どうせみんな死ぬA09
「なんだぁ、テメェら───」
「失礼。我々はこういう者だ」
ハーモンが一発、挨拶代わりにガンを飛ばす前に、ふたりの男は右腕を翳す。
そこには色が違うが、見知ったものがあった。俺たちも着用している。連合軍の軍人に貸与される端末だ。
その端末から立体投影されるA4サイズの半透明なオレンジ色の紋章。間違いなく連合軍のエンブレム。
「………失礼しました」
シェリーが形式だけの謝罪と、警戒を解いたふりをしながら敬礼。俺たちも続く。ふたりの男も敬礼を返す。
「我々は連合軍ペンタリブル支部の者だ。きみたちはグラディオスのクルーかね?」
「はい」
「照会させてもらっても?」
「………どうぞ」
応じるシェリーが右腕の端末から、男たちが示したようにエンブレムを提示する。深緑色の半透明なモニターに、翼と剣をクロスさせたエンブレム。それがグラディオスクルーである証拠となる。
「確かに」
「なにか御用でしょうか?」
「エース・ノギという人物に会いに来た」
「………」
俺の前を固めつつも、ある程度はフリーにする。固めすぎると俺だとバレるからだ。あくまで自然を装う。
しかし………俺を狙う理由はなんだ?
本編ではペンタリブルでこんなシーンはなかった。
一応、短時間だけだがソータが街を流離うシーンはあれど、ペンタリブル支部の軍人に絡まれることはない。
「なにか御用ですか?」
ソータは度胸がついた。俺より前に出る。まるで自分がエース・ノギであると名乗るかのように。
「ビームシールドを製造したそうだが………どこでそんな技術を学んだのかね?」
「………」
ソータが答えられるはずがない。
黙秘を続けると、男たちは薄ら笑いを浮かべる。
「隠し立てはやめたまえ。ソータ・レビンスくん」
「………なぜ俺の名前を?」
「有名だからね」
「どういうことですか?」
「我々も、情報を共有しているのだよ。アンノウンを単身で撃破できるグラディオスのエースパイロット。それがきみだ。そしてハーモン・デクスター。シェリー・ダルシャナ。ユリン・エフナール。コウ・ギグス。とても優秀なパイロットのようだからね」
柔和な笑みを浮かべる、漆黒のトレンチコートを纏う男たち。
しかし、誰もが「うん?」と首を傾げた。
こいつ、ヒナを飛ばしやがった。ヒナだってユリンに次ぐ、シミュレーションスコアがSの優秀なパイロットだ。使う兵装は平均的なもので尖ったものはないが、基本に忠実かつ堅固な防衛を可能にしている。
なら、共有されている情報があるなら、ヒナだって絶対のリストアップされるはず。ソータをはじめとした6人のパイロットたちは、日々ガリウスのパイロットとして撃墜数を更新しているのだから。こいつらが注目しないはずがない。
「しかし報告より人数が多いな。現地民ではないな。端末を装着しているということは、グラディオスのクルーだろう? まぁいい。さぁ、エース・ノギ。前に出たまえ」
グラディオスが誇る優秀なパイロットに会いに来たくらいならわかるが、なぜ俺を欲する?
ビームシールドは確かにクランドの手によって情報が共有されていて、エース・ノギ式とあるから名前はバレているとして………しかし、俺の申請は通らなかったというし。今さら劣化版など作ろうという魂胆などありもしないだろう。
さて、どうしたものか。
「さぁ。出て来たまえ。拒否権は存在しない。いかにグラディオスのクルーとはいえね」
「っ───!」
「そうか。きみか」
見つかった。俺が一瞬、息を呑んだ動作で見抜かれた。
男たちが動き出す。ふたりだけではない。後方からも4人。
実力行使に出るのか。ハーモンとコウ、シェリーとユリンが応戦しようとする。
ならば、
《ハルモニッ!!》
《イェス。シビリアン・エース》
脳内チップを介して、ハルモニの補助を受けながら、俺たちの真横にあった開店前の酒場の看板にハッキングを仕掛ける。
電気製品なら、やろうと思えばやれたのだ。触れずとも意識を侵入させてスイッチを入れ、電圧を上げてショートさせる。ボン! と音を鳴らして注目を集めた。
『今だ! 横の通路に入れ!』
「わかった!」
「ま、待て!」
端末を介して叫ぶと、ソータが車椅子を掴んで急発進させる。
男たちが瞬時に懐から銃を抜いた。やはり。と確信を得る。
威嚇射撃だろうが、そんなことをさせる時間など与えない。
連中が立っているポイントの近くにあった無人の電気自動車をハッキング。急発進させ、男たちの進路を塞ぎ、射線を妨害する。
「くそ! 逃げる前に撃て!」
「待て! パイロットには当てるなと言われているだろう!」
「いったいどうなっている!?」
「仕方ない。A班はこの車を乗り越えろ。B班は回り込むうぉぉおおおお!?」
逃げ去る間に怒鳴り声が聞こえた。パイロットには当ててはならないが、俺にはいいと? いったいどこの組織だ?
