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主砲を撃てA02

「このクソガキがぁっ!」


「あ、っぐ」


 なんてひとだ。


 こちとら、まだ傷が塞がっただけで、完治していないというのに。


 俺より身長が低いドワーフみたいな体格をしているから、ジャンプして拳骨を脳天に振り下ろしやがった。


 倒れなかったのはシドウが左腕を掴んで支えてくれたからだ。


「………と、まぁ。示しが付かないだのと言ってる奴がいるしよ。まずはこいつを教えていたこの俺が、最初の処罰をくれてやった。これで納得しちゃくれねぇか?」


「言いたいことはわかる。しかし減刑はされない」


「わかってる。ここに集まった各セクションの主任たちへ、俺なりの謝罪を示してるんだ。………俺の教え子が、グラディオスを危険に晒したこと、誠に申し訳なかった。このとおりだ!」


 カイドウはその場で頭を下げた。俺の髪を掴み、強引に下げさせる。


「そしてパイロットリーダーとして、隊を預かる隊長として、副隊長のミスを私も謝罪させていただく。もちろん減刑はされないのは承知しています。ですが、この者は我が隊に必要としている人材なのです。ゆえに、どうか彼がこの艦に留まることをお許しいただきたい!」


 シドウも頭を下げる。


 数秒の沈黙。クランドはなにも言わない。


 そんな空気を、デーテルに反論した主任のひとりが破る。


「では、そういうことで」


「ええ。納得したということにしておきましょう」


「艦を危険に晒したとはいえ、アンノウンとは距離がありましたし。本当はどうということはありませんしね」


 次々と賛同する声が上がる。カイドウは「すまねえ」と謝り続けた。


「では、これにて閉廷とする。エース・ノギは通達があるまで自室で謹慎しているように」


「は、はい。承知致しました」


「うむ。カイドウ、責任を持って連行したまえ」


「わかった。艦長」


 髪を離されても、もう一度クランドに頭を下げる。デーテルはまた悔しそうにしながら俺を睨んだ。


 そして誰よりも早く、シドウに担がれて艦長室をあとにした。


「………殴っちまって、それに髪掴んで振り回しちまって、悪かったな」


「おやっさん?」


 カイドウはいつになく覇気のない声で言った。


「え、どうしたんですか? いきなり」


「どうしたって………お前、俺にあんなことされて、怒ってねぇわけじゃないだろ?」


「怒ってないですよ。全然」


「………相変わらずぶっ飛んだメンタルしやがってよぉ………ったく」


 カイドウなりに罪悪感があったってことか。


 でもそんなの一々気にしていたら、ドッグで働いていられないからな。暴力は初めてだったけど、不快感はなかった。


 すでに本編を逸脱した流れとなっている。軍法会議なんて開廷したこともない。


 でも、そうであったとしても、カイドウの苦悩はよく知っている。


「むしろ感謝してるんですよ」


「か、感謝だぁ!? 馬鹿も休み休み言いやがれ!」


「おやっさんが俺を殴ったのも、髪を掴んで頭を下げさせたのも、俺を庇うためだった。それくらいわかりますって。おやっさんは弟子を守れる、目標としてる大人のひとりですし。嬉しかったですよ」


「テメェ………チッ。そんな妄言で、俺が喜ぶとでも思ってんのかよ!」


 そういう割には、表情が緩んでますぜおやっさん。


「い、いや。そうじゃねぇ。お前にはまだ言わねえといけねぇことがあったんだ」


 何回か面会に来てくれたのは知っている。メディカルルームで絶対安静状態だった俺は、意識がいつもあったわけではない。眠っている時に声が聞こえたような気がしたので、あとでレイシアに聞いたらカイドウやシドウが来てくれたのだと知った。


 だからこうして直接面と向かったのは2週間ぶりとなる。


「………お前のことを見くびってたぜ。正しい評価をしてやれなくて、悪かったなぁ。少しでもお前のことを信じてやれていれば、こんなことにはならなかったのかもしれないって思っただけで、罪悪感で吐きそうになったくらいだぜ。お前は一人前になりたくて、こんなことをしたんじゃねぇ。もっと別の目的があったんだな」


「まさかDタイプを倒すとは思いもしなかったが、お前はこれまで会った子供のなかでも異質な存在だ。俺も副隊長に任命した手前、全幅の信頼を寄せていたと思っていたが、どうやら型式だけですべてではなかったらしい。すまない」


 ツンデレ親子が揃って謝罪する。


 それを聞けただけでも、こんな大怪我をした甲斐があったってものだな。


 原作ではカイドウはクランドと酒を飲みながら何度も後悔し、シドウは心のなかでヒナに何度も謝罪し、彼なりに隊の改善と機能の回復を試みるのだが空回ってばかりだった。


「許しますよ………っていうのは変ですかね?」


「変じゃねえ」


「ああ。お前らしい回答だな」


 少し上から目線だったかな、と不安だったのだが、ふたりは笑っていた。てなわけでパシャリと。最近は片手での操作も慣れた。右手は負傷こそしているが指先は動くし。


「それにしても、お前もしぶてぇな。内臓を抉るくらいのダメージと、骨まで達した鉄の欠片が突き立ってたってのによ。まだ生きてるなんてなぁ。お前本当に人間かぁ?」


「死にかけたんだから、人間でしょ?」


 酷いことを言いやがる。でも確かに生きているのが不思議なくらいの大怪我だった。しかしたった2週間で歩かせようとするの酷くね? 傷が塞がっても痛いのは違いないんだから。


 カイドウが言うくらい内臓に達した大怪我だが、短時間で傷を塞いだのは軍医たちの長時間に渡る手術が成功したからだし、この世界は前世にはない技術があったからだ。


 漫画やアニメ、SF映画とかでよく見た、治療ポッド!


 培養液みたいな黄緑色の液体に全裸で漬けられた俺は、酸素マスクで呼吸しながら何日もそこにいた。


 ナノマシーン技術が発達し、重症者を収容すれば傷が塞がるらしい。ただ万能というわけではなく、傷口を晒したまま漬ければ倍の速度で治る程度なので、ある程度は手術で治療してから漬けた方が日数を短縮できるとか。


 だから俺は全治数ヶ月の重傷を負っても、2週間で出歩けるくらいには回復した。


 ………けど、だからと言って問題が解決したわけじゃ、ないんだよなぁ。


「エー先輩っ!」


 ほら、来た。


 俺の悩みのタネちゃんが。


たくさんのリアクションありがとうございます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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