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どうせみんな死ぬA04

「ぅえ、ひっ………く、う………うぇえ」


 先程から、ずっとこうだ。


 クランドたち大人が去る。


 俺はメディカルルームのベッドの上で、未だたくさんのケーブルに繋がれて、包帯で巻かれ、呆然としながらも、腹の上に突っ伏して泣き続けるヒナの頭を撫でていた。


 ヒナだけではない。


 ソータ、アイリ、シェリーがベッドの上に上がり、俺を抱きしめ、泣いていた。


 床に座り込むハーモン。壁に背中を預けるコウとユリン。ベッドの脚にもたれ掛かり蹲るクスド。


 8人が俺に寄り添った。グラディオスで最短で育んだ、俺だけの絆。本当はもっといるのだけど、アニメの主幹となるネームドキャラとしてはこれで全員となる。


 我ながら、よくこれだけの、個性の殴り合いみたいな特徴多い主幹キャラクターたちに懐いてもらえたものだと思う。


 俺は働いた。働いて、働いて、体を壊して、怪我をして、腕と脳の一部を欠損して、ついに───第8話までで死ぬはずだったキャラクターを救った。


 ただ自己犠牲が激し過ぎて、今度は俺が退場を余儀なくされている。


 推し活の申し子としては申し分ない結果ではあるが、これでは本末転倒もいいところだ。


「いやだ………エー先輩と離れるなんて嫌だ………!」


「でもエー先輩がここを離れないと、もっと酷い目に遭うって」


「それも嫌だけど! でもエー先輩がいないなんてもっと嫌だよぉ」


 ソータ、アイリ、シェリーが泣きながら訴える。


 本当にいい子たちだよ。俺なんかにはもったいないくらいだ。


 でもな、ソータとアイリ。俺なんかにくっついてないで、そろそろふたりでくっついてもいいんだよ?


 なんなら俺の目の前でイチャイチャしな? 俺はそっちの方が嬉しいんだけど。


 ………って伝えたら、アイリに怒られそうだよなぁ。


 さて。どうしたもんかね。


 カイドウとシドウにはペンタリブルに到着するまで、スクランブル以外は好きにしていいと言われた。だから大人たちが去って、数時間後である深夜になっても、誰も俺の側を離れようとしない。明日もあるから寝てほしいけど。


「エー先輩」


『うん?』


 ずっと俺の腹に顔を埋めていたヒナが、目を真っ赤にしながら顔を上げる。


「エー先輩は、グラディオスを降りたい?」


 ………そう来たか。


 本心を述べていいなら、俺は降りたくない。


 なぜなら、絶望はこれで終わりではない。第1クールはあと少しで終わる。アンノウンという未知の敵との戦争だ。


 しかし第2クールはまた違った展開となる。アンノウンの秘密に迫りながらも、今度は人間が敵になる。三つ巴の泥沼で、血で血を洗う戦争に勃発するのだ。


 犠牲は多い。


 このなかで誰が死ぬと思う?


 ソータとアイリ以外の全員だ。


 それは絶対に回避したい。救えるものなら救いたい。


 例え、俺が左腕を失っても、両足を切り取られても。内臓を抉られても。脳内チップが追加されるくらい脳みそがぐちゃぐちゃになったとしても。


 ………けど、カイドウたちは、俺のそんな姿を見たがらない。


 ペンタリブルというコロニーは確かにいいところだ。治安と経済もいい。施設だって充実している。それに年間で日本円で換算して数百、千万円くらい振り込んでくれるとか。保険も適応。ある意味で最高。楽園に違いない。


 でもな、そんなの仮初の楽園だ。そんななかで年中食って寝て遊んで、適当な女と付き合って、抱いて、結婚して子を産んでも、価値なんかないんだ。


 俺にとって、エース・ノギにとって必要なものはすべてここにある。


 グラディオスという、人類を救済に導いた方舟のなかに。


 俺はそのすべてを達成するまで、ここを離れたくはない。


『できるなら、みんなと一緒にいたいなぁ。でも、こんな体で………はは。なにができるんだろうな?』


 先程から、腕は動いても足が動かない。感触がない。俺が自力で脱走しないようカイドウが運動能力を制限しやがったからだ。


「………エー先輩の有用性を証明できれば」


『クスド?』


「残酷な話だけど。こんなこと言ったらハーモンとコウに殴られそうだけど。言います。僕だって………エー先輩と一緒にいたい。だから………エー先輩が、まだ軍人として、できることがあると証明すれば………退役を撤回できるかもしれません。でもそれは茨の道です。血を吐くだけじゃ済まないかもしれない。でも、でもっ」


