主砲を撃てB12
カイドウが俺の後継人として、アイリを添えた時から始まっていたと言える。
俺が道化になりきり、ダミーを発見させることで、あえてすべての信頼を信用を白紙にした。殴られるとは思っていたが、吊し上げ大会をするだなんて思いもしなかったが、問題ない。
カイドウは俺の思惑どおり、プロトタイプガリウスGのコクピットブロックに俺を乗せず、アイリを代打に立てた。
それでいい。アイリは大役によりコクピットブロックから出られない。
そしてもうひとつ、思惑どおりカイドウが俺からハルモニを取り上げた。そうするだろうと思って、バックアップを保存しておいた。カイドウもそれは思い付かなかっただろう。
最近のアンノウンは、俺にとってはタイミングよく現れる。うまいこと間に合ってくれた。
全権を剥奪され、整備士でもドローンカメラのパイロットでもなくなった俺は、ある意味で自由。
ドッグの隔壁をロックし、レイライトブラスターの区画のハッチもロック。暗証番号を変更して時間を稼ぐ。その間にクランドが主砲発射を決意。カイドウがその決意の中断を諫言。今に至る。
すべては予定どおりに進んでいた。
この区画にあるモニターを見る。アイリのドローンカメラが中継していた。
全員苦戦を強いられているが、日々の厳しい訓練もあり、損傷は軽微。まだ動ける。オペレーターの指示で、すでに射線上から退避を始めていた。
すると、そのモニターが切り替わる。
『………エース・ノギ。きみは、そこまでして私たちを裏切りたいのかね?』
カイドウから報告を受けたクランドの通信だった。監視カメラは生きている。俺の行動は筒抜けだろう。
「いいえ、逆ですよ」
『裏切っていない。と主張したいのかね?』
「その通りです」
『………馬鹿げている。今すぐ作業を中断したまえ。………これまでの功績を加味し、今なら銃殺刑は免除しよう』
艦長として、最大限の温情をかけたのだろう。その背後で『艦長っ!』とデーテルの非難めいた声がする。
そして、銃殺刑を免れるなら、俺はこれ以上の作業を中断し、命乞いをするとでも考えたのだろうな。普通ならそうするけど。
甘いぜ。止めるはずがない。
「艦長。俺からも進言します。主砲を撃ってください」
『きみはひとの話を聞いているのかね?』
「聞いてますよ。おやっさんが中止するよう言ったんでしょう? すでに俺がやったことも報告されていて、このままでは俺は捕まって即刻射殺されるかもしれない。でも、そんな時間と余裕があるんですか? 今は俺なんかに構っている場合じゃない。あのEタイプをなんとかするのが先決でしょうが!」
俺は初めて、クランドを怒鳴りつけた。この艦の一番偉いひとを、だ。
「これしか方法がないんだ! なら、やるしかない! 躊躇っている場合ですか!?」
『しかし、きみには我が艦を危険に晒しているという疑いがかけられている』
「だから信用ならないと?」
『そうなる。本当に、残念なことだが』
そりゃそうだ。
俺がクランドなら、同じことを言うくらいわかっている。
付き合いだってそんな長くない。直接会話したのだって数回。そんな小僧がこれまで築いた信頼を自ら崩壊させ、あろうことか主砲を撃てと、しかも貴重な巨大なレイライトリアクターの側に立って、人質ならぬ物質にとって喚くのだ。普通、信じられないよな。整備長と砲雷長が俺を止めろと進言している以上。
なら、俺がやることはひとつ。作業を続けながら叫ぶ。
「いいですか、艦長! 俺はこの数日で、レイライトブラスターの欠陥を発見しました!」
床下に隠していたケーブルを取り出し、サブコンソールのサイドハッチを開けて接続。メインコンソールに接続。有線の通信速度は無線の比ではない。片方を繋ぐと、もう片方に移る。
