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コロニー崩壊C02

「俺の名前はエース・ノギ。アスクノーツ学園に通う2年生。ソータたちの上級生。17歳。ケイスマン教授のゼミに入って、よくサボった。機械工学を学んでいた昼行燈みたいな男。………両親は別のコロニーにいる。兄弟はいない」


 誰にも聞かれない程度の声で呟いてみた。


 薄暗くてうまく見えないが、そこには前世といってもいいのかはよくわからないが、小此木瑛亮とはかけ離れていた容姿をしたエース・ノギがいることはわかる。


「小此木瑛亮。城中大学2年生。超文系。理系が苦手。英語も苦手。成績はそこまでよくない。高校生の頃から飲食店でバイト経験あり。田舎から上京。ひとり暮らし。両親は田舎で農業。弟がふたり。交友関係は男連中ばかり。かなり陰キャ。女子の友達なんてあまりいない。サークルは………まぁ、後輩も男くらいしか仲がいい奴はいない」


 語っていて悲しくなってきた。


 なんて華の無い生活だったのだろう。春が来たなんて言えない生活だった。


 けど、記憶ははっきりとしている。


 今のところ、混濁した印象はない。


 エース・ノギも、小此木瑛亮も、どちらも俺だと。


「もし………エース・ノギって奴が実在して、そいつの人生を勝手に奪ってしまったのなら………」


 そうだとしたら慙愧に耐えない。


 罪悪感どころではないかもしれない。


 しかし、天破のグラディオスの作中で、こんなキャラは見たことがない。なんなら同室になったうちの半分がそうだ。


 もしかしたら1秒にも満たないカットに登場した、学生上がりの整備士なのかもしれない。


 そして俺も、そのなかのひとりなのだとしたら。


 このアニメのキャラデザの片隅に描かれたモブキャラだとしたら。


 所詮は架空の世界の話しだと、割り切れるかもしれない。実在しない人間のヒューマンドラマに、一々感情移入したりするのは無駄なことだ。


「………はは。ダメだ。割り切れる話しじゃねぇよな」


 掠れた笑い声が、すべてを物語る。


 このアニメが大好きなのだ。


 続編が作られるなら寿命を5年くらいは差し出してもいいと考えたほどに。


 その結果、最終回直後に劇場版が決定したと放送され、昇天した。その結果がこれだ。異世界転生。


 二次元の世界にご案内。全ファンが望み、夢見た奇跡。


 ただし主人公ではなく、名もなきモブキャラとして。


「でも、いいよな。それでも」


 俺はこのアニメに登場した、グラディオスに乗艦しているクルーの大半が好きだ。ファンを喜ばせるための凝った演出に、ホイホイと乗せられた。


 けど、それでも、大好きなキャラクターたちと寝食を共にし、語らい、笑い、泣き、共有できる。


 いちファンとして、どれだけ嬉しいことか。


「なら………運命だって、変えられる………はず」


 クルーに案内される途中で脳裏に過った「運命」が、どうも引っかかる。


 具体はわかっていた。わかり切っていた。


 このアニメの鬼畜的要素として、まず決定打となった第6話「みんな大好き」が代表的だ。


 誰だって思っていた。チームとして統制が取れて、円滑になり、いよいよ本格的に動き出す───というタイミングで訪れた悲劇。


 ファンたちを絶望のドン底に叩き落し、印象を深く刻み付けたあの事件。


 まさか、あのキャラが死ぬなんて、誰が予想できただろうか。


 今、思い出すだけでも吐き気がする。


 鮮明に覚えている。あの悲劇による絶望を。SNSでも悲嘆の声が続出した。俺の友人も嘆いた。


 けれど、吐き気以上にこみ上げる感情があった。


 俺の正義感などアンノウンにくれてやった。


 だからここからは、俺の我儘とエゴだ。


 あのネタと化したキャラも言ってたじゃないか。


 せっかく海に来たんだから、海に行こうぜ?


 ああ、そのとおり。それでいいじゃないか。


 せっかくアニメの世界に来たんだから、俺が望んだ世界にしようぜ!


 我欲上等。


 偽善で結構。


 決意した。



「俺が………みんなを、守る」



 このアニメが多くの視聴者の印象付けたのは、毎回と言ってもいいほど、誰かが死ぬってことだ。


 死亡しなかったとしても、重傷を負ったり、精神が崩壊したり。


 俺が回避してやる。


 なにもかも。


 多分、俺がここにいるのはそういうことだ。


 それをせずに、推し活なんてやってられるか。


 俺は、俺が愛するキャラクターを幸せにしてみせる。


 そのキャラクターの幸せなくして、推し活など到底不可能なのだから。


色々と選択肢があるなかで我欲に走るというのが今回の主人公です。


作者からのお願いです。

皆様の温かい応援が頼りです。ブクマ、評価、感想、いいねなど思いつく限りの応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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