるまで待つしかない。
もちろん、やろうと思えばタキオンを振り切って煙幕とアンチレーダーチャフのなかから脱することもできる。しかしそれではタキオンを捨てることになりかねない。
たった1機。されど貴重な1機。ビーツにとって最大の選択。
されども、ビーツはアークを切り捨てることはできないはずだ。
アークはアリスランドの主戦力。エースパイロットを失えば、アリスランドに勝機はない。そしてソータが中破させ、適当に放置しておいたガリウスHも回収する必要がある。ペンタリブルの連合軍が回収したとなれば、ビーツに詳細を尋ねた本部にしばらく拘束されかねない。
我ながら完璧な布石だ。
アリスランドを出し抜いてやった。
俺たちやガリウスG、最後にソータの一号機を収容したグラディオスが最大船速で離脱する。
俺はしばらくガンビッドに意識を繋ぎ、いつでも再出撃できるようドッグのなかで待機していた。カイドウに整備ではなく補給を依頼すると、まだ油断できないと瞬時に理解したカイドウは、部下たちに喝を入れて警戒態勢を続行する。
勝利に浮かれそうになったパイロットたちにも伝わって、コクピットから身を乗り出しそうだったが、すぐに戻って待機する。
しかし10分後。オペレーターが艦内放送で『レーダーからペンタリブルとアリスランドが消えました。アリスランドも本艦を捕捉できない距離まで離れたと考えられます』と告げると、今度こそ勝利の雄叫びを上げる。
「やったなぁエース! テメェこの野郎! ガンビッドであんな無茶をしてくれやがってぶっ殺すぞぉ!」
『おやっさん。褒めてるのか脅迫してんのか、どっちかにしてくださいよ』
「馬鹿野郎! 褒めてんだよこんちくしょう!」
その割にはガンガンとガンビッドを殴りまくってますぜ。なんて野暮なことは言わない。不器用でツンデレな分、こんな表現しかできないのだ。そして珍しく、カイドウは満面な笑みで豪快に笑っていた。
「いやはや………パイロット全員で出撃すると、こんな成果を挙げちまうんだなぁ」
「前回も大量に湧いたが、今回も酷かった。しかし、後手に回ろうともこのメンバーなら、もう後れを取ることはない。最初はどうなるかと思ったが、いい形になったと実感している」
カイドウの隣にシドウが降り立つ。
「よくやったなエース。ガンビッドによる出撃による戦果、見事だった」
『とんでもない。撃墜数で言えば、俺はパイロットたちの足元にも及ばないですよ』
「しかし、得たものは大きい。だろ、親父?」
「おうよ。お前が鹵獲したアリスランドのガリウスの足。あれを分析すりゃあ、こっちでもタキオンが製造できる。………その時にゃ」
『俺が乗ります』
「………できれば、そんなことはさせたくなかったんだがな。………わかった。製造する前にお前の右腕をどうにかする。ガリウスに神経接続するためのインターフェース兼、指も動く優れものよ。これでお前も普段どおりの生活ができるぜ」
『おお、それは助かります。これで整備士にも戻れますね』
「バッカ野郎! オーバーワークだ! それを許せば、今度こそ俺とシドウがレイシアにぶっ殺されちまう!」
殺すことはないだろうが、確かにお仕置きはありそう。
でも俺はあくまで、みんなが生き残るため、ソータとアイリの笑顔を守る推し活をしているんだ。本業はパイロットであっても、あくまでメインキャストにはなれない。
俺はいつだって「ただの整備士エー先輩」だからな。
ガンビッドのカメラを介して、ドッグを見渡す。
活気のある空間だ。
原作ではこうはいかなかった。
誰もが表情に陰りがあり、気まずい表情をしていた。勝手をやらかしたソータに不満を漏らすハーモンとコウが大声で喚き散らしたりと。
けど、今はそれがない。ソータを全員が囲む。右腕があり、体に傷がないアイリが笑ってパイロットたちの輪のなかにいる。
はしゃぐ子供たちを見た同級生、先輩、大人たちが嬉しそうにしながら仕事をしている。
………これでいいんだ。
俺は見返りなんぞ求めない。
ビーツとは違う。
さて、そろそろレイシアがお冠だ。多分、あれだけのことをしたから肉体が衰弱している。酸素マスクを着用して、薬も注入されている頃だ。
ああ、ほら。シドウの端末にブチギレたレイシアから通信が入る。『エースくんに帰ってくるように言って! このままじゃ危ないから!』だとさ。大声で喚くものだから、パイロットたちの耳に入って、青褪めてドッグから飛び出してしまう。
シドウとカイドウがガンビッドを睨む。なにか言われる前に退散しておこう───
「お帰りぃ、エースくん。バーカ」
ほら、開口一番で罵倒。酷くね?
意識を肉体に戻した途端にこの仕打ち。まともじゃない目をしたレイシアと、焦るドクターの治療を受けている最中だった。
「あ、はは………ご心配おかけしまし、うっ!?」
「エースくんっ!?」
ビクンと体が跳ねる。
しかしこの痙攣は、衰弱した肉体にフィードバックしたダメージだけではない。
目を剥いた。侵入された。脳内チップにだ。
《やってくれたな。出来損ないの分際で》
ビーツだった。
急いで回線を遮断しようとするも、対応が間に合わない。ビーツの力が強すぎる。
《そう警戒することはない。すでにグラディオスは艦の索敵圏外から消えた。それにしてもお前がタキオンをああまで遇らうとはな。少しばかり舐めていた。だがそうでなくてはならない。お前は劣っているが俺と同じ転生者だ。俺の凱旋の踏み台となるべく精進しろ。タキオンの足はくれてやる。好きにしろ。それでなにを作るのかは予想ができる。………しかしな、お前に面白いものを見せてやろう》
脳内にイメージが流れる。ドッグの一角に懸架されたガリウス用のレイライトリアクター。そこに組み上げられるフレームと装甲。しかし見覚えがある。
まさか。
「っぐ!」
《はは。気付いたようだな。お前はいつも遅い。こちらはすでに製造段階だ。ゆえに………今回は逃してやる。どうせまた会うことになる。運命には逆らえない。その場所は………地球》
第2クールのことだ。
ビーツめ。そこで本格的に俺を倒そうとしてやがるってのか。
《情けない機体を作って、呆気ない末路を辿りたくはないだろう? なら必死に励め》
一々うるせぇ奴だ。こうなるんだったら、アリスランドのオペレーションルームに一発ぶち込んでおくべきだったか。
《そろそろ時間切れだ。ではな。また会おう───》
ククク。と笑うビーツは、最後にとんでもない置き土産を押し付けた。
《エース・ノギ───いや、小此木瑛亮》
「なっ………!?」
なぜその名を知っているのか。
問い詰める前にビーツは通信を切った。
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