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どうせみんな死ぬC02

『へぇ………やるじゃん』


 タキオンと衝突する寸前でガンビッドを離散させた。しかし、すべて回避が成功したとは言えなかった。


 ガンビッド2番のサブスラスターのひとつが欠損している。くり抜かれた。脳内チップを介しても反応できない速度で。漆黒のタキオンの左マニュピレーターにはそのスラスターが摘まれていて、グシャッと握りつぶされる。


『お前、アークだな?』


『へぇ、わかるんだ? そっか。さっきから感じてた気持ち悪い気配の正体って、もしかしてお前?』


『そ。ま、ガチンコでやり合うにしてもさ、お手柔らかに頼むぜ? こちとらドローンカメラの改修機なんだからさ』


『嫌だね。どうせ乗ってないんでしょ? なら破壊しても問題ないじゃん』


 可愛げのない坊やだこと。


 でもそれが、腐女子の皆様の心を掻っ攫ったんだよなぁ。


 素顔はとても可愛いし。みんなびっくりしてた。少なくとも違う意味でだけど。


 アークがガンビッドを破壊するつもりでやるってなら、こっちも多少は反撃してもいいわけだ。いちファンとして、ちょいと戯れてみようかね。


『はい、ひとつ目………お?』


 サブスラスターのひとつを失って、方向転換に難が出た2番が狙われる。


 が、それはブラフ。あえて1機だけ速度を若干落として誘い込んだ。


 その隙に反転した4番が発砲。腕に着弾。


『お返しだよ』


『………遊び相手にはなるってことか』


 声音がゾッとするトーンになる。


 少しだけ本気を出したか。


 甘い。全力で来ればいいものを。


『落ちろ』


『はい残念』


『は?』


 いかにタキオンだろうが遊び半分でやっていては、アークの悪い癖も出る。


 アークには才能がある。その上で神経接続型ガリウスに搭乗した。高い空間認識能力を有しているがゆえ、タキオンでの高速戦闘を可能にしている。


 でも、初見の相手にどうしても遊び半分で戦ってしまうのが欠点だ。


 アークは、グラディオスにとってのエースパイロットたるソータと同じく、アリスランドのエースパイロットだ。プライドも高い。大人だろうと見下し、勝手に決めた彼我の実力差を過信してしまう。


 そこに網を張る。


 改修されたガリウスと、改修されたドローンカメラの差ではない。


 俺とアークの違いだ。


 少しだけ本気を出したところで、アークの癖と戦い方はよく見ていた。その多くが宇宙空間だったり夜空だったり、暗いところでスラスターの軌跡を複雑なラインで滑らせる素晴らしい演出だったりもするが、一点をズームアップしてロボットアニメらしい戦い方を描いたりもする。ただそれはソータのガリウス相手ゆえ、小型機を相手にする際の参考にはならない。


 アリスランドへ向けられた戦闘機やミサイルの落とし方を思い出す。


 いつもアークは背後、あるいは正面からヒートブレードで切断していた。


 いくらチューンしたガンビッドとはいえ、本気を出し始めたタキオンを引き離すような推進力はない。そこで選んだのは手数による嘲弄。「鬼さんこちら」と1機をあえて囮にし続けることで、残り3機で奇襲する。


『鬱陶しいな』


 アークの声に苛立ちが混じるが、声のトーンも落ちた。


 さらにギアを上げた。より本気に近くなる。タキオンの動作も機敏になってきて、ガンビッドの狙撃が当たらなくなってきた。


『どうした? 僕はまだ本気を出していないぞ』


『へぇ。そうかい。俺は割と本気だよ。でも遊び相手に本気を出すたぁ、お前もなかなか楽しんでるって証拠じゃないか』


『………本当に鬱陶しいな』


 アークもまた、怒りで冴えるタイプだ。デバフによるストレスでリミッターを外してしまう。


 そうなると手に負えない。フェイントを交え、全力で逃げ回る。


『逃げるなよぉっ』


 吼えるアーク。本編ではソータはこんなのと戦っていたのか。リモート操縦であるにも関わらず総毛立つ。感覚をフルにしてガンビッド4機の統制を優先した。


 だが、悲観するばかりではない。


 とある、一定のポイントに到達すると、ガンビッドは方向転換。アークのタキオンの横をスレスレで通過し───ピタリと停止する。


『………撃たないの?』


『罠だってのは知ってるよ。撃った瞬間にカウンターするつもりだったんだろ?』


『じゃあ、なんで止まるの?』


『おやおや、忘れたのかね? ………1分、経ったぜ?』


『………チッ』


 この戦闘は明確なアリスランドの敵対行為だ。しかしクランドが抗議したところでビームは惚けるだろう。ビーツには巨大な後ろ盾がある。クランドはいつかそれさえも叛くが、今ではない。


