どうせみんな死ぬB13
『よくやった、副隊長!』
『すげぇや。マジでBタイプを倒してやがる!』
『ガリウス以外にも有効な手段があったのだな』
シドウ、ハーモン、コウの声が聞こえた。
視点を移す。
ガンビッドに搭載された、ドローンカメラよりも小型になったカメラが俺の目だ。
ドローンカメラと比較して性能は劣るが量産も容易い。しかし望遠性は優れており、俺本体の肉眼などよりも遠方を拡大して見ることができる優れもの。
白い宇宙戦艦がペンタリブルを出港。ついに現れた旗艦より、ドッグから直通の両端のカタパルトより見覚えのある7機が射出された。
そのなかでも先頭にいるオレンジ色の機体がよく目立つ。
シドウが乗り換えたガリウスGの七号機だ。
原作でも七号機に乗り換えたが、その時はまだ時間に余裕があり、ガリウスFの機体限界を超えた操縦により故障し墜落した経緯も加味して、Sカスタムの追加装甲とスラスターを強引に転用したのがメカニカル好きなファンの心を揺さぶった。
今回は事前に通達されていたとはいえ、シドウのパイロットとしての特徴に合わせた調整を行ったり、シミュレーションでシドウ自身が慣れたりしなければならなかったので、素体のままである。
『各機に通達。敵は多いがD、Eタイプが出現していない以上、やることはいつもと変わらん! 各個で応戦。友軍の撤退を支援しつつ、ノギが開いた穴をこじ開けろ! 友軍の撤退を確認し次第、本格的な殲滅戦へと移行する!』
『了解!』
ガンビッドがいる宙域に到達すると、ナンバーズがアンノウンの勢力を推し止める。やはり出力の差だな。ガンビッドには未だこれがないから、エネルギーコントロールが必須だ。ドローンカメラも同じ条件ではあるが、ビーム機銃は外付けのエネルギーパックから動力を賄うし、乱暴な操縦をすればモニターを見ているカイドウたちが目を回しかねない。目的と用途が異なるのだ。
『ノギは戻れ。補給を済ませたら戦線に復帰しろ』
『了解。適当に敵陣を荒らしながら一時撤退します』
なんだか嬉しくなってきた。本格的に俺が戦えることを。これまでは斥候や撮影や、ダイレクトサポートしかできなかったから、戦力の頭数に数えられることはなかった。
うん───アイリの負い目がわかる。悔しかったんだな。俺も。
ただの整備士エー先輩っていうのも、悪くはない。
けれどみんなから信頼を集める副隊長として、相応しい仕事をやりたかったのか。やっと自分の心を理解した。
脳内チップにより増幅された脳波をキャッチしたガンビッドが、より冴えのある機敏な軌道を描く。
『へぇ。やるね、エー先輩』
『突っ込めソータ! そこまで援護してやる!』
戦闘宙域で拡散させた4機が、ソータの一号機を中心に集結する。ファストパックで加速力を増した一号機に、無人機ゆえの殺人的なGを可能にしたガンビッドが前方へ集中砲火。ソータの進路を開いたところで離散。
『ぉおッ!?』
『あらぁ』
『マジか』
『エー先輩、すごぉい!』
4機が離散した直後、ソータを追うハーモン、ユリン、コウ、ヒナにそれぞれ1機を近くに起き、背後や左右、上下から接近するアンノウンを撃ち抜く。
『ちょ、ちょっと! エー先輩、それじゃ私の仕事なくなっちゃいますよ!』
『心配すんな。長続きしねぇんだ。もう戻るよ。シェリーの銃弾が少しでも節約できたなら、それでいいだろ?』
『そりゃあ、助かりましたけど』
スナイパーとして後衛にいるシェリーの役目を一方的に奪ってしまう形にはなったが、これで問題はないはずだ。
ガンビッドのエネルギー残量も心許ない。再び分散し、敵陣の隙間を縫うように飛翔。グラディオスへ進路を向ける。
『じゃ、あとよろしく。シェリー。アイリもな。補給が終わったらすぐ戻る』
『はいはい。わかってます。それで私の仕事も奪うんでしょー』
『気を付けて。エー先輩』