『………ありがとな、クスド。お前はそういう考えができるんだ。やっぱり参謀向きなんだよ。見てみ? ハーモンとコウがお前を殴ろうとしてるか? むしろやる気になった目をしてやがるな。えぇ? ハーモン。コウも』


「おうよ。クスド、お前を殴るはずねぇだろ」


「むしろ評価している。退役を撤回させれば、すべてが済むんだ。ならば、なんでも言え。協力は惜しまない。クスド。俺たちに指示をくれ」


 本編では、すでにクスドのこれまでの悪行が晒されて、出番があるまでフェードアウトしている頃だ。


 でもそれと比べてどうだろう。


 クスドはここにいる全員から信頼を勝ち取り、アイデアを出し、そして人員を動かせるまでになった。


 本編ではハーモンに殴られ、コウに唾まで吐かれた。しかし今、その両隣にハーモンとコウが自らクスドの案を求め、肩に手まで置いている。絶望し、死んだような目をしたクスドだが、今その表情は覚悟を決めた男のものだ。涙ぐましいな。


 クスドだけじゃない。あの問題児でしかなかったハーモンとコウ。立派に成長してくれた。


「今日はみんな寝ているから、明日動こう。嘆願書を作るんだ。カイドウさんたちがエー先輩が傷付くのを見たくないっていうのはわかる。できれば僕も見たくない。でも、それでもこれまで一緒に戦ってきたひとが離れるのは嫌だって思うひとはいっぱいいると思う。片っ端から声をかけて、みんなの意見を集めるんだ」


「だが、実際それでエー先輩が傷ついてしまうのは本末転倒な気もする。懸念しているクランド艦長が折れるとは思えな───」


「よ、弱気になっちゃダメだ! コウ! 僕でもわかる! 僕たちがこうしてここにいるのはエー先輩のお陰なんだ! だったら、なにがなんでも守るんだ! エー先輩をどんな脅威からも引き離せるように! 意見を集めるだけじゃダメだ。僕たちが、今の何倍、何十倍と強くならないといけない! 僕は何回だって考える。エー先輩が言ってたように参謀だって目指す! ならコウは………コウだけじゃないよ。ここにいる全員。パイロットとして、整備士として、今日から何十倍も強くなって、今度はエー先輩を僕たちが守るんだ! そうでしょ!?」


「………ああ。………ああ、そのとおりだ。俺が間違っていた。弱気ではダメだ。お前が正しい。お前の言うとおりだ。俺たちがエー先輩を守る」


「だな。いいこと言うじゃねぇか。クスド参謀ドノよぅ。まさかお前が俺らに気合いをブチ込むたぁ思いもしなかったぜ」


 あの弱気でオドオドするしかなかったクスドは、コウの胸倉を掴んで叫ぶ。


 するとあのコウが、他人を決して認めようとしなかった一匹狼の皮を被ったツンデレ猫が、クスドに説教されるとは思わず、柔和な笑みを浮かべたあとに、クスドと同じ表情になるのだった。


 覚悟は伝播する。隣にいたハーモンだけではない。俺がいるベッドにいる全員が同じ表情となった。


 誰かが明確に成長する瞬間を、俺はこの目で見た。


 それだけでも、俺はこれまでの行動が、無茶と無謀でしかなかった思案が、決して無駄なんかじゃなかったのだと実感した。


ブクマ、評価、リアクション、誤字報告ありがとうございます!

励みになります。

さて、今週の土日なのですが、土曜日に仕事が入りまして。日曜日はハサウェイを見て飲みに行きます。なかなかハードなスケジュールなので、毎週のようなたくさんの更新ができません。よって、どちらも4回ほどの更新でお許しください。ご理解のほどよろしくお願いします!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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つまり、サイコ•ガリウスってこと!?
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