どうせみんな死ぬC03
『エー先輩、すげぇえええ! あんなバケモンみてぇな機体に、ガンビッドだけで勝っちまうなんてよぉ!』
『本当に、その通りだ………エー先輩がガリウスに乗ったら、どうなるんだ? 今から恐ろしくなってきたぞ』
『でも無事で本当によかったぁ!』
ハーモン、コウ、ヒナがガンビッドに接近する。
けどこの布陣はよろしくない。
いくら薄氷の勝利とはいえ、ビーツのことだ。これで終わるはずがない。
『グラディオスに戻れ! 戦闘は終わったんだ。現中域から離脱するのが先だ!』
『は、はい!』
そういう流れだったものな。原作とは違い、アリスランドに背後を取られている。油断は許されない。
『そういうわけにもいかんだろう。アリスランドがこれで終わるとは思えん。我々で護衛しなければ』
シドウはやる気だ。
内心、俺やレイシアが受けた仕打ちの報復のつもりで撤退を援護するつもりだろう。
『もう種まきは済んでます』
『どういうことだ?』
『すぐにわかりますよ。───艦長!』
すぐにネタバラシはしない。通信が傍受されている可能性も否めないからだ。
特にあのビーツは要注意。ギリギリまで引きつけなければならない。
『最大船速でペンタリブルから離脱する! ガリウス収容急げ。護衛はしなくてもいい!』
クランドは俺を信じてくれた。
グラディオスが動き始める。アリスランドも動く。どこまでも追ってくるつもりか。
そうはさせない。
『アリスランドより機体が発進しました! 数は1! データベース照合───これはガリウスFではありません!』
オペレーターが叫ぶ。
たった1機とはいえ、ビーツから見せられたイメージどおりだとすれば、それは第七世代ではなく、まだ登場するはずもない第八世代ガリウスHだ。
なぜそんなものを所有しているのかは不明だし、本当にそれがガリウスHなのかもわからない。
またもや1機のみの出撃。ビーツは俺たちに情報を多く渡したくないらしい。搭乗しているパイロットもソータたちやアークほどの腕前ではないだろうが、最新鋭機を上回る最新鋭機。油断はできない。
どうする? また俺がやるか?
しかし短時間だったとはいえタキオンと戦ったのだ。ガンビッドの推進剤、エネルギーも心許ない。俺の体も負担をかけた。また同じことができるとは限らない。
逡巡した、その時。
『俺がやる! 有人機だろうが、殺さなければいいんでしょ? 達磨にしてくるよ。コウ、タイタンジャケット貸して!』
『なにをするつもりだソータ!』
『コウのタイタンジャケットの方が消耗が抑えられてる。いいから早く! 時間がないよ!』
ガリウスHとの相手をすると決意したソータ。俺とアークの戦闘に感化されたか?
けど、覚醒し始めたソータなら、ガリウスHの相手をすることだってできるはず。コウの四号機からタイタンジャケットを拝借するというプランも悪くない。
『し、しかしジャケットの交換などドッグ内でならともかく、戦闘宙域でやるなどまともではない! 俺はパージするだけだから問題ないが、お前は少しでも違えればジャケットにコクピットが押し潰されるぞ!』
『いや、問題ない。俺がジャケットを誘導する』
『エー先輩………わかった。いくぞソータ! 受け取れ!』
ジャケットの交換、あるいは換装を戦闘中に行うという演出は第2クールからだった。無茶でしかない策を、なんと大気圏内でやり遂げたんだもんな。かなりかっこよかった。
コウの四号機からタイタンジャケットがパージされる。上半身を覆うそれは、素体の腕を取り外し、肩のジョイントに差し込む造りになっていた。プラモデルでもそれは再現されている。とても優れた仕組みだ。
パージされたタイタンジャケットをガンビッドを中継してソータの一号機を誘導する。時間にして3秒もない。むしろ腕やファストパックをパージした途端、ソータの方から頭をねじ込みに行った。ドッキングを成功させたのは優れた感覚ゆえだろう。才能の塊だよこいつ。
一号機が四号機のパーツを換装する。間近で見て感動した。
『………うわ、重っ………上半身ばかりが重くて、足が軽いし………ファストパックを失ったせいかな。やっぱり思った以上に推進力出ないかも?』
『問題ねぇよ。1番と4番を持ってけ。足のハードポイント開けろ。補助ブースターにはなる。ガンビッドジャケット………とは言えないか』
ソータが懸念した推力バランスの欠如も補う。ガンビッドを一号機のハードポイントに接続して、姿勢制御用のサブスラスターとした。
『接続完了。各部異常無し。さすがエー先輩。いつも抜群のアシストだね。ガンビッドを取り付けるなんてさ』
『さっきの1機を頼んだぞ。お前ならやれる』
『うん。手足をもいで、スラスターも潰せばいいんでしょ? タイタンジャケットならやれるよ。見ててね』
一号機はギュンと加速した。こちらに接近するガリウスHに急接近し、相手がライフルを構えたとしても突撃。発砲。ビームが迫る。ところがタイタンジャケットは元々対アンノウンを目的とした強固な装甲で覆われており、一発のビームが直撃したところで大したダメージにはならない。
ソータはガリウスHに肉薄し、そして───轢いた。瓦解するガリウスH。トラックに轢かれた人間のよう。
いかに最新鋭機を上回る最新鋭機とはいえ、重装甲かつ高推力の機体に正面から衝突されてはひとたまりもない。しかもソータは、一撃でボロボロにしたガリウスHの手足をタイタンジャケットの名に相応しい剛腕にて、虫の羽を引き抜くがごとく、ブチブチと抜いては捨てて、推進器を握り潰し、宣言どおりに達磨にして捨てた。一応、パイロットは生きている。接触時にチャンネルを合わせて、通信越しに命乞いをしていた。
これが今のソータか。確かに、かなり強い。
そして一方、アリスランドでも動きがあった。アークのタキオンがアリスランドに着艦しようとしていた。
そのタイミングを見逃さず『今だ!』と叫んで起爆スイッチを押す。
それはアークがビーツの命令で撤退しようとした時、背面に撃ち込んでおいた特殊弾だった。
煙幕とアンチレーダーチャフを同時に発動。着艦寸前のタキオンが、アリスランドを目前に自らが進路を妨げる。
『っしゃあ! 一丁上がりぃ!』
『なるほど。きみの狙いはこういうことか。鮮やかな手際だ。………一号機を回収し、我々は最大船速でアリスランドから離れる! 急げ!』
すでに一号機はグラディオスへ向けて飛翔している。
これでアリスランドを突き放せば、俺たちの完勝と言えるだろう。
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