「この巨大なレイライトリアクターから供給されるエネルギーは膨大で、それを主砲に供給できはします。でも、主砲が耐えられても周囲が耐えられない! パイプなどがそうです。もしかするとリアクターや主砲だって、暴発で無事ではいられないかもしれない! だから、こうして俺が必死こいて作業してるんです!」
『それは整備科と砲雷科の仕事だ』
「………大勢の部下を失いたいんですか?」
『なに?』
俺は再びモニターを凝視した。すべての動きを止めて。
「………確かに、俺なんかじゃ、一人前の整備士じゃない俺なんかじゃ、こんな間に合わせくらいしかできませんよ。でもね、救えるんだったら、俺は救いたい。この数ヶ月で、俺はみんなが大好きになってしまいました。艦長。あなたもね」
『な、なにを言っている!?』
「おやっさん率いる整備科のひとたち。アーレスさん率いる砲雷科のひとたち。シドウ少尉。パイロット。予備パイロット。同級生、後輩の整備士見習い。レイシアさんたち軍医。炊事兵のひとたち。みんないいひとだ。まだみんなと話したわけじゃないけど、俺は誰ひとりとして、失いたくない。守りますよ。なにがあっても」
『………きみは、あえて道化を演じていた、と?』
「さすが艦長。勘が鋭いですね。おっと、時間がなかった」
ここで俺の最近のすべて演技だったと気付けるのは、さすがだ。
動きを再開する。ふたつのサブコンソールをすべてケーブルで接続し、レイライトリアクターを包む外部装甲に防護ネットを被せる。通気性に優れているため熱が篭ることはなく、そして外部からの衝撃に強い。
次の防護ネットを特定のパイプに巻いていく。
記憶をたどり、原作第7話で最初に爆発した場所から順にピックアップしていた。
『クソガキ………い、いや、エース! お前、なにしてんだ! 道化になるって、それじゃお前、最初から俺らのことをあえて騙してたってのかよ!』
通信にカイドウも割り込む。
「なんて説明すればいいんですかね。………ま、騙したのは確かですよ。俺が今やってる作業、おやっさんならわかりますよね? そうです。爆発するであろうパイプの補強………なんてことにはならないけど、少なくとも破片はこれで飛ばない。レイライトリアクターも無事でしょう?」
『テメェ、最初から暴発するって前提で行動してたのか!? だったら今すぐやめろ! 飛んでくるのは破片だけじゃねぇ! 炎がそこを包み込むんだぞ!』
「消火装置が作動して、レイライトリアクターを燃やすまでには至らないでしょ?」
『馬鹿野郎! そこの消火装置は泡や粉なんかじゃねぇ! 二酸化炭素だ! どちらにしてもお前が死ぬぞ!』
前世で短期バイトをしたパン工場にもあったな。重要な機械が密集する区画は、消火装置が二酸化炭素を用いているから、作動する前には必ず誰がいないか入念にチェックしてから使えというマークと注意書きが。
レイライトリアクターがあるということは、ここもそうだ。巨大な炉に泡や粉なんて吹きかけたら大変だ。二酸化炭素なら手っ取り早い。リアクターのダメージも最小限で済む。
「問題ありません。防護服を着ます。それより艦長! 主砲の発射を! 回転数も上昇して、あと少しで撃てる状態になります! 今ならEタイプとまだ距離があるし、ここには俺しかいないから損害も出ない! この機を逃したら、グラディオスはアンノウンに堕とされます!」
『………きみは………そこまで………わかった。主砲、発射準備』
『クランドォッ!!』
『ここはエース・ノギに賭けるしかあるまい! この艦を失うわけにはいかんのだ!』
感情的になるカイドウを、クランドが怒鳴りつけて黙らせた。
リアクションありがとうございます!
またもやギリギリでした。つ、疲れてきた………。
ですが7回と宣言したからにはやり遂げたいです。次は19時に更新します!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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