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どうせみんな死ぬA10

 その後、俺はまた精神を心のなかに集中し、市街の監視カメラに侵入し、男たちの同行を探った。


 そして発見し次第、無人の駐車中の電気自動車を操作しては追い回した。そうなれば、もう男たちは俺たちと追いかけっこをしている場合ではなくなる。


 逆に逃亡するために駐車している電気自動車に乗り込んでハッキング、エンジンを起動させようとすれば、ハッキング仕返してエンジンを停止させたり、あらぬ方向に向けさせた。男たちの悲鳴が実に愉快だった。


 電気自動車に乗り込んだは4人。ドアをロックして、急発進。ハンドル操作も受け付けず、窓ガラスを割られる前にペンタリブル支部の敷地内に突撃。樹木に衝突させれば完了。あとはペンタリブル支部の軍人が4人を捕縛するだろう。


 残りふたり。だが学習能力があるようで、狭い路地に逃げ込んだり、監視カメラを避けるようになった。


《ハルモニ。さっきの連中の端末をハッキングする。所属を割り出すぞ》


《軍人ではないあなたにその権限は与えられておりません》


《ならいいよ。ひとりでやる》


 奇しくも、こんなイレギュラーな襲撃を受けた影響で、脳内チップの使い方を熟知することができた。不幸中の幸いたる、荒療治みたいだ。


 ハルモニの補助も受けられないまま、先程の男たちの端末を探す。ペンタリブル支部に突っ込んだ4人のうち、ひとりが俺たちの話しかけてきた男だ。遠くにある監視カメラで場所を特定。意識を潜らせる。


「っ………ぁ」


「エー先輩っ!」


「エー先輩、鼻血出てる! どこかぶつけたの!?」


 久しぶりに肉声が出た。


 それほどの苦痛と集中力を要する。脳内チップを中心に熱が発生し、思考がショートしかけた。


《警告。これ以上の過負荷は、脳細胞に深刻なダメージを与える可能性があります。即刻ハッキングを終了してください》


「ん、がふっ」


「エー先輩!」


 走りながら全員が心配してくれた。


 そこで、俺の意識は一旦途切れた。ハルモニによる制限だ。


 349秒後、回復したので覚醒する。


『あー………頭痛ぇ』


「無茶するから」


「やめてくださいエー。血を吐いた時は心臓が止まるかと思いました。鼻血が口に流れ込んだだけってハルモニが言ってましたけど」


 アイリとクスドから非難を受けた。


 俺に用意された白いTシャツと灰色のジャケットが、鼻血で大変なことになっていた。


『でも、無茶した甲斐があった。………クランド艦長が、なにしようとしてるのかも掴めたぞ。いい土産になったな』


「どういうこと?」


 走りながら俺を覗き込み、ハンカチで鼻血を拭ってくれるヒナ。器用だな。


『どうやら()()()()()は俺に用があって、方法を選ばずに、それこそ生死問わず会いたいんだとよ………止まれ!』


 走り、停止し、また走りを繰り返すこと45分。あと少しで港に到着するはずが、どうやら網を張られていたらしい。


 脳内で再びハルモニがレッドアラートを発する。周囲に監視カメラはないが、狭い路地裏でなんらかの方法で索敵を行ったか。


 車椅子はパワータイプの代名詞たるハーモンが押している。ソータよりも小回りが効かないが、直線での加速力はガリウスの操縦に似て、コウと同格だ。


 停止を促すと、ブレーキをゆっくりと握る。これだけの速度を出しているのだ。急ブレーキをかけては俺の体が前に吹き飛ぶ。シートベルトなど無いのだから。


「………探したぞ。手間をかけてくれる」


 完全に停止すると、狭い路地の向こう側からふたりの男が現れた。やはり先程俺たちを囲んだ際、後ろに隠れていた連中だ。


「ハッ。俺らみてぇなガキを必死こいて探してた、ダッセェジジィが喧嘩売ろうってかぁ? いいぜぇ? 買ってやんよォッ!」


「銃を持てば強くなると勘違いしている連中だ。1分もかからん」


「臭そうなオジサマたちだこと。んふふ。いいですよぉ。口から脱糞させてあげましょうねぇ」


「あんたたちなんて、小石で足りそうね。頭蓋を割られる覚悟はできてる?」


 わぁ。好戦的。


 そりゃ人数で言えば、こっちが有利だけどさ。喧嘩っ早いハーモンとコウはもちろん、ユリンとシェリーが銃で武装している成人男性に素手で立ち向かおうとするかね普通。シェリーなんて本当にそこらで調達してた小石を握ってるし。


