主砲を撃てA06
戦局は逼迫していた。
アンノウンが、ついに物量差で攻めてきたのだ。
会敵してから数秒で援軍に次ぐ援軍。倍以上の数に、ミチザネ隊は徐々に追い詰められていく。
それは本編にもあった流れだ。
ヒナが最初の犠牲者となり、悲しみに暮れ、克服する時間もないまま次の戦闘に投入されたソータたち。もう第6話で見せたような神がかった連携などできるはずもなく。
そこでデーテルはクランドに主砲の使用を進言。修理は完了しており、いつでも撃とうと思えば撃てる状態だったが、砲雷科の主任とカイドウが話し合った結果、まだ未調整な部分があり、使用は見送るようにとクランドに報告していたのもあって、躊躇った。
長期に渡る戦闘は消耗戦と突入する。体力勝負だ。
消沈しながらも生存本能で戦い、気合いで押し切ろうとするミチザネ隊。
そこで、初めてソータが吼える。
獣のような咆哮で、最前線から飛び出ると、単騎でアンノウンの群れを撃破していく。ところが長くは持たず、包囲され、左腕を破壊されたところにシドウが割り込み救出する。
一見、無茶で無謀な戦い方ではあったが………アニメを視聴しているファンは、ソータの覚醒の予兆を目の当たりとする。ギリギリのなかで張り詰めた緊張と生存本能とヒナの死への怒り。それらの要因がトリガーとなったのだ。
だが───少なくとも現在は、ヒナの死は回避できていて、パイロットのメンタルは平常。しかも連携もいい。
シドウの指揮と個々のスペックの高さが、安定した防衛線を構築していた。
『くそっ………あと一手が足りねえ!』
無線がハーモンの不満の声を拾う。
いつもとは異なり、無線はプロトタイプガリウスGのコクピット内のみに届くのだが、今回は特例ということで、ドッグ全体に聞こえるようなオープン状態となっていた。
『サポート、まだか!?』
『弾薬が心許無くなってきました! 早く補給を!』
「わかってる! わかってるけど………ええい、くそ! どこの宙域に飛ばせばいいんだ!?」
無線を聞きながら、なんとか補給をしようとポイントを探すイリスは、プロトタイプガリウスGの剥き出しとなったコクピットブロックに搭乗しながら、2機のドローンカメラを必死に操りつつ、補給が可能なポイントを探す。
『イリス先輩、悪いとは思うけど、できるだけ早く! ロングソードが壊れそうなんだ。新しいものを!』
『もうどこでもいいから撃っちゃってくださいな。私が拾うわ』
普段は絶対に急かすようなことを言わないソータがイリスに要求する。痺れを切らせたユリンが、いつもより苛立った声音で、イリスを逆にサポートした。
イリスは謹慎明けに、重傷を負ったエースの代わりに、ドローンカメラで予想される戦闘宙域の偵察と、戦闘中のダイレクトサポートをする役目を与えられた。
誰もやりたがらない仕事だった。シミュレーションは全員一通り受けたが、カイドウ含めエースより適正がなかったのだ。
まず、4機のドローンカメラの操縦を瞬時に切り替えて、あたかも同時操縦しているのがおかしい。誰もがすぐ混乱して、偵察はともかくダイレクトサポート中にアンノウンに襲われ大破する。
イリスは整備士のなかでダイレクトサポートのスコアが上位で、その役目を与えられたのだった。しかし、やはりエースのようにはいかない。4機のドローンカメラはすぐに落とされ、もう2機まで減っていた。
もう1機の操縦を高性能AIのハルモニに託し、1機のみの操縦でアンノウンの猛攻から逃れられたものの、ダイレクトサポートとは複数の視点からミチザネ隊に必要とされるものを判断し、グラディオスから発射するものだ。たった1機の視点からでは、全員を見ることはできないし、コンテナを射出するにしても適切なポイントとタイミングが判別できない。敵影が少なく、味方が密集していそうな宙域に届けなければ、コンテナをアンノウンに破壊されかねないからだ。
「適当な場所って言っても………そんなところ、ねぇよ!」
「ここです!」
「え、ナカダさん?」
「ボケッとしないで! ここならまだ手薄です!」
「あ、ああ!」
コクピットブロックは急拵えのスクリーンを取り付けた造りになったゆえ、背面からしか搭乗できない。見かねたアイリがコクピットブロックに飛び込んで、カメラが捉えたポイントを指差し、イリスをサポートする。
「おやっさん! ポイント発見!」
「おう! いつでもいけるぞぉ!」
グラディオスのカタパルトからコンテナが射出される。コウが一番近くにいたのでシェリーが援護を担当しつつ、コンテナを無事受け取るのだが───
『おい………コンテナには弾のみで、近接武器が入ってないぞ!』
「え、嘘………ぁあ、くそ! やっちまった! 俺のミスだ。すぐ送る!」
『なにやってんだイリス先輩よぅ! ふっざけんなよ!』
「悪いとは思ってる! 慣れてないし、仕方ないだろ!? 俺はそんなに………エースみたいな化け物とは違うんだ!」
イリス自身が一番わかっていた。自分ではエースの代わりにはなれないと。
すぐに装備をコンテナに詰めるよう指示を出すのだが、それを可能にする宙域を探そうにも、アイリが加わったとはいえ時間がかかる。
「………おかしい」
「なにがっすか? おやっさん」
イリスのオーダーどおりの装備をコンテナに詰める指揮を取っていたカイドウが呟くと、クレーンを操作していた弟子が振り返らずに問う。
「確かに大破しちまったとはいえ、レイライトリアクターとかは無事だったろ。コクピットブロックに強引にケーブルで接続して、なにも問題はないはずだ。イリスだって技術的には問題がねぇ。慣れてねぇだけで………だがよぅ、どうにも………エースの野郎の半分くらいしかスペックが出せてねぇ気がするんだよな」
「機械が搭乗者を選ぶと? ロマンチックなスピリットがありますが、それはあまりにも………いや、確かにそうかもしれない。さっきからどうにもおかしい。イリスならもっとうまくやれると思ってたんですけどね。なんていうのかな………機能に制限がかけられているような気がします」
「だよなぁ。プロトタイプ側から、なにかリミッターみたいなものが設けられてるように思えてならねぇぜ」
カイドウはドッグの片隅に懸架された、四肢を失い、フレームとコアのみとなったプロトタイプガリウスGを見上げた。
いつもと比較して、なぜか反応が鈍いように見えてならない。
ところが、その時だった。
「おやっさん。7番と8番を出してください」
「無茶言うな。イリスがそこまで扱えるはず───は? いや、お前………なにやってんだ?」
「早く。俺がやります」
聞き覚えのある声がして振り返るカイドウ。その横を通過した白いノーマルスーツを着用した少年が、コクピットブロックに触れた。
「おっ………!?」
「プロトタイプが、反応した!?」
カイドウたちは確かに、それを見た。
少年がコクピットブロックに触れた瞬間、沈黙していたプロトタイプガリウスGの、バイザーの下にあったツインアイが、深緑の閃光を一瞬だけ放ったことに。
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