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どうせみんな死ぬB05

 ハーモンの大声により、ドッグにいたグラディオスクルーが一斉に振り向いた。


 驚愕を隠せなかったのはクランドとカイドウだ。俺を遠ざけようと画策したのに、戻ってきてしまえば、そりゃ驚くか。


「エース………なんで戻ってきやがったぁ!」


 カイドウが怒号を上げる。


 怒っているわけではない。泣きそうな顔をしていた。


 車輪を左手で触れて、ユリンに前進させる。その間、ハーモンはドッグの工具入れから鉄パイプを無造作に両手で掴み引き抜くと、一方をコウに投げ渡した。ノールックパス、ノールックキャッチが成立する。連携良すぎだろ。


『クランド艦長。事情は知っています。とりあえず、呼ばれたので参上しました』


「………余計なことを」


 慚愧にたえないという面持ちをするクランド。その横を通過する。


『お初にお目にかかります。アリスランドの艦長さん。俺が御所望だったエース・ノギです。わけあって、こんな姿となりました。車椅子の上から失礼します』


 右手はない。代わりに左手で敬礼する。


 しかし対面した男は敬礼を返さず、ニタニタとしながら俺を見下ろした。


「そうか。お前がエース・ノギか。………俺はビーツ・クノ。アリスランド艦長代理である」


『お会いできて光栄です』


「そう畏まることはない。貴様と俺は同郷………いや、同じ境地に至った、この世界で唯一の理解人ではないか。なぁ、隣人よ。違うか?」


『………』


 ………そうか。


 やはり、そうだった。


 こいつの口調からして、仮説も事実であると証明できた。


 ペンタリブルで俺を狙った男たちはビーツなる少年の手先で間違いない。つまりアリスランドのクルーだ。


 その男たちは言った。


 ソータたちを優秀なパイロットであると。


 しかし、ヒナだけは飛ばした。あの時はただ疑問でしかなかったが、ビーツの言動ですべてが一致してしまう。


 ビーツは、ヒナが戦死することを()()()()()


 そして先に申請されていたがゆえ、弾かれた俺の劣化しているビームシールドではあったが、固執して狙ってきた理由。


 ビーツが名指しで俺と対面したがった理由。


 すべて同じだ。


 天破のグラディオスというアニメの世界にはビームシールドは存在しない。


 そこで俺が作って、申請してしまったがゆえ、俺のことを知ってしまったのだろう。


 だから会いに来た。それはなぜか。






 ビーツもまた、俺と同じく()()()()()()だ。






 おそらく俺と同じ時間軸にいた、俺と同じ天破のグラディオスのファン。


 ゆえに作中の時系列を知っている。


 すでにドッグの監視カメラやマイクから、映像と音を拾っている。クランドとのやり取りは途中からだが傍受した。


 ヒナと、彼女の愛機たる六号機が健在で、ジャケットの存在に驚いた。アイリの負傷を知って請け負おうともした。ソータとユリンとシェリーを引き入れようとした。


 なにより、俺は忘れていたが、本編ではサフラビオロスで失われるはずのプロトタイプガリウスGがタキオン製造の近道であるとも知っていた。


 確信犯じゃねぇか。


()()ですか。うまいことを仰る』


 隣にいるひとという意味ではない。哲学的観点から述べるものだ。


「違うとは言わせない。お前も、そうなのだろう? ………龍紋を放つ」


 不敵な笑顔で、全員が首を傾げるワードを放つ。


『………星に抱かれし者』


「ククッ。やはりそうか………天を破りて、(ぜん)


『天を破りて、()


 俺とビーツが並べた暗号のような合言葉は、天破のグラディオスの第23話から第26話に至るまでのタイトルだ。ファンなら当然、語れる。


 ビーツは歪んだ笑みを浮かべた。


 俺もできるものなら笑いたかった。思いを同じくするファンに、まさか転生先で出会えたからだ。


 俺だって、同じ境遇の人物に出会えるとは思ってなかった。タイトルを並べただけで少し楽しかった。


 しかし、ビーツ・クノという、エース・ノギに少しだけ名が似ている男を、俺は全面的に信じるわけにはいかなかった。


 こいつは、俺と同じ境遇で、搭乗した艦に違いがあったがために歪んでしまった。主人公サイドか、敵サイドか。俺なら仮にアリスランドに搭乗したとすれば、なにをするだろう。なにができるだろう。できることをやるにしても限度がある。信頼を勝ち取れないかもしれない。原作ではアリスランドはまだ地球にいる。万全を期すために。