唇を尖らせているであろう後衛のシェリーのサイドを抜け、さらに後方にいるドローンカメラと入れ替わる。アイリが操縦するそれにもビーム機銃はついている。俺みたく無謀に宙域を縦断などはしないだろうが、シェリーに接近する敵影があれば躊躇うことなく撃つだろう。
《敵陣を抜けたか………ハルモニ。自動操縦に切り替える。ガンビッドをグラディオスへ戻して補給を開始させてくれ。俺は少しだけ休む》
《イェス。メカニック・エース》
「………ッハ!」
ガンビッドの操縦をハルモニに委ね、意識を遮断。脳波リンクを切ると、意識が体内に戻る。
閉じていた瞳を開けると同時に、フルマラソンを完走したような息苦しさと、24時間不眠不休のゲーム耐久後みたいな精神的疲労感に襲われ、ベッドの上で足掻くことになった。
「お疲れ様。やっぱり無茶だったんだよ。いくら脳内チップがあるからって、それって本来の用途とは違うことをしてるんでしょ? エースくんの脳が耐えられないばかりか、身体機能だって衰えるばかりなんだから。無呼吸症候群に似た状態になって、あとちょっとで酸素マスクつけて強引に呼吸させるところだったんだからね」
レイシアは俺に付きっきりになってくれていた。顔面を伝う幾多もの汗をタオルで拭い、呼吸が落ち着いたところで上体を起こす介助をし、水を飲ませてくれる。
「でも………手応えはありましたよ」
ガンビッドで得た充足感ではない。あれは過程と経験だ。俺の体に覚えさせるための。そしていずれ、俺の本当の機体が完成したあと、ソータの後継機となるイレイザーに戦闘データをフィードバックさせる。そのための布石。
「その前にエースくんが壊れちゃう。やっぱりやめるべきだよ。自分の体を大切にしないと。医者として、カウンセラーとして言わせてもらうけどさ………エースくん、このままじゃきみは、きみじゃなくなっちゃうかもしれないんだよ? その時になったら、もう遅い。後悔もできない。わかってる?」
「………わかってます」
「わかってない。そういう顔をする時はいつもそう。自分を誤魔化してる。代わりにみんな助かるけどさ。………でもその時、エースくんはもう半分くらい機械になっちゃうかもしれない」
「おお。俺もついに機械化ですか。機械の手足ってかっこよくないですか、ぁでぇっ!?」
「おバカ」
俺のロマンはレイシアにはうまく伝わらなかったらしい。そこにあったカルテのファイルの、割と硬い角で頭を殴られた。すごく痛かった。
漫画やアニメでしか見たことはないけど、機械の義手や義足ってカッコいいんだよなぁ。神経を接続する時は泣き叫ぶくらい痛いらしいけど。
過去、虫歯の治療で神経に関わる治療を行ったことがある。歯を小さく削って、プラスチック製の歯を被せるのだ。その時接着剤を塗られるのだが───泣き叫ぶくらい痛かった。多分、神経が剥き出しになってるところに塗られたんだろう。診療椅子の上で飛び上がりそうになるくらいだ。呼吸もできないし。
………その何倍も痛いのか。ちょっと躊躇う………けど、今さらだな。俺はもっと痛い手術を脇腹と腕と頭部でやってる。今さら四肢を失うことなんざ惜しくもない………わけでもないけど。
《メカニック・エース。ガンビッドの補給完了。いつでも出撃可能です》
《わかった。4機まとめて出してくれ。すぐ代わる》
《イェス》
ハルモニにガンビッドを射出させ、戦闘宙域まで操縦させた。
「じゃ、行ってきます。次はうまくやりますよ。この体の調子を崩したくないですし」
「酸素マスクの準備もしておくから。………行ってらっしゃい。みんなをお願いね」
レイシアに見送られ、ベッドに仰臥すると意識を飛ばす。脳内チップでガンビッドの操縦を代わり、同時に戦場にいるドローンカメラにも視界を接続させた。
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