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主砲を撃てB05

 レクリエーションルームの壁は厚く、防音性に優れていて、ライブをしても外に音が漏れることはない。ゆえに半乱闘みたく吠えても周囲には察知されない。


 崩壊しそうな人間関係。なぜか俺が中心にいて、果ての見えない争奪戦で繰り広げられる攻防。これはこれで良質な心理戦の練習になりそうではある。


 ソータがずっと俺を抱えていたので一歩リード。女子は三つ巴の戦いに発展。たまにハーモンとコウが参戦。じゃんけんでいうあいこ状態が50回連続で続くような不毛な時間が続く。


 収集がついたのは、なぜかツヤツヤとしていたレイシアと、隠そうとしてたがどこか疲れている様子のシドウがレクリエーションルームに入ったからだ。


 ははーん。さてはこいつら交び………いや、なにも言うまい。


 やったねレイシアさん。ヒナの発破が効いたらしい。いったい、なにがどうなってそんな結果になったのか過程を知りたい。いっそのこと、いつものセクハラの報復として、過程をレポートにして報告してもらおうかな。後学のためとか言ってね。


 疲れ気味なシドウは口煩く言わなかった。無口で感情を面に出さない性格ではあるが、今日はいつにも増して口数が少ない。どんだけ搾られたんだ? シドウとレイシアのカップルも推している俺としては嬉しいところだが。


「はいはーい。みんな落ち着いたみたいだね。でもそれ以上やるとなにか壊しそうだし、もうお部屋に帰りなさーい。エースくんは定期検診の時間でーす」


 レイシアは機嫌がいい。ソータに抱えられていた俺をパッと奪うと、部下をシドウに押し付けて、レクリエーションルームを出てしまった。


「レイシアさん」


「なぁに?」


「おめでとうございますって言った方が、いいでしょうか?」


「………目敏い子だねぇ。わかっちゃう?」


「まぁ。ある程度は」


 無重力区画だからって、俺を片手で懸架するレイシアは、とてもご機嫌。


 しかし、だからと言って健診に妥協はなく。「また無茶しようとしてるでしょ?」と見抜かれた。


 ちなみにその日の夜もヒナは俺の部屋を訪れることはなかった。


 お預けの日々は続く。唇や舌にヒナの感触が残っており、悶々としながら強引に寝ようとしたが、数時間は寝られなかった。






 あれから3日が経過した。


 主砲見学ツアーその2を経て、俺は顔パスで主砲のある区画に入場が許された。


 今はパイロット科に属しているとはいえ、元は整備科。学生だった頃とは真逆だけど、アーレスたち砲雷科の人間が俺を気に入ってくれているゆえ、すぐに認可は降りた。むしろアーレスの推奨付き。クランドも首を横には振るはずがない。


 仕事が増えることに充足感を覚える。ビームシールドの設計の時からこんなものだった。パイロット、整備、砲雷と3つを兼業することで、やっと心が落ち着く。


 レイシアにはまた咎められた。「またぶっ倒れたいの?」だってさ。


 そう、ぶっ倒れるくらいの覚悟で、やらなければならない。


 俺はあの事件を回避するために砲雷科と行動を共にする。悔いはない。体がどうなろうとも。


 アーレスがいれば直接ご教授してもらう。主にメインコンソールの使い方。サブコンソールの操作も同時並行で。多くを知ることができた。


「砲雷長」


「アーレスでいいよ。エースくん」


「アーレスさん。やっぱり疑問に思ったんです。3つのコンソールを繋げてしまえばいいって」


「以前、カイドウとも話していたっけ。でもそれは難しいと、結論が出たはずだよね?」


「しかし、やれないこともないはずです。リスクもありますけど。例えば有線で繋いでしまえばいい。そうすればメインコンソールで同時に制御ができるはず」


「うん。やれないこともないね。でもさ、それだと………例えばレイライトリアクターの回転数が暴発ギリギリまで上昇させられたとしても、様々な制御を一挙に担うことになるんだよ? 人間史始まって以来、我々人間の腕は2本しかないのだから。目もふたつ。エースくんのやりたいこともわかるけど、通常の人間じゃ、目を6つと腕を6本携えていなければむずか難しいというか、ほぼ不可能だよ」


 コンソールでの作業は緻密にして素早く行わなければならない。


 例えば、とある工場で3つのラインがあったとして、そのオペレーターをひとりで担うようなものだ。しかも3つは互いに横幅があり、不備が生じれば走らなければならない。ラインは高速で物品をベルトコンベアーで運んでいる。同時に3つを管理することなどできるはずがない。


 前世ではパン工場で2週間だけバイトをしたことがあるからわかる。ひとつのラインだけでも目が回るくらいだ。


 それ以上の難易度が要求されているのだ。俺の提案は。


「………暴発を遅らせる方法って、ありますかね?」


「そもそも暴発前提で考えるのがおかしいと思うけど?」


「仮にですよ。今後、それくらいの敵と遭遇するかもしれない。例えば………Eタイプ」


「噂によると、全長100メートルを超える巨体だったね。確かにそれは、主砲以外に考えられない。質量が異なる。いかに最新鋭の第七世代ガリウスGでも、そんな巨体を相手にしようとも、ビームも実弾も通り辛いだろうね」


 そのとおり。Eタイプは、()()()()()主砲以外に攻略の手口がないのだ。


 後に有効とされる攻撃手段として、ソータに専用のジャケットが製造される。もちろんカイドウに通達済み。


 今は間に合わないため、是が非でも主砲に頼る他ないだけだ。


「………例えば、ガリウスだと冷却装置が作動するよね。確かタイタンジャケットだっけ? 凄まじい冷却だとか」


 いい線いってる。答えはすでに出ているようなものだ。あとで必ずカイドウがここに設置する。


「ここにも冷却装置があるじゃないですか。増設するって手段も可能だと思うんですけど」


「強引に取り付けることはできるよ。でも冷却ばかり優先してしまっては、せっかく回転数を上げたところで得られる出力も低下する。その微々たるバランスを考えなくてはね」


 機械というのは便利だが、時として不便な面も併せ持っている。


 極端に言えば暖房だ。


 前世では俺が一人暮らしをしていたボロアパートに取り付けられていた空調装置があるが、冬になると苦労する。室外機が冷えて温風を送れなくなる時がしばしば。


 レイライトリアクターも同じだろう。せっかく生産できたエネルギーを無駄にしてしまう。エネルギーとはつまるところ熱だ。人間でいう体温と同じ。冷えてしまっては体調不良になる。


 そうなると、解決の糸口はやはり───


「………むっ!」


 アーレスが顔を上げる。艦内にアラートが鳴り響く。敵襲だ。


「すみません。出番のようなので行ってきます!」


「ああ。気を付けるんだよ。副隊長」


 幸いなことに主砲とドッグはかなり近い。パイロットの更衣室に飛び込んで、ノーマルスーツを着用してドッグに飛び込んだ。


5回目です。今日はいいペースで書けています。

次回は19時頃を予定しております!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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