 早すぎる出航に、きっとビーツも苦悩したに違いない。苦労しただろう。


 なぜならアリスランドはグラディオスと違って、登場するのは第2クールからだ。現時点でノーヒント。


 原作破壊行為を繰り返し、本筋には乗っているがほぼ手探りの俺とは違う。ビーツは最初から手探りだ。


 グラディオスと合流し、感動する。ファンならではの狂喜。


 仮に俺がビーツのようにアリスランドに搭乗したとして。紆余曲折あって艦長代理に就任したならば、きっと………クランドに援助を求めた上で、協力を申し出る。アリスランドの総力をグラディオスに帰属させる。艦隊にするんだ。クランドには大きな負担になるかもしれないが傘下に入り、第1クールの最終決戦の戦力に数えてもらう。本部の命令など無視してやる。


 けどビーツはそうしない。グラディオスから主要なものを抜き取り、自分の力にしようとした。


 俺には俺の信念があるように、ビーツにはビーツなりの信念があるのだろう。そこは差別しないし強制はできない。


『さて、こうして対面できたんだ。ビーツ艦長代理。お互いの腹のうちを探ってないで、本心を述べたらいかがです?』


「そうだな。そうしようか」


 ビーツはサッと手を挙げた。


 すると、その合図を待っていたのか、後ろの兵隊ら───ではなく、俺が入った隔壁が開き、ゾロゾロと人員が入ってきた。


「レイシアッ!?」


「大丈夫です艦長。無事です」


 先頭にいたレイシアは冷静に述べた。しかし頬が赤い。殴られた痕だ。


 激昂するクランド。だが手は出せない。レイシアはたったひとりの小柄な誰かに拘束され、人質にされていた。少しの間を置いて、軽傷を負ったソータたちも現れる。シドウは特に怪我をしていた。全員がレイシアを拘束する漆黒のノーマルスーツを着用した誰かを睨む。アーレスや砲雷科の人間はいない。


「ビーツ艦長代理ッ! これはどういうことだッ!」


 たまらずクランドがビーツを非難する。こうなれば制止していた整備士たちも、憧れのメディカルルームの白衣の天使や、可愛がっていたパイロットたちが傷を負ったとなれば、アリスランドのクルーを本格的に敵と認識する。


 怒鳴られたビーツは飄々としていた。まるで罪悪感というものがない。


「どうかお許しいただきたい。彼には、そちらのパイロットたちを連れてくるよう言ったのですが………ああ、どうやらやはり警戒されていたようで、話が通じず、やむなく武力行使に出たのでしょう」


「こんなことをして許されると思っているのかァッ!」


「ご息女への不敬は謝罪致します。しかし、彼には先に手を出すなと言っております。誰だって殺されるのは嫌でしょう? つまりこれは、正当防衛です」


「貴様ァッ!」


「大丈夫。数日すれば治る傷です。もう彼もご息女を人質にすることもない。では………任務更新だ。()()()


 パチンと指を鳴らすと、レイシアを拘束していた漆黒のノーマルスーツを着ていた者が、まるで無重力空間にいるような跳躍力を発揮して飛び上がる。


 そしてその名を聞いて、歯噛みした。


 ビーツはやはり、アークを確保していやがった。


 その上でパイロットと対面させた。


 なんて残酷なことをしやがる───と怒りを覚えた。


 その憤りが仇となる。飛び上がったアークの着地点は、まさに俺の眼前だった。


リアクションありがとうございます!

いただいた感想でもあったとおり、ビーツは転生先その2です。敵艦のボスになっていました。ちょっと胸糞野郎です。

ですが………彼にも色々とあるのです。

次回は12時に更新します! さらに感想やブクマ、評価、リアクションをいただけると………なんと13時にも更新するかもしれません!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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