主砲を撃てB13
『メカニック・エース。主砲発射までのカウントダウンが再開しました。残り120秒』
「2分か! ギリギリだな。いつものことだけどなぁっ!」
すべての作業を終えて、メインコンソールに飛びつく。操作を開始した。
「だぁ、クソッ! マジで難しい………けどドローンカメラの4機同時操作に比べれば、まだ余裕がある!」
これまで俺が培ったものが発揮される。
メインコンソールでサブコンソールの作業も同時進行させるのだ。
確かにこれはアーレスがかつて嘆いたように、俺の目が6個、腕が6本に増えなければ難しい。
そう、難しいだけなのだ。不可能ではない。むしろドローンカメラの殺人的なマルチタスクと比較すれば、まだ優しさを感じたくらいだ。
回転数が上昇。熱を操作。装甲の排熱を促し、主砲にエネルギー充填。この区画の熱も上昇。予想どおりパイプが異常を発するが無視。まだやれる。演習の時の比ではないくらい異常が各所で発生したが、まだ退避の時ではない。ギリギリを見極める。ハルモニと何度もシミュレーションを繰り返したんだ。
すべてはこの時のために。
『残り80秒』
「レイライトリアクター、臨界に達するまであと60秒、ぐう!」
『エースゥッ!』
「まだ………まだやれます!」
巨大なレイライトリアクターの猛烈な回転で、この区画全体がガタガタと揺れる。臨界点に達する前だというのに、さっそくどこかがイカれた。
俺の記憶どおりに、最初のパイプが爆発する。
原作では、それはもう悲惨だった。
主砲を発射しようにも、エラーが発生して撃てず、整備士と学徒兵数名がこの区画に突入し、コンソールで作業をした。その人数は20名。そしてそのなかにアイリがいた。
アイリはソータたちが必死に戦っているのに自分だけが安全な場所にいるのが負い目だった。予備パイロットにもなれず、整備士として機体をいじる日々に、パイロットたちに嫉妬さえしていた。
ゆえになにか、役に立ちたかった。
主砲に異常が発生すれば、自分も立候補して問題に立ち向かおうとした。すべてはソータたちを救うため。自分も戦っているのだと実感するため。ソータと何度もすれ違った末、自棄を起こしてしまったのだ。
そしてこの区画でエラーを消去した直後、退避しようとした整備士たちを爆発が襲う。
その凄まじい連鎖に5人が犠牲となる。夜、俺を教えてくれた先輩が。アイリたちの前で肉と骨を撒き散らす。血と内臓が降り注ぐなかで、爆発が各所で発生。
整備士たちはもう助からないと判断。全員がアイリに覆い被さり、肉の壁となった。せめてこの子だけは助けてようと防護服を着せた。レイライトブラスターは発射したが、その区画はしばらく使用できなくなり、19名の尊い命が散り、アイリは男たちの献身で生き残ったが、消えない傷と、心に傷を負った。
それを見たソータは、また自分を責めて、壊れていく。
させねぇよ馬鹿野郎。
アイリにそんな傷を負わせてたまるか。ソータに自分を責めさせてたまるか。
これが俺の、間違えられない大勝負その2。
『残り40秒』
「ハルモニ! 本来のカウントダウン切り替えろ!」
『イェス。メカニック・エース。残された時間は32秒』
「よし! んぐっ………ぎっ………クラクラしてきやがった」
『エース! もういい! 逃げろぉぉおおおお!』
「いや、まだその時じゃ、ない」
カイドウが叫ぶ背後で、数人が俺の名を叫んでいる。整備士か、同級生か後輩か。
『残り15秒』
ここを耐え抜けば俺の勝ち。運命はまた大きく塗り替えられる。
パイプが破裂するが防護ネットで包んでいるため破片は飛ばない。代わりに俺の周囲を炎が包み始める。まだレイライトリアクターは壊れていない。主砲含め、周囲の冷却装置が作動している。
メインコンソールがバチバチと火花を散らす。
ノーマルスールの上に重ねた防護服がなければ意識を失っていた。ヘルメットの上にも防護ネットを被り、熱を遮断しているが、燃えてしまっては効果が薄れてしまう。カイドウとアーレスはこんな地獄みたいな環境を解決に導いた。すごいと思う。
