表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/200

主砲を撃てB01

 退院してから4日が経った。


 結局のところ、俺はお預け状態が続いて、発狂寸前に追い込まれていたりする。


 なぜかヒナは夜に俺の部屋を訪れなくなった。


 退院して、傷も塞がって、リハビリついでに職場復帰。その日の朝に食堂に向かえば、学徒兵と整備士たちとパイロットたちが大挙しており「退院おめでとう」なんて横断幕が作られていたり、大したプレゼントなどないが小さなケーキが用意されていたりと、誕生日でもないのに全員から祝福された。


 ヒナもそこにいて、真っ先に抱きついてくるかと思いきや、遠くで見て拍手しているだけ。


 あれ? と首を傾げる。また俺、なにかやらかしてしまったのでしょうか? と。


 けれど誰も怒ってない。ヒナが俺に怒ったなら、蜂起したように敵愾視するくせに。アイリも呆れていない。シドウも困った顔をしていない。レイシアはシドウの後ろで拍手しながら、たまにファックサインを出している。()()()のことだが。


 夢かと疑ったが、カップケーキはほのかな甘みを感じたし、夢にしては味覚も正常。


 その日の夜はヒナと悶着があるかもしれないと身構えていたのだが、来る気配はない。


 翌日も、さらに翌日も。で、悶々としながら仕事をするのだが、どうにも気が入らない。こっちがヒナに会いに行くのも怖いし。


 見かねたカイドウが尻を蹴っ飛ばしてきて「お前が見たかったもんを見せてやるからシャキッとしやがれ」と怒られた。


 もしかして、大好きな子に告白できない女の子を見守るために同伴する友人のようなポジションで、ヒナと俺を仲介してくれるのか? と期待したのだが、そうではなかった。


「じゃ、説明すんぞ」


「ぁーい」


「あ? なんだぁ? そのやる気のねぇ返事は。せっかくお前のための主砲見学ツアーその2だってのによ」


 4日もまともにヒナと会話できていないせいで、思考に影響が出ていたようだ。


 いかんいかん。と自分を律する。


 忘れてはいけない。


 これから起きる惨劇を。この展開は、まさしく俺の望んだものだ。


「コホン………失礼しました、おやっさん。お願いします」


「ぁんだ? 急にシャキッとしやがって。まぁいい。来な」


 俺の行動はすでに後戻りが許されないところまで来ている。ならば………今は特定の誰かのことに気を取られている場合ではない。これから起こる最悪のケースを回避しなければ、ソータは長く苦悩し、笑うことがなくなる。


 絶対に回避してやる。なにもかもを使ってでも。ヒナのこと、アリスランドのことは一旦忘れることにした。


 カイドウとともに主砲が搭載されているブースへ入り、ヘルメットを被った。


「デーテルの野郎に粗方聞いたんだろうがよ、あいつもあれで副艦長やってる身ではあるが、すべてを知ってるわけじゃねぇ。これから詳しいことを教えてやらぁ」


「お願いします。おやっさん」


 この主砲が搭載されているブースを管理しているのは整備科ではない。砲雷科である。グラディオスの編制のひとつだ。


 グラディオスの各火器を管理し、戦闘時は主砲含め機銃やミサイルなどを発射する。


 ドッグとは離れた場所で働く彼らだが、このレイライトブラスターも砲雷科の管理下にある。整備科はガリウスがレイライトリアクターを動力源としているため知識も豊富。共同という形でふたつの科が出入りしているのだ。


「お、いやがった。ぅおい! アーレス!」


「ん? おお、カイドウじゃないか。今日は………そうか。エース副隊長も一緒かい」


 カイドウが声をかけたのは、彼と似て非なる男だった。カイドウがドワーフのように低身長なら、アーレスという中年男性はオークかもしれない。全体的にでっぷりしているところは同じだが、皮下脂肪というより筋肉か。力士のような出立ちだ。


 思い出した。そう、アーレスという名前だ。ファンブックにあった。彼がそうだったのか。


 アーレス・ゼゴノワ。黒い肌をした、愛嬌のある笑みが特徴。


 よろしく。と差し出された手を握り、自己紹介をした。


「エース・ノギです。お世話になります」


「はは、ついにここまで来たか。探求熱心なお弟子さんじゃないか。カイドウ」


「探求熱心で済めば可愛い方よ。お前も見ただろうがよ。軍法会議でな」


 そう、アーレスは俺が銃殺刑に処されるところだった吊し上げ大会こと臨時の軍法会議に出席していた。


 砲雷長として。そして、


「ああ見ていたとも。あのクソ生意気な副艦長を黙らせることができて、スカッとしたね」


 アーレスは反デーテル派のひとりだ。あの会議で俺の罪状を減らしたクランドに反目せず、頭を下げたカイドウに納得して会議の終了を促した立役者。


「ようこそ、エース。私たちが誇りとするグラディオスの主砲へ。きみを歓迎するよ。きみの立ち回りは聞いてるよ。くく………今でも思い出すと笑えてしまうね。きみが最初にデーテルにかましたラリアットは愉快痛快だったよ。砲雷科の会議室で流したんだけどね。あの瞬間はスタンディングオベーションだったよ」


 なるほど。砲雷科でもよく嫌われてるってことだな。よく敵を作る副艦長だこと。


「きみは砲雷科でも話題になった。ジャイアントスイングなんて最高だったね。爆笑しなかった奴はいなかったよ。私も含めてね。だからどうしても無罪にしてあげたかった。部下にも頼まれて嘆願書までクランド艦長に提出したんだよ? 整備科の子たちが作ってたのを見た部下たちが真っ先にサインをしに行ってね。カイドウじゃ身内贔屓だから私が出したんだ。だからきみのことは、砲雷科も好印象なのさ。もし整備科をやめたくなったら私に言うといい。砲雷科で受け入れよう」


「はは、寝言なら寝てほざけやデブ」


「きみもひとのことを言えないくらいデブじゃないか。酷いなぁ」


 アーレスは温かいひとだった。ファンブックには「みんなのパパ」みたいな印象。とあったっけ。ただキャラクターの名称と短い紹介文のみだったから、こんな温厚なひとだとは思わなくて、嬉しくなった。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

毎日ちょこちょこと日間ランキングに載っています。探してみてください。

まずは1回目。第7話も後半です。徐々に騒がしくなってきます!

次回は7時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