主砲を撃てA08
物量差で押し切られそうになるも、こちらは質を選んで、なんとか切り抜ける。
30体ほどのCタイプと10体のBタイプは、保たれた連携で押し返し、殲滅に成功する。
窮地を脱したパイロットは咆哮を上げ、ドッグにも伝播した。
「さーてと」
野獣の雄叫びみたいな歓声がドッグで鳴り響くなかで、俺はイリスの横を抜けてコクピットブロックから出ようとした。
「お疲れ、エース」
「エー先輩が来なかったら、どうなってたことか」
「ん、まぁこういうこともあるさ。いつもみたく6体くらいの敵だったらイリスも同じくらいやれるよ。今回は差があったから混乱したんだな。てなわけでハルモニ。段取りどおりにできてるな?」
『イェス。メカニック・エース。今回の戦いでドローンカメラを操ったのはメカニック・イリスのみで、メカニック・エースは関与しておらず、自室で療養していることになっています』
「え!?」
「お、おい。ちょっと待てよエース。どうなってるんだ?」
ハルモニにログを編集させたことを確認し終え、まだ誰もこちらを見ていない間に脱出しようとするも、イリスに腕を掴まれる。
「聞いたとおりだよ。俺、まだ謹慎中だし。これでまた無断出撃の前科が増えようってもんなら、クランド艦長だって庇いきれないだろ?」
「いいや、そこは不安に思わなくてもいいぜ」
「おやっさん?」
俺の行動はすべてお見通しだったか。コクピットブロックの唯一の出入り口を塞ぐようにして立っていた。
「ログなんざ編集してもよ、監視カメラはどうするんだよ。詰めが甘いぜ。ってなわけで、お前の件は超常的措置として、やむなく療養中のパイロットに救援要請。エース・ノギを一時的にパイロットに復帰させたって俺からクランドに通達し、さっき了解が返ってきたとこだ。これでお前は無断出撃の前科が重なることはねぇな」
さすがはカイドウ。仕事が早い。
けれども「二度とやるなよ? やるなら事前に俺に連絡しろや」と睨まれ、釘を刺された。何本目だろうな。俺に突き立っているその釘の数は。
「ありがとうございます。おやっさん」
「ま、しゃーねぇわな。イリスだけじゃねぇ。ここにいる全員、今回の戦いでダイレクトサポートを成立させられることはなかった。お前しかやれなかったよ。………ドンピシャなタイミングでしゃしゃり出やがって」
グリグリと肩を拳で捻られる。かなり痛い。関節が壊れるかと思った。
ここにいてもいい理由ができたので、他の整備士たちの邪魔にならないよう、俺が乗って無茶をしまくった末に大破してしまった、プロトタイプガリウスGの前まで移動する。話し相手はいない。イリスとアイリは自分の持ち場に戻ってしまった。
「………お前も歴史の裏側にしかいない存在だけど………もしかして、もっと活躍したかったか?」
初めて機械に喋りかけてみた。
もちろん返答はない。ガリウスにはそんな機能はない。
頭部と胴と腰しかないスクラップ。塗装は焼け落ち、装甲は剥がれ、フレームも歪んでいる。
人間でいう肋骨の部分から大量にケーブルが伸びて、床のコクピットブロックに接続されていた。まるで内臓みたいだ。心臓を引き摺り出したような印象。
「そいつな」
「おやっさん?」
「お前が乗った時、反応したんだぜ? 目が光ったんだ。イリスじゃそうはいかなかった。お前がいない2週間、全員で試したがな。それでもガリウスがパイロットを選ぶような反応を見たのは初めて見たぜ」
「機体が、反応した?」
目が光った。もしかしてツインアイの発光のことを言っているのだろうか?
そりゃあ、機体が起動すれはツインアイが光るギミックはガリウスにもある。
けれど妙だな。起動した時に光るんだ。ドローンカメラの操縦のため、電源をつければ同じ現象が起こる。その後に光ったとなれば………なにか、システムでおかしなことがあったのか?