 つまり無意味な戦闘。見出せるものもない。明確なルールもない。


 そんな戦いに、アークが宣言した時間が過ぎたと指摘すれば、もうアークは俺にしか関心を向けない。


 それでいい。


 今、ソータと戦わせるわけにはいかない。


『遊びは終わりだ』


 来る───肉体の反射の限界速度を振り切ったような、アークの本気。


 ヴッ、とタキオンが唸る。


 次の瞬間、漆黒のタキオンが3番の前方に移動していた。


《ハルモニッ! タキオンの行動パターンを記憶しておけ!》


《イェス。メカニック・エース》


 ハルモニに指示を出しながら脳波を飛ばす。アークが才能で戦うのなら、こちらは脳内チップというチートだ。


 パルスの限界値理論を振り切った速度。正確な伝達。ゴッ! とサブスラスターが火を噴き、3番に迫ったヒートブレードを間一髪で回避───次の瞬間、前転した漆黒のタキオンの右の踵が迫る。


《なんて挙動だ。………でも!》


 それでも、その動きを見るのは二度目だ。


 ソータの一号機を庇うハーモンの三号機に対し、ヒートブレードを防御させ、一転して踵落とし。頭部を潰し、視界を奪った瞬間にヒートブレードでコクピットを突き刺した。あの衝撃は大きい。


 今も使ってきたことから、得意とする動きなのだろう。そう、アークはトリッキーなマニューバを使う。タキオンゆえに可能とした挙動だ。


 そしてそれを知っている俺だからこそ、3番を瞬時に反撃させた。機首側面にあるビームナイフだ。スクリュー軌道で前進させ、踵落としから逃れて反撃。装甲の一部を切り取った。


『調子に乗るなァッ!』


『キレたら前しか見れなくなるのか。そりゃ良くないな』


『ぁあ!?』


 3番を追跡しようと反転するタキオンの上から降り注ぐ1番と2番。ビームナイフを展開し、両肩の装甲ごとスラスターを破壊。


『そんな』


『驚いてばかりでいいのかなぁ?』


 背後から4番による集中砲火を浴びせる。


 ガンビッドにそこまで高い攻撃力は望めないが、集弾させればダメージも蓄積する。それに両膝の裏、どうしても露出してしまう関節を狙った。


 赤熱化する膝の関節部。構わず反転したが最後。過負荷による過激な運動で脚部に操縦系統に支障が生じ、アークの操縦に数秒の遅れが発生。


『ほら、そこだ』


『なにぃっ!?』


 反転させた1番と2番を突っ込ませる。膝にビームナイフで一撃。両脚部を切断した。


『馬鹿だなアーク。俺が補給する前に来れば、まだ勝機があったのにな』


『ドローンカメラなんぞにっ………くそ!』


『忘れもんだぞぉ。あ、拾わない? ならお土産をくれてやるよ』


 3番と4番が発砲。こういう事態を想定していたわけじゃない。アンノウンには効力がないだろう。


 しかし役に立つ。


 両脚部と肩のサブスラスターを失ってもメインスラスターがある。姿勢制御用のサブスラスターはまだあるだろうし、撤退を選んだアークの軌道は読みやすい。その背部にガンビッドの狙撃が着弾。


 鮮やかな引き際。どうせビーツの指示だ。俺に無駄なヒントを与えたくないのだろう。なら今は、漆黒のタキオンの両足だけで我慢してやるか。


ブクマありがとうございます!

先日は日間ランキングに、再び80位台に載っておりました!

今週はもっともっと上にランクインしたいので、頑張って書き溜めて土日に放出します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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