主砲を撃てB06
「エー先輩!」
ドッグはガリウスの出撃準備で、いつもと変わらぬ喧騒に包まれた。
俺はプロトタイプガリウスGの、剥き出しとなったコクピットブロックまで跳躍すると、そこにはアイリがいた。
「アイリ? どうした」
「おやっさんが、エー先輩の操縦を見ておけって」
「おやっさんが? へぇ。そりゃまた。いいよ。後ろで見てな」
「はい!」
アイリも整備士見習いとして、板についてきた。その証左として、カイドウをおやっさん呼びできている。最初は抵抗があったようで「カイドウさん」や「主任」と呼び、カイドウもむず痒そうにしていたっけ。
俺がコクピットブロックに登場すると、アイリは事前に自分で後ろに取り付けたであろう簡易的なサブシートを展開し腰を下ろす。そんなに広い場所ではないから、身を乗り出して、俺の顔の横からメインモニターを覗いた。
オンラインでのミーティングも参加して、いよいよ俺の出番。
「エース! 5番から8番出すぞぁっ!」
「いつでもどうぞ!」
カタパルトにひとまとめにされたドローンカメラが搭載される。いつものようにクレーンで運ばれていった。
その時点でコクピットととのオンライン接続を開始し、不備がないかチェック。5、6、7、8番のバーニアの稼働を確認。エンジンを起動。メインモニターが四分割され、操縦桿の親指の近くにあるダイヤルを回して瞬時に操作を切り替える。
「うわぁ………イリス先輩の10倍は速い。それでいて、ひとつも操作に間違いがないし、躊躇いもない………すごい」
「慣れればこんなもんだ。俺だって最初は、1機だけでも苦労したよ」
「慣れれば4機同時にいけるんですか?」
「今なら5機いけるね」
『メカニック・エース。5機の同時操縦は推奨されていません』
「うるさいよハルモニ。指示を出すまで黙ってな」
『イェス』
「ふふ」
ハルモニとコントじみたやり取りも増えた。俺の性格をディープラーニングした成果かもしれない。お陰でアイリの笑顔ゲットだぜ。
「アイリ」
「はい?」
「なんで、おやっさんから俺の見学をしろって言われたと思う?」
アイリを見学させるのは構わない。
むしろ、アイリには適正がある。こういう役目も卒なくこなせるほどの。
だが、それをやるには、そう遠くない未来で発生するあの事件が必要だった。
それはどうしても回避すると決意した手前、どうしてもカイドウの采配が理解が及ばない。
「………わかりません。急にやれって言われて。でもこういうの、イリス先輩の方が得意なのに」
それは違う。イリスは器用なだけだ。実際の才能と適正でいえば、アイリの方がダントツに高い。
空間認識能力というべきか。この前の、俺が無断出撃その2をやらかした時。困惑するイリスを助け、瞬時にコンテナの射出ポイントを見抜いた。予兆というのかな。アイリは確かに持っていると確信した。
「アイリは、パイロットだったけど………整備士に配属されて、悔しかったよな」
「でも今は、みんなと一緒に戦っているってわかりましたから。エー先輩のお陰で、ソータと話す機会も増えましたし」
「そりゃよかった。………もしかしたら、おやっさんは………俺の代わりにアイリにここに座ってほしいのかもな?」
「え、なんで? ………じゃあエー先輩はどこに行くんですか?」
「うーん。そうだなぁ。七号機以降のナンバーズにでも乗るかな! あっはっは」
「無駄話ばっかしてんじゃねぇぞエース! それから、お前みてぇな問題児にナンバーズをくれてやれるかよ! 馬鹿言ってんじゃねぇ!」
怒られちまった。相変わらずの地獄耳。
………でも、アイリにここを託せと言われたら。
俺はきっと、喜んでアイリに席を譲る。
第7話「主砲を撃て」のBパート終盤。目を背けたくなる、大勢の死傷者を出した事件があった。
そのなかにアイリがいた。
大勢が積み重なる、死屍累々の地獄絵図。その下で血を流すアイリ。
させてたまるか。
ソータとアイリのカップリングを成立させるためにここにいる推し活の申し子を舐めんじゃねぇ。
ヒナだって助けられたんだ。俺がアイリを助けられないはずがない。なにをしてでも助けてやる。
「………エー先輩? もう出られるって。エー先輩、聞いてますか?」
「あ………悪い。次はどのロッカーにソータとお前を詰め込んでやろうかって考えてた。出よう」
「ちょ、ちょっと!?」
「ハルモニ。カタパルトを射出」
『イェス。メカニック・エース』
「エー先輩ッ!」
「そう喜ぶなって。ロッカーが嫌なら、俺の部屋貸すから」
「そういう問題じゃ、ありません!」
そういう問題なんだよ。
アイリはパイロット適正がないから整備科に配属された。そしてソータと何度もすれ違い、あの事件のあとで本格的に相互理解が不能になるほどの溝ができたのだ。
だったら───なにがあっても、ここから動けなくなるよう、ドローンカメラのパイロットにしてやるのが一番だ。
「アイリ。今から全力で教えるから。何度だって質問していいから。間違ったっていいから。間違ったって俺は怒らないから。覚えられるだけ覚えるんだ。いいな?」
「っ………はい!」
カタパルトがドローンカメラを射出する。実際に搭乗したわけではないため、内臓が潰れるくらいのGが全身を襲わない。
やることはいつもと変わらない。操縦桿のダイヤルを回しながら4機を順番に操作して、飛ばしたいところに飛翔させる。
「わかるか? アイリ。コツは───」
「自分を人間だと思わないこと………」
「え?」
「自分が4人………違うか。4つの目で全体的を見ている。自分のなかに4人の人格を作る。………そうか。エー先輩はそうやって切り替えているんだ」
なかなか独特の感性をしているじゃないか。
でも、その感性がなければ、あの機体も完成することはなかったのだ。
懸念すべき点はここにもある。
天破のグラディオスの作中において登場する最強の機体が製造される過程だ。
様々な悲劇が連鎖することで壊れていくなにかがあったが、人間は絶望から這い上がろうとする胆力を秘めているのも確かで、アイリもそこに一役買うのだ。そして山のように積み重なる犠牲の上に、ソータの覚醒が最後のキーとなり、カイドウがオリジナルガリウス「イレイザー」作り上げる。
アイリに襲い掛かる悲劇がなければイレイザーは完成しないかもしれない。
その時、グラディオスはアンノウンに勝利できるだろうか。
たったひとりの少女を選ぶか。
世界の存亡を選ぶか。
俺は再び、最大の葛藤に苛まれることになるだろう。
さっき思い出しました。この作品を更新し続けてから1ヶ月が過ぎていました。
これまでにない勢いで更新したこともあり、PVなども上昇しており、毎回下位ではありますがランキングに載っており、是非とも多くの方々に応援していただきたい所存でございます。
ラストは21時頃を予定しております! 良い調子だったのが下がり気味になってきましたので、書き溜めるモチベ向上のため皆様からガソリンをいただきたいと思っております。よろしくお願いします!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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