主砲を撃てB10
「パイロットは集合! ここでミーティングを行い、整備士たちがガリウスを起動させ次第搭乗、出撃する!」
パイロットはすでにノーマルスーツを着用していて、幸いなことにいつでも出撃を可能にしていた。今日は元々、演習に出る予定だったからだ。スケジュールが崩壊して敵襲を受けるのも初めてではない。むしろ慣れていた。
シドウの集合に応えるソータたち。なんとも言えない面持ちをした6人を、見送った。
みんな俺に失望したかな。………ごめんな。予定通りなんだ。
「エー先輩」
「うん?」
「なんで………こんなことをしたんですか!?」
愉快犯みたいな真似を、ってことか。アイリは憤りながら掴みかかる。
「みんなエー先輩のことを信じてたのに!」
「もう、信じられなくなった?」
「信じられるだけのひとじゃ、なくなりました!」
「そっか。うん。いいよ、それでも」
「ちょ、ちょっと!」
アイリの頭を撫でると振り払われる。
「ヒナにもこんなこと言ったっけな。嫌ってくれてもいいよ。アイリを守れるなら、それでいい。俺を信じなくていい。代わりにソータを信じてやりな? 俺は、お前とソータが仲良くしてくれるのが一番嬉しいんだ。そのためなら、俺はなんだってやれるよ」
「意味がわかりませ───」
「なにやってんだアイリィ! そのクズ野郎の代わりに、お前が今日からドローンカメラのパイロットだ! 仕事しろ! それからテメェはこっちだ!」
「いてて」
カイドウに蹴り飛ばされて、アイリが遠くなる。
「おやっさん。もうちょっと優しくしてくださいよ」
「うるせぇ! もうテメェなんざ信じやしねぇ! ついに本性現しやがったな! 化けの皮が剥がれた今、テメェに居場所は無いと思えや!」
胸倉を掴まれて、隔壁まで投げられる。
「………おやっさん」
「………マジで意味わかんねぇよ。エースッ! テメェ………自分がどんな立場にいんのか、本当にわかってんのか!? なんだよその目は………必死こいてるわけでもねぇ。命乞いしてるわけでもねぇ。なんでっ………そんな冷静な顔をしてられるんだよ!? 頭どうにかしてんじゃねぇのか!?」
「迷いはありません。………ここにいるひとたちを守るためですから」
「ざけんな………ハルモニ。エース・ノギから、お前の行使権限と移動権限を剥奪。どの部屋にも入れるな。監視カメラをフルで使って観察。移動の都度、俺に報告しろ」
『イェス。マスター・カイドウ。メカニック・エースから私の行使権限の一切を排除します。以降、移動を制限。監視を続行します』
俺の端末からハルモニが消える。確かに、これでもう好き勝手はできなくなった。
ちなみに端末は取り上げられなかった。装着していれば位置情報は掴めるからな。狭いようで広い特殊宇宙戦艦だ。逃げ場はない。
「………テメェは光るなにかを持ってると思った。それを、俺は希望だって、勘違いしてたんだな。テメェはそんな器じゃなかった。………こんな思いするくらいならよぉ。出会わなけりゃよかったぜ。いっそのこと、あのプロトタイプと一緒に消えればタキオンなんぞ………」
「………タキオン? え、おやっさん。タキオンって言いました?」
「テメェにゃもう関係ねぇ」
「待ってください! タキオンをどこで聞いたんですか! あ、ちょっと………おやっさん! おやっさん! ………クソ!」
とても悲しそうな顔をするカイドウに、ついに隔壁の向こうに投げ飛ばされる。
閉まった隔壁を開けようにも、整備士でもパイロットでもない俺は、もうドッグに入れない。どれだけ隔壁を叩こうと、カイドウは応じはしないだろう。
「タキオン………アリスランドの、あの子の愛機の名前。オリジナルガリウスを、なんでおやっさんが知ってるんだ?」
グラディオス級二番艦、アリスランドは第2クールで敵対する。
そこから出撃した漆黒のガリウス。ソータを苦しめることになる。
神経接続と加速を可能とし、ソータの駆る一号機を翻弄するのだ。そしてハーモンがソータ救出のため乱入し───死ぬ。
まさに悪魔の代名詞。壊れかけたソータを完全覚醒させる要因にもなった。
「なんでプロトタイプとタキオンが関連してるんだ? クソッ………意味わからねぇ。こんなの考察勢も考えもしなかったことだ。………いや、待てよ? ケイスマンだとしたら………ハァ、チクショウ。そういう関連性かよ。じゃあ、なにか? 俺はタキオンの材料というか、当時は入手不可能だった、もっとも近道になる材料をグラディオスに連れ帰ったってことか!? ………はは。なんて偶然だろうな。俺も選ばれてたってわけかよ」
またひとつ、歯車が合致して回り出す。ギャリギャリと歪な音を立てながら。
だが今は、そんな感傷に浸っている場合ではない。
ドッグから移動する。どこか、戦況が見える場所に行きたかった。展望デッキはダメだ。第一警戒態勢に以降した時点で、外側から覆うようにシャッターが閉ざされる。
ならばと、かなり進んだ先にある壁のコンソールにアクセスした。ハルモニが取り上げられ、移動権限が制限されただけだ。まだ軍籍はある。俺のIDで小さなモニターが応答して、艦に設置されたカメラのひとつが反応。モニターに映す。
『ドローンカメラ発進します! 続いて、ミチザネ小隊も発進位置へ!』
艦内放送も忙しない。いつもはコクピットブロックから見ていたから、他の場所で戦場を体感すると妙に緊張する。………いや、原因は他にある。今はまだその時ではないから、しばらくここに留まる必要があった。どうせ監視が継続している今は放置されるのだし、
『アンノウン布陣、奥より敵主力出現! Eタイプの全長は250メートル!』
グラディオスの全長は約300メートル。乗組員は168名プラス学徒兵27名。あとは志願しなかった民間人9名。
これを見た全員が度肝を抜いた。かつて視聴者だった俺もそうだ。
Eタイプは100メートルほどの超大型アンノウンという予想が外れ、250メートル級の敵の移動要塞だったのだ。
『Eタイプより続々とアンノウンが射出されています! Bタイプの数………40を超えます!』
酷い数だよな。前よりも酷い。
『第一波、ミチザネ小隊と接触! グラディオスは戦闘態勢へ移行!』
『戦術システムにリンク! 各砲門開けぇ! 撃てぇ!』
デーテルの号令も緊張の色が濃い。
ビームとミサイルがアンノウンに命中する。クランドの指示でEタイプにも照準を合わせているはずだ。
しかし、
『全弾命中! しかし………Eタイプは未だ健在!』
ここは原作どおりだな。
よし。
やるか。
「ハルモニ。バックアップデータ起動。ウェイクアップ」
『───イェス。メカニック・エース』
俺の端末で、ハルモニが再び起動した。
3回目!
ここからです。エースがやらかします!
またストックを消費してしまったので大急ぎで書いております! この勢いを維持するためにも応援よろしくお願いします!
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