コロニー崩壊B02
クランド艦長の言う特務はまだ伏せられている状態だが、それは実は半分ほどクリアしてしまっているのが現状だ。
それはサフラビオロスでケイスマン教授が開発した、最新のガリウスの受領である。
ソータたちが住うサフラビオロスは、実力者を輩出する学園であると知られており、裏で学生たちに知られぬよう軍のパイロットを養成している。多少勘のいい学生なら不審に思う程度だろうが、学園には教授やパイロット、整備教官を含め大人も大勢いるのだ。普通なら気付かれることはない。
しかしこの事故で、ケイスマン教授もいたあのドッグで大勢の死体があった。それが新型ガリウスのパイロットとなるはずだった大人たちだった。
クランドは意図せず新型ガリウスを手に入れたが、扱うパイロットを欠いてしまって、このままでは機体を艦のドッグで遊ばせてしまうことを憂慮している。
加えて、
「………きみ。名前は?」
クランドは青い機体───新型ガリウス一号機に搭乗したソータの前まで移動して尋ねる。
「………ソータ・レビンス」
「パイロット科か。きみはなぜ、あのガリウスに搭乗していた? まさかケイスマン教授が独自に養成していたパイロットでもあるまい」
「ケイスマン教授が? ………どういうことですか?」
「………その様子だと、本当になにも知らないらしい。ならいい。忘れてほしい」
「ちょ、ちょっと待ってください! なんでケイスマン教授の名前が出てくるんですか? 友人たちが乗ってきた救命ポッドならわかります。教授の分野でしたから。でもこんな………見たこともない機体に乗せるためのパイロットを養成していたなんて、とても信じられません!」
「きみは?」
「ソータと同じパイロット科の、アイリ・ナカダです」
「ふむ。………残念ながら、その質問に回答するわけにはいかない」
「なぜです!?」
「特務ゆえに。一般人たるきみたちにすべてを明かすわけにはいかない。理解してもらいたい」
どうやら、正しいルートに乗ったらしい。この会話も記憶している。
ロボットアニメでは、主人公やその周囲を対象に、必ずといっていいほど環境が劣悪なものになる。もはやお決まりの流れだ。ドン底から這い上がるのも定番だが、王道だからこそ興奮する。さらにいえばこれまでになかった新鮮で斬新な発想があれば、言うこともない。
で、俺が舞台裏で好き放題暴れてしまって定番のストーリー展開から外れてしまうのではと警戒していたところに、覚えのあるやり取りが始まったので一安心───してる場合でもなかった。
「ふっざけんじゃねぇぞ、おっさん!」
「お下がりください艦長。ここは私が」
我らがハーモンくんがクランドに殴りかかった瞬間、斜め後ろで控えていた長身痩躯のパイロットが音もなく移動し応戦する。
結果は知れたこと。
相手は軍属にして、グラディオスのパイロットチームのリーダーだ。ハーモンは一発殴られて動けなくなったところを拘束される。民間人であるためある程度の恩赦があり営巣入りこそしなかったが、長時間は劣悪な環境にいたせいで、ハーモンくんは釈放されてから周囲に当たり散らすわけだ。
させないぞハーモンくん。
お前は本当はいい子なんだから。そんなことをする必要はないんだ。
だから、本当はこんなこと露骨だからやりたくないんだけど。痛いだけなんだけど。
「んげふっ!?」
「なっ!?」
「て、テメェッ」
とりあえず、俺が受けておいた。
ただし左右を同時に見ろなんて芸当はできないわけで、両者の間に割って入ってからハーモンの拳を掴んで止めたはいいが、本来ハーモンの腹にぶち込まれるはずの青年のブローは、俺の脇腹を抉る。
「お゛ォ゛………な、ナイスブロー………」
「な、なんのつもりだテメェ………」
「遺憾だが同意見だ………なぜ、このような真似をした?」
俺の無謀でしかない行為で、またヒナたちが騒ぐ前に釈明をと考えたのだが、思った以上のダメージにうまく呼吸ができない。辛うじて精一杯の強がりの笑顔でサムズアップはくれてやった。
数秒後、まだ脇腹は痛むが呼吸は戻った。不審がりはしたが、守られた負い目を無意識で覚えたのだろう。ハーモンの肩に手を置くと、なんと自発的に手を貸してもらって立ち上がれた。
ほら、やっぱりハーモンくんはいい子なんだな。
「いや………失礼。どうか後輩の非礼をお許しいただきたく。罰は上級生の俺が受けますし、なんなら後輩にはあとでよく言って聞かせます」
「な、なに言ってんだテメェ───」
「いいから。任せておきな、ハーモン。お前だってわかってんだろ? 世の中は暴力だけで解決できる問題の方が少ないってさ」
「………チッ」
本格的にハーモンの頭を撫でてやりたくなる。
こいつは不器用なだけで、上がちゃんとハーモンを理解して指導してやりさえすれば、ちゃんと素直になれるんだ。態度はあとで直してやればいい。黙っていたとしても、正直に任せてくれたのが嬉しくなる。
さて、ここからだ。
サフラビオロスを脱出した際のアドリブは舞台裏だった。描写になることはないカットで好き勝手やった。
でもここからは、実際にあるシーン。
舞台裏ではない、本番。正真正銘、天破のグラディオス本編の介入。
俺がここにいる意味を証明しなければならない。でなければ、俺はなんのためにエース・ノギになったのか、わからなくなるからだ。
理不尽で不条理な運命に、流動的に従う趣味はない。約束された反撃と勝利が将来訪れるとしても。
俺はきっと、天破のグラディオスをより良き形で完結させるために、ここにいる。今、この瞬間に、ここにいる全員にそう誓った。
今年度最後の更新です!
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