俺に、同じことができるのか。
『エース・ノギ! もういい。きみは退避を! 火がそこまで迫っている!』
「俺がここを離れたらレイライトリアクターが暴発します! 確かにすごく難しい。絶妙なバランスを維持してないと、ここが吹っ飛んでしまう。でも最後までやり遂げます!」
『きみはどうするというのだね!?』
「考えがあります。ハルモニ! 時間は!」
『5秒前』
「よし、ここまでくればもういい。ハルモニ、数秒だけここのコントロールを任せるぞ! あとはオペレーションルームに託す!」
『イェス。メカニック・エース。───0。ご武運を』
「うぉぉおおおおおああああああああ!!」
目眩がした。メインコンソールから離れるために一歩踏み出しただけで倒れそうになる。
息が苦しい。暑い。後方は火が回っている。けど、ハルモニと計算し尽くしたんだ。こうなることも、体調も、すべて計算の内。
吐き気と目眩を気合いの咆哮で消す。
今はただ、全力で足を動かす。
『5、4、3、2、1───0! レイライトリアクター臨界到達!』
『撃てぇえええええええ!!』
主砲はすでに伸びていて、グラディオスの前方のハッチが開いて砲塔が姿を表している。
炎と電気が区画に満ちる。ブゥゥウウンと低く唸ったあと、凄まじい轟音と衝撃が区画を襲う。
「ど、わっ───!?」
こんな振動は計算に入れていなかった。
踏み出した途端に振動でバランスを崩し、転倒しそうになる。
「死んで、たまるかぁぁあああああああ!!」
転びそうになっても足を踏み出す。あと3歩。
ところが、その時。
「あぐっ………!?」
ゴスッと後頭部に重い衝撃を受けた。眼球が揺れているようだ。視界がグラつく。通り過ぎたなにかを見た。かなり大きい金属の破片。メインコンソールだ。主砲発射の衝撃で吹っ飛んだ。それが後頭部に衝突して───あれ? なんだろう、あのコントロール。
謎のひしゃげ方をしたところが、ペンキをぶち撒けたみたいに真っ赤になってらぁ。
………なんで、俺は動かない? 逃げないといけないのに。足が………動かない。
『エース………おい、エース! しっかしりしろ………ぉい』
カイドウの声がする。うまく聞き取れない。
『エース・ノ………頭部がしゅ………急げ………』
クランドも叫んでる。
「あ………ぅ………?」
まるで虫みたいだ。ビクンビクンと四肢が跳ねるなかで、目的とする臨時避難シェルターである、事前に開けておいたメンテナンスブースまでもがきながら這う。
時間がないのに。
よし、なんとか滑り込めた───
ジュッ!
───なんの音、だ?
うわ、炎が目の前に。なんか右腕が動かないな。
全身をメンテナンスブースに収容する。ハルモニがハッチを閉じる。
はぁ………うまくいったかな。
ここさえ閉じれば大丈夫だ。密閉されているから消火装置が作動して、二酸化炭素により火災が一瞬で鎮火する。
息苦しさが増す。
おかしいな。ヘルメットをしているんだ。ノーマルスーツは酸素を供給しているから呼吸ができるはずなのに。
もしかしてどこかに穴が空いた? ありえるな。防護服を着てても火災現場のなかに立っていたようなものだ。どこか燃えて穴が空いたかもしれない。
まずいな、なにも考えられない………体も動かな………
ねむ………く、な………
ブクマ、たくさんのリアクションありがとうございます!
城之内死すの高速ノンブレス詠唱を書きたかったのですが時間がなかったのでやめておきます。
ラストは21時頃に! 今日一日で色々やりながら2万字近く執筆できた私を、誰か褒めてください!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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