一般乗用車は背が低く、簡単に乗り越えることができる。3人が乗った瞬間にまた操作して前進。後ろに振り落としてやった。さらにバックすると、男たちは四つん這いになりながら逃げていく。しばらく追いかけっこをしてやるか。
「………んぱい! エー先輩!」
『んぉ………悪い。ここを右な。ハルモニ、ガイド頼む。さっきの奴らに見つかるな』
『イェス。シビリアン・エース。………パイロット・ソータ。以降は私のルートガイドに従い、この速度を維持して走ってください』
行き先はもちろんグラディオスだ。
まだ帰るまで1時間半もあるが、銃を向けられるほどの非常事態。グラディオスに逃げ込めば俺たちの勝ちとなる。
「それにしても、さっきの車は………エー先輩がやったのか? 看板の爆発といい、タイミングが出来すぎている気がするが」
コウの勘は冴えている。
『そうだ。俺がやった。ハルモニには渋られたけど、銃を持っている連中を相手に、パイロットたちの保護を最優先させたんだよ。ちなみに持ち主には修理代を振り込んである。心配すんな』
俺の体だけでなく、脳内チップの機能もハルモニが管理している。先程のような遠隔操作なら、ドローンカメラ4機同時操縦よりも容易い。
「けれど、なぜエース先輩は相手が危険だと………いえ、胡散臭さはわかるけど、銃を持っていたとわかったのかしら? この逃亡だって段取りもいい。エース先輩は、いつあの連中がペンタリブル支部の軍人ではないと気付いたの?」
やはりユリンも気付いたか。さすがだよ。
『あいつら、俺がグラディオスのクルーだって言っただろ? ペンタリブル支部の軍人なら、俺が退役するから病院に移送するって知ってるはずだからな。だから、あいつらはペンタリブル支部の人間じゃないってわかったのさ』
だから顔に出ちまったんだよな。
これは反省しないと。
「エー先輩、すげぇぜ! 機械に介入してぶっ壊すなんて最高にかっこいいじゃねぇか!」
『あ、あー。うん。ソウダネ………』
ハーモンは興奮気味に叫ぶ。
これについては、前世で………その、小此木瑛亮がやらかしたというか。黒歴史を思い出す。
前世、大学生だった俺は、こうして異世界転生する前に、同じサークルの心理学部に通う4年生の実験に付き合ったことがある。脳波測定の実験で、俺はふざけて測定を振り切ってやろうとしたら、過去にない異常な数値を叩き出し、病院へ行った方がいいのでは? と本気で疑われたことがあった。
まさかそんなことになるとは思っておらず、俺はその時、なんら役にも立たず、むしろ迷惑でしかない自分の才能を自覚したのだ。
エース・ノギにまで引き継いでいるとは。俺は操作するよりぶっ壊す方が得意なんだな。
実験後、先輩は教授にしこたま怒られたという。ごめんね先輩。でも転生先で、とても役に立ちました。
ブクマ、リアクションありがとうございます!
ちなみに作者は学生時代、親友の卒論の実験に参加し、そういう数値を出して親友が怒られたという前科があります。ごめんね親友。
明日は土曜日なのですが、仕事が入ってしまったので、いつもより更新回数を少なめとさせていただきます。
0時、7時、12時、19時とさせていただきます。日曜日もほぼ同じ時間と回数とさせていただきます。ご了承くだせぇ…!
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