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コロニー崩壊B03

「………謝罪はせんぞ」


 まぁ、そう言うだろうなとは思った。


「もちろんです。あなたはご自分の仕事をした。それだけでしょう」


「………物分かりが良すぎるな。本当に………学生なのか?」


「ええ、ご覧のとおりです。二年生のエース・ノギと申します。何卒よろしくお願いします」


「………シドウ。シドウ・ミチザネだ」


 この世界においても握手は全世界共通の挨拶だ。


 脇腹の痛みを押し殺し、笑顔でシドウと対面しながら右手を差し出す。まだ怪しまれていたが、シドウは訝しみつつも握手に応じてくれた。パイロットスーツのグローブ越しでもわかる、ゴツゴツとした鍛えられた手だった。


 うはぁ。と危うく叫びそうになった。危ない危ない。シドウに触ってしまったと心のなかで感激した。


 シドウ・ミチザネといえば、天破のグラディオスにおいてソータに並んで人気なキャラだ。主に女性たちから。腐女子の方々から。シドウは立場的にソータたちと対立するのだが、和解してからの絡みはそれはもう多くなり、女性ファンの心を掴んだ。年齢でいえば一回り上なのだが、それがまたたまらないとか。


 ハーモンを拘束してからの印象は最悪なもので、高圧的な軍人以外のなにものでもない。だから俺が操作する必要があった。


「クランド艦長。お話は了解しました。任務中であるなら、学生である俺たちに具体を説明する必要はないと考えます。そちらの事情を全面的に優先していただいても構いません」


「………申し訳ないが、そうさせてもらう」


 クランドもシドウ同様に訝しむ目を向けてきたが、それはそれで構わない。今はクルーの視線を俺だけに集めることが目的だ。


 まったく。小此木瑛亮だった時代はこんな大立ち回りなんぞしたことがないのに、エース・ノギになってから率先して貧乏くじを引くようになるとは。これからは発言の矛盾が少しでも露見すれば命取りだ。


「遅れましたが、この度は保護していただき、全員を代表して感謝します。クランド艦長」


「………ああ。民間人の保護は、我が軍の根幹である。当然のことをしたまでだ」


 クランドの目つきが変わる。ほんの少しではあるが、警戒が解かれた………ような気がした。


 理由は、クランドのプライドから来る───なんというか、他人から勘違いをされてでも民間人を守るべきだという固定概念だろう。


 アニメ本編を振り返ってみれば、クランドが誰か、特にソータたち新参者から感謝された描写はまったく無いのだ。辛うじてあるとすれば、第2クールの終盤に、生き残った者たちから「あなたがグラディオスの艦長でよかった」と賞賛された時か。


 帽子で隠していたが、口元は嬉しそうに吊り上がっていた。


 それが、本編ではハーモンの拘束を経て軋轢が生じ、誤解が増していくばかりだったから、こんな早期で当然といえば当然の感謝を述べられて、クランド自身も驚いたのだろう。


「質問を、いくつかしても?」


「時間が許す限り。しかし手短に頼む」


「はい。まずひとつ。我々の待遇についてです」


「ふむ。だろうな。………諸君らは、このグラディオスが保護した難民だ。規定に従って食事と寝床は用意できるが、四人でひとつの部屋を使ってもらう。また、一般人に公開できる情報は無いため、移動も制限してしまう。………諸君らは学生だ。親元をしばらく離れて過ごしてもらうが、許してほしい」


「食事と寝床さえ用意してもらえるなら十分です。しかし、地球の極東にはこんな言葉があるのはご存知ですか? 働かざる者食うべからず、と」


「ジャパニーズの言葉だな。このシドウもジャパニーズの血統だ。………なにが言いたい?」


「仕事を与えてもらえれば、と」


「なんだと?」


「いつ到着するかもわからない、どこにあるのかもわからないコロニーに着くまで、かなりの時間があるでしょう。少なくとも俺は、食って寝るだけの()()になるつもりはありません」


「………民間人が。学生風情が、軍隊の仕事の一端を担えるとでも? とんだ思い上がりだ」


 そうそう。こういう差別的な発言が、ハーモンを中心として反骨精神を植え付けたんだ。


 これは次の話で出る話題だが、今出してしまっても問題ないだろう。むしろヒナたちに楽観的な憶測を与えるより、現実を見せつけた方がまだマシだ。クランドは発言を誤っただけで、間違ったことは言ってないのだから。


 俺だってもし、小此木瑛亮の時代に大学を中退し「自衛隊に志願します!」だなんて言えば、両親はなんて言うだろうか。まだ年齢的には遅くないし、そういう志を持って入隊する者もいるはずだ。けど俺のように自堕落を極めようとした奴が、いきなり血迷ったことを述べれば母親は感心するだろうが父親は「そんな生半可な気持ちで自衛官が務まるものか、この阿呆が!」だなんて怒鳴るに違いない。絶対そうだ。俺だってそう思う。


「一考の価値はあると思います。ここにはパイロット科の生徒もいます」


「馬鹿馬鹿しい。妄言も大概にしたまえ」


「………このガリウス、誰がパイロットになるんですか? この艦のクルーですか? ………不躾なことを申し上げますが、見当たりませんね。シドウさんだけのようですが」


「知ったようなことを」


 うん。ごめんねクランド。俺、全部知ってるんだ。


 舞台裏でしかなかったケイスマンのドッグに積まれた死体のすべてが、俺が運搬した新型ガリウスのパイロットになるはずだった者たちだって。


 本編では、その穴を埋めるべく民間人であるソータたちを徴兵して、パイロットにした。ネームドキャラクターは九割がパイロットになり、あとの一割と名も無きモブは全員が整備兵となる。


「もちろん、すぐにとは申しません。今のは総意でもありませんし、そういった選択肢もあると後輩たちに示したかったので。もし艦長さえよろしければ、お考えいただけると幸いです」


「………考えはする。だが、そうなる可能性は極めて低い」


「承知しております」


 やれやれ。多少は端折ったが、これで問題はないはずだ。


 すべては諍いなく円滑に進めるために。俺はあえて泥を被ることを選んだ。


あけましておめでとうございます!

今年はなにか伝説を築くべく、努力し、邁進して参ります!

本日から仕事が始まるのですが、予約するなりして複数回更新していければと思っております。


作者からのお願いです。

皆様の温かい応援が頼りです。ブクマ、評価、感想、いいねなど思いつく限りの応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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