みんな大好きB13
とにかく時間がなかった。
イリスは渋ったが、了承してくれた。
共にコクピットから出て、作業に取り掛かる。
実は前もって、プロトタイプガリウスGには周りに悟られないタイミングで推進剤を注入しておいた。ただ、満足できるほどの量ではない。多分、片道くらいしか無いだろう。
右腕のハードポイントを確認。ハルモニを使って機体を操作。接続準備を完了させた。
『エース! 早く!』
「ああ!」
イリスからの通信で、プロトタイプガリウスGのコクピットに戻り、炉に火を入れた。エンジンが起動し、長いこと使われていなかった各関節が軋みながら動き出す。
「お、おい!」
「やめろ、なにやってんだ!」
途端に騒ぎになる。整備士たちが駆け寄って止めようとするが、10メートルほどある機体だ。人間なんざバリケードにもなりやしない。とはいえ強引に突破はできない。
姿勢制御プログラムを改良しておいた。一号機が培ったものをフィードバックしておいた。秘密でな。これにより固定具が外れてからも直立で動ける。
『おいエース! なにやってやがんだこの馬鹿野郎!』
カイドウから通信で怒鳴られる。かなり怒ってるけど、無視した。
向かった先は製造部。ここで作ったものは天井のクレーンで運ぶ。イリスが先にクレーンを動かして、ビームシールドを懸架してくれていた。自動で送られてきたのでキャッチ。シールドとはいえ、ビームが無ければただの小さな塊だ。傷付けないようハルモニの演算でマニュピレーターで包み込むよう受け取り、右腕のハードポイントに接続する。───オールグリーン。
プロトタイプガリウスGには秘密でビームシールド用のプログラムを書き込んだ。ぶっつけ本番だが、やるしかない。
「イリス!」
『行け!』
向かう先はドローンカメラ5番が運ばれていたカタパルト。ガリウスもここから射出される。
イリスは製造部でクレーンを自動で動かしたあと、それと俺をブラフに、注目が集まっていた隙を見てカタパルトのハッチを操作するコンソールに取り付いた。
プロトタイプガリウスGがカタパルトまで移動を成功させる。ハッチが閉まる。
『ふざけんなテメェ! おい聞いてんのかエース! テメェ、なにしようとしてんのかわかってんのかぁっ!』
ハッチが完全に閉まる前に、ドッグを見た。
カイドウがブチギレて俺を睨んでいる。
イリスは───ああ、なんてことだ。整備士たちにぶん殴られ、拘束された。
あとで謝ろう。何回でも謝ろう。俺がこれからすることが成功したら、イリスの無罪を訴えよう。俺が脅したことにすればいい。ぶん殴られる前、俺にサムズアップを向けていたことなんて全員の目の錯覚だったと。
「………許されることじゃないってのは、わかってる。でも、やるしかない。俺にはこうするしかないんだ。ハルモニ、カタパルトを射出しろ!」
『メカニック・エース。あなたには幾多もの軍規違反により、すべての権限を───』
「うっせぇ! 俺に従えっ! ミチザネ隊の副隊長権限を行使! それから、これが終わったら、すべての責任を取る! パイロットが死ぬかもしれないんだ! 軍規とパイロットの命を比較して、優先順位を再設計! いいからカタパルトを射出しろ!」
『───イェス。メカニック・エース』
高性能AIも形無しだな。
ミチザネ隊の副隊長権限ってのが適応したのかな。
どうでもいい。今はやれることをやるだけだ。
『射出タイミングをメカニック・エースに譲渡します』
「エース・ノギ! プロトタイプガリウスG、ブラストオフッ!!」
『射出』
以前はカタパルトなど使わず、乗機の推進器で発進したから、これが俺にとっての初めてとなる発進シークエンスだ。エモいとか言ってられねぇ。殺人的なGが全身を襲う。
「ぐぅあっ」
意識が飛ぶかと思った。それくらいの加速だった。
辛うじて繋ぎ止めた意識を覚醒させ、得た推進力を残りの推進剤の9割を使うつもりでメインスