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主砲を撃てA09

 放送はまだ続く。


 アリスランドは航行こそ可能だが、ガリウスと人員を失ったとある。近隣の艦の支援が必要で、グラディオスは友軍の援助も視野に入れて動くのだとか。


 仮にもしここに、俺と同じ境遇の、異世界転生を果たした天破のグラディオスのファンが隣にいたとしよう。


 そいつはなんと言うか。決まっている。アリスランドに接近することこそが危険である、と。


「どうしたの? エー先輩。さっきからずっと怖い顔してるよ?」


「もしかしてアリスランドという艦まで知ってたんすか?」


 ヒナとハーモンが聞く。


「いや、詳しくは知らないかな。ケイスマン教授が、そんなこと言ってたなって記憶があるだけさ」


「そっか。教授が」


 ヒナたちはこれで納得してくれた。ケイスマンの最後を見届けた際、グラディオスに行けという遺言をともに聞いたし、すでに彼女らはケイスマンが軍部に所属していたことも知っている。


 そんなケイスマンに気にかけてもらっていた俺なら、アリスランドという艦も聞き覚えがあっても不思議ではないと判断してくれたのだろう。


 知っているのは、もっと残酷な真実だけだ。


 ただ、それをどうクランドに説明したものか。余計な口出しをすると怪しまれる。当然、すべてを語れたものではない。


 アリスランドには彼がいる。


 ソータだけには戦わせたくない、あの子が。


 それを思うと、どうも胸が締め付けられる思いだ。いや、胸だけでなく腹も急激に痛くなってきて───


「先輩っ! 血っ!」


「え? あっ………」


 シェリーに促され、視線を下に向ける。鼻から出血していた。それだけではない。ハルモニのバイタルチェックで、ドローンカメラでの無茶が過ぎた操縦と、無理に体を捻ったせいで脇腹の傷が開きかけているらしく、しかも勝手にレイシアにナースコールしやがった。


 ここではノーマルスーツを脱ぐこともできない。どうしよう。このままではレイシアに殺されるとあたふたしている間に、満面の笑顔と悪魔の瞳を宿したレイシアが降臨。有無も言わせてもらえずメディカルルームに連行された。


 治療ポッドで傷を塞ぐも、自室に戻ることはできないと診断され、入院を言い渡されると同時についにブチギレられた。本当に怖かった。


 けれどそのお陰で、ヒナとやらかしそうになった情事は回避。代償にレイシアはまた菓子と紅茶を大量に失うのだが、撮り溜めたシドウの画像を一気に提出すると、なんとか許してもらえた。







 エースが入院して1週間が経つ。治療ポッドの回数を増やすことで全治2週間というスパンを維持できた。つまりあと1週間で、問題児が檻から解き放たれる。


「奴め。主砲なんざ見て、なにしようってんだか」


 カイドウはその日の夜。勤務を終え、シャワーを軽めに浴び、汗とオイルが半分も拭えぬまま済ませ、連合軍から支給されるジャージに袖を通してからお気に入りのコニャックを開けた。そうでもしなければ、心の平穏を保てなかったのもある。


 デスクに酒瓶とグラスを置き、そろそろ心許無くなってきた氷を半分に割ったものに酒を注ぐ。軽めに一口。つまみはない。


 砲雷科の報告書と、整備士たちの報告書に目を通す。すでに主砲は撃てるまで回復していたが、レイライトブラスターと冠された砲の命である、膨大な出力を一気に生産するレイライトリアクターの調子がどうもよくない。


 撃てば確実にどこかが故障するのはわかっていた。きっとエースも、どうせそれを短期で発見し指摘する。


 その時、自分はどのように返答するのかを今から考えておく必要があった。もちろん問題点の改善も進めていく予定ではある。


「しかしエースの野郎も難儀しやがる。必死こいて作ったビームシールドの申請が、まさかアリスランドの方が先だったとはな。だが………アリスランドはどうやって作ったのかが気になるところだぜ。もっと早く申請してりゃ、エースにパテント料が支払われてただろうによぅ」


 そう。エースが懸念しそうな申請先はアリスランドだった。


 カイドウはアリスランドという二番艦の存在を知らない。どこで製造されたのかも。クランドも同様だった。


「………プロトタイプガリウスGの謎の反応、ありゃいったいなんだ? 機体がパイロットを選ぶ………ハッ。ケイスマンの野郎がそこまでロマンチストたぁ思えねぇ。俺よか合理性を突き詰めた野郎だ。ガキを悪魔に仕立て上げるくらいにゃ………チッ。どうも気になりやがる」


 コニャックを飲み干したカイドウは、次を注ぎながら新たなファイルを開き、ケイスマンの遺産に目を通す。


 日に日にグラディオスが誇る高性能AIであるハルモニが、このファイルを解読し、実用的なプランをピックアップする。それを目を通すのもカイドウの日課だ。


 だがこの日、新たな解読データに、気になるもの更新されていた。


「ん? ガリウス………タキオン?」


 それは以前、クランドに提出した、ケイスマンの悪魔的な発想がまざまざと現れていた設計図だった。


 カイドウとクランドが舌打ちするほど、アンノウンを殺すために人類を消耗させる最凶最悪なプラン。


 そこに新たな更新データが追加され、タイトルまで変えられている。


「ハルモニ………こいつは、なんだ?」


『イェス。マスター・カイドウ。タキオンとは、ケイスマン氏によるパイロットと機体の一体化を促す新世代機であり───』


「ば、馬鹿言ってんじゃねぇ。ついこの前第七世代のGがロールアウトしたってのに、こりゃあ………HやIをすっ飛ばして、いきなりTってことか? 第二十世代機を想定してたってことかよ。中間の機体はどこ行きやがった!」


『それはケイスマン氏によるオリジナルガリウスであると想定されます。レイライトリアクター以外が、第七世代機と共通するものがありません。互換性のないワンオフの機体であると考えられます』


「………マジでイカれてやがる。それで? なにが更新された」


『神経接続を可能にしたインターフェースの他、加速を促す脳内チップの製造方法が判明しました』


「脳内チップ………ケイスマンよぅ。お前の狂気はどこまで………クソが。クランドに相談するしかねぇか。で、脳内チップとやらの具体は?」


『当初は医療を目的としたナノマシーンを利用したチップでした。障害や怪我で脳に異常をきたした患者の、社会復帰を掲げ、正常な覚醒を促します。しかしこのタキオン専用の脳内チップはそれだけに留まらず、タキオンとの一体化と負荷の軽減、そしてより加速を可能にした最新のモデルであると考察できます』


「患者の治療を免罪符にすりゃ、なにしても許されると思ってんのか! あのクソマッドサイエンティスト野郎は!」


 ガンとテーブルを殴る。


 ケイスマンへの軽蔑が半分。そしてもう半分は、インターフェースと脳内チップを今すぐにでも製造が取り掛かれてしまう自分の才能への憎悪だった。


「っ………けど、タキオンはすぐにゃ作れねぇだろ。FとGとは規格が違うってんなら………」


『ノー。グラディオスにはすでに、改造すれば製造が可能とする素体があります』


「は? っ………ま、まさかよぅ………ハルモニ。その機体って………」


『プロトタイプガリウスGです。解析の結果、プロトタイプガリウスGはナンバーズを模し、四肢とフレームのみがガリウスと共通していましたが、それが隠れ蓑となり、プロトタイプと銘うつことで第七世代機であると偽装していました。しかし大破した機体を解析した結果、中枢のみが第七世代機とは異なる規格であると判明しました』


「………クソが」


 カイドウのなかで様々な仮説の辻褄が合う。


 それは奇しくも、エースがこれまで取り組んだ原作破壊行為による、エース自身ですら知らないところで発生した変化の一端にすぎなかった。


ブクマ、たくさの評価、リアクションありがとうございます!

すみません。いつもより遅めの更新です。ついうっかりしていました。

明日は土曜日ということでたくさん更新できるよう頑張ります。勝負は今夜。どれだけ書き溜めることができるか!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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