「お、連中が帰ってきやがったぜ。英雄たちの凱旋だ」
7機のガリウスたちが帰投する。射出口で肩にクレーンが繋がると、あとは自動で運ばれるのだ。シャッターが開き、異なるカラーのナンバーズと、隊長機がドッグに侵入する。
そう。まさにグラディオスを守護した英雄だ。
「英雄たちね。違いない」
「なにしょげてやがる副隊長。お前も行くんだよっと!」
「おわっ!?」
戦場にともに出れない寂しさを噛み殺すと、なにかを察したカイドウに蹴られる。
ドッグは無重力だ。グリップが効かなければ、掴まるところがなければ衝突するまで進み続ける。俺はクルクルと回転しながら、機体から降りた7人が伸ばした手によって受け止められた。
「このド阿呆が。何度無断出撃をすれば気が済む? 軍法会議が終わったその日にやるか? 普通」
「え、えっと、はは」
まず、すぐにシドウに叱られた。
ソータたちには歓迎され、神輿なのか胴上げなのかはわからない体勢で、ドッグを練り歩く。恥ずかしいし、また傷が痛み出したので、そろそろ降ろしてほしいと告げようとした、その時だった。
「あ? ………お、おいおいマジかよ。ビームシールドの申請が通らなかっただぁ!?」
クランドと通信していたのだろう。カイドウが一際大きな声で叫び、注目を集める。
「いったいどういう了見だ、そりゃ………ああ、いや、構わねえけどよ。わかった。全艦に通達するんだろ? ここにゃお誂のモニターもある。繋げるぜ。………おう、お前ら! 一旦作業止めろ! 艦長から通達があるってよ!」
カイドウの一声に、全員が注目し、作業の手を止めて集合する。俺もやっと降ろしてもらい、ドローンカメラで見た映像を中継する立体投影のモニターの前に移動した。
「親父。ビームシールドの申請が通らなかったと聞こえたが、いったいどうしたっていうんだ?」
シドウが尋ねながらケーブルを持ってくる。カイドウはケーブルを受け取ると、腕の端末に接続しながら首を横に振った。
「まだなにも詳しいことは聞いてねぇ。クランドがそれを含めて、これから艦内に放送をするんだとよ」
まったく本編にはない流れだ。
辛勝して、機体をボロボロにして帰投したソータは心身ともに疲弊していて、アイリが駆け寄って強引に回収するという流れだったのだが、完勝してしまうとそれがなくなる。ある意味惜しいので、あとでまたふたりをロッカーにでも押し詰めてやろうと決めた。
ここでクランドがなにを話すというのだろう。
本編に関わりがありそうなこと?
………まったく予想ができない。考察もクソもあったもんじゃない。
そりゃそうだ。第7話にして、もうすでに原作のifルートを走ってしまっているのだから。予想外なことが起きても不思議ではない。
『全クルーに告げる。作業を一旦止めて聞いてほしい。先程、艦のレーダーが友軍からの救援要請をキャッチした。当艦が目標としている近隣の宙域にて、戦闘が勃発。アンノウンの襲撃に遭い、辛くも退けたとあるが、かなりの損害を受けたとある。その艦の名前は………特殊強襲特装艦グラディオス級二番艦、アリスランドである』
「アリスラッ………ッ!?」
危うく叫んでしまいそうだった。
俺はその名を知っている。
考察もクソもないと匙を投げかけた途端にこれだ。
なんの運命の悪戯か。
グラディオス級二番艦、アリスランド。漆黒のグラディオス。グラディオスの対となる存在。
おかしい。なにもかもおかしい。なぜならアリスランドが登場するのは第2クールで、しかも地上だ。
なぜアリスランドが宇宙にいる?
まさか、俺が度重なる原作破壊行為のせいで、原型を留めなくなった運命がねじ曲がり、汚染されても地下深くで建造されていた二番艦を、宇宙に上げてしまったというのだろうか?
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地味にアリスランドという名前が気に入っています。夢の国などかけ離れているのですが。
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