主砲を撃てB02
「さて、見学ツアーだったね。よろしい。ここからは私も同行しよう」
「お願いします」
ここからが肝心だ。一言も聞き逃せない。
「きみも知ってのとおり、レイライトリアクターは今や、グラディオスに無くてはならないものだ。カイドウたち整備科が取り扱っているガリウス。そして機関科が管理するメインエンジン。そして私たち砲雷科が管理する主砲。大きくわけてこの3つに絞られる。元はガリウス用に製造されたものを巨大化させて、メインエンジンにしたり、主砲の動力源としているからね」
「レイライトリアクターがあるから、これだけ巨大な艦を動かせるんですね」
「そのとおり。電力などもそれで賄える優れものさ。旧時代的な熱核エンジンにも劣らぬ生産性を秘め、そして………時としては同等のリスクもある。ご覧よ。この巨大なレイライトリアクターを。レイライトブラスターを放つために強引に作ったんだ。小型化すれば出力も安定するけど、巨大化させただけでこれだ」
アーレスが手で示すのは、主砲の心臓部。ガリウスの何倍も巨大なレイライトリアクターだ。
レイライトリアクターは円形で、ガリウスには縦に胸に装填されているが、主砲のそれと、機関室にあるエンジンは横向きで設置されている。
「時代の産物。人類の進化に伴うように生まれた代名詞にもなり得るもの。それがレイライトリアクターだ。巨大化させればさせるほど出力は大きくなるけど、一定の量を保つなら問題はないが、一気に出力を上げると不安定になってしまう傾向にある。機関室のエンジンならともかく、主砲に転用するには、まだ早かったのかもしれないね」
遠い目をするアーレス。それでも瞳は悲観していない。
どちらかといえば、ワクワクしているような。
「私はね。そんな危険な代物でも、きっと安定して運用してみせるよ。主砲だろうとなんだろうとね。ああ、すまないね。話が逸れてしまった」
「こいつはたまにスピリチュアルなロマンチストになるのがな。面倒だったら聞き流していいぞ、エース」
「酷いなぁ、カイドウは、スピリチュアルなロマンチストという表現は好きだけどさ」
大熊が照れたように頬を掻く。なんだか可愛く見えてきたぞ。
「ここまでで、なにか質問は?」
「一気に出力を上げると不安定になると仰いましたけど、その具体は?」
「うん。主に暴走だね。ガリウスでもそうだろう。中破したガリウスはレイライトリアクターから供給される膨大なエネルギーを垂れ流している状態だから、まず停止させなきゃいけないんだ」
「それはお前も覚えがあるはず………って、そういやあの時、お前気ぃ失ってたな」
ヒナを助けるために無断出撃をした時か。
確かに気を失っていてなにも覚えていないが、整備士としてガリウスに多く触れた経験がある手前、どんなものなのかは予想ができた。
聞けば、アンノウンに接近したせいでプロトタイプガリウスGがシステムダウンしていたらしい。しかしレイライトリアクターの回転というのは、自動車のブレーキと違って、踏んでも数秒でタイヤが止まるものでもない。ゆっくりと回転数を落としていくしかない。さもなくば暴発する。
「強引に回転数を上げると暴発する………そうか。問題は内部ではなく、エネルギーを押し込めるための外装、つまり外部にあるんですね?」
「すごいね。はは、それをすぐ言い当てられるとは。さすがは整備士兼パイロットだ。そのとおり。巨大化させたレイライトリアクターを制御できるほどの外部装甲が、実は不十分でね」
「なら………おやっさん。作らないんですか?」
「バッカ野郎。それこそお前、こんなバカデケェもん作ろうとすりゃ、ガリウスの何倍デカい上半身が必要になると思ってんだ? この部屋なんざ突き抜けるぜ。整備もあったもんじゃねぇ」
ところがどっこい。カイドウはそれさえも解決するんだな。第2クールではあったけど。
答えはジャケットだ。ハーモンの三号機と、最近になってやっと製造されたコウの四号機に備えた、タイタンジャケットが答えになる。
アンノウンという高熱の生命体を至近距離から受け止めるべく、俊敏性を犠牲にしながらも防御力を上げたそれは、冷却剤を多用している。カイドウはそこに着目し、ある一定のラインを超えても熱で暴発しないように、2機分の予備のジャケットで挟んで解決した。
なら、それで問題は解決した───と思いきや、そうではない。
現段階で予備のタイタンジャケットはない。作ろうにもグラディオスがそこまで進化していないし、なにより製造部のラインは、すでにパピヨンジャケットの製造に入っている。今さらもう2機追加でタイタンジャケットの予備を作れるはずがない。間に合わない。
冷却剤という案は悪くないが、ビームシールドの設計のような時間がかかるのも確かだ。カイドウを説得できても時間が足りない。
ならば、根本的な解決策を探るしかない。
「わかりました。ありがとうございます」
「勤勉な子は好きだよ。では次に行こう」
次にアーレスが案内したのは、巨大化したレイライトリアクターを制御するメインコンソールだ。
「これがなんなのか、すでにデーテルのクソガキ………コホン。失礼。副艦長から説明があったそうだね」
「はい。ゴキブリを飼いたいとかいうわけのわからない思想をしている副艦長から聞きました」
「ゴキブリを飼う? ………なに考えてんだ、あの阿呆。所詮はボンボンか。見たことないだろうから、そんな頭おかしいことが言えるんだろうね」
ヤバい。アーレスが面白い。仲良くなれそう。
「地球に降りたらプレゼントしてやりません?」
「いいね。部屋で飼ってもらおう」
「ガッハッハ。そりゃいい。だがその場合は奴の部屋をダクト含めて密封しねぇと、艦に被害が出るぞ。………って、おい。エース」
「すみません。脱線しました」
カイドウもノリがいい。デーテルが嫌いだから、悪口大会が盛り上がる。近くにいた整備士たちも吹き出したくらいだ。
「カイドウ。彼、面白いね。銃殺刑にしなくて本当によかったよ。気が合いそうだ」
「やらねぇぞ」
「ちぇ。………まぁそれは置いておいて。このメインコンソールで、レイライトリアクターを制御するんだ。でもこれだけの規格だからね。どうしても両サイドにふたつ、補助を付けなければならない。人類は進化の過程で作り出したメギドの火を完全には御せていないのかもしれない。せっかく手にしたレイライトリアクターの真価を主砲で発揮できないのが残念なところだよ」
「わかりやすく言ったれや」
「そうだな………中央で回転数の制御。左右で温度調整。ざっくり言えばこんな感じかな」
「ざっくりし過ぎだろうが。………まぁ、間違ってはいねぇ。けどなエース。言うのは簡単だが、やるのは想像の100倍は難しいと思いやがれ。お前の手に余る代物だ」
「………うーん。でも、ハルモニに手伝ってもらえればなぁ」
「バカ言え。それができんなら、俺がもうやってらぁ」
だよな。高性能AIでもお手上げか。
参ったもんだ。さて、どこから手を付けたもんかな。
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