 普段なら絶対止めてるよ? でも今回ばかりは、これでいい。


 チェックメイトだ。敵はすでに詰んでいる。


「ガキが。粋がるなよ?」


「お前たちは殺さないよう言われているだけで、決して怪我をさせてはいけないとは命令されて───ぐっ!?」


「な、なに!?」


 銃声。2発。ほぼ同時。


 そこまで距離がないからな。外すはずがない。


「ホールドアップ! お前たちはすでに包囲されている!」


「時間どおりじゃねぇか隊長!」


「見直したわぁ」


 囮役を買って出たハーモンとユリンが、両サイドの建物の上を見る。


 そこにはシドウ率いる、砲雷科の人間が揃っていて、ライフルを構えていた。今の狙撃で、男たちが構えようとした拳銃を的確に叩き落としたのだ。


「くっ………グラディオスのクルーか!」


「やむないな。ここは退かせてもらうとしよう」


 包囲され、多数の銃口を頭上から向けられていても男たちは冷静だった。コートの袖からひょろりと出ている紐を摘み、軽く引っ張る。するとズボンの裾から白煙が猛烈な勢いで噴出した。


「煙幕か。無駄なことを。………エースの読み通りだな」


 建物の壁を三角跳びの要領で跳び、落下の速度を弱めながら俺たちの前に飛び降りるシドウ。すげぇイカれた身体能力だ。こんな特技があったなんて知らなかった。


「お前たち、無事か?」


「お陰様で」


「ありがとうございます。少尉」


 ソータとアイリが述べた。


「当然のことだ。お前たちを守るのも仕事のうちだ………と言いたいところだが、まさかペンタリブル支部の者ではない間者がいたとはな。これは俺たちの読みの浅さが招いた失態だ。すまないな。よく報せてくれた。エース」


『いえいえ。皆さんなら間に合うと信じてましたよ。………ところで』


 俺はただ、あの連中をおもちゃにして遊んでいたわけではない。ハルモニの許可さえあれば恩恵を得られるのだ。脳内チップで腕の端末を操作して、シドウに連絡をとっていた。


 シドウは砲雷科の実銃訓練を受けているクルーを率いて、予定していたポイントで待っててくれた。ハルモニがエンカウントポイント兼キルゾーンを計算してくれた。


 そして今、シドウはあえてあのふたりを見逃したわけだが。


「心配はいらない。実はお前の危機と知った()()()()が、自分も行くと言って聞かなくてな………ああ、どうやら始まったか」


 シドウは苦笑しながら煙幕の向こう側を見た。


 直後「なんだ貴様!」とか「そこを退け!」とか威嚇するような声がしたが「ギャァアアアアアア!」と断末魔に変わる。


 静かになったと思えば、コツコツと靴が石畳みを叩く音がして、白煙からヌゥと巨体が現れた。



「無事かい? 子供たち。もう心配はいらないよ。きみたちに悪さをする大人たちは、私が許さない。艦に戻るまで私たちが護衛しよう。指先ひとつでも触らせるものか」



 ニコニコしながら現れたアーレス。ローマカトリックの「エーメン」と叫びそうな神父みたいな出立ち。きっと煙幕のなかで会敵した瞬間、豹変して襲い掛かったのだろう。体格が違うもんな。アーレスの巨大な筋肉を前にしては予備の銃など抜いても無意味。


 瞬時に無力化されたのだろうな。アーレスが無造作に掴んで牽引しているふたりの男は、顔面が潰れて痙攣していた。迸る激昂が拳に宿ったか。


 すげぇサプライズ。超人が護衛についてくれた。


 ………俺、よくあんなのに殴られて無事でいたよなぁ。手加減されていたとは言えども。


リアクションありがとうございます!

というわけで次回は12時に更新を予定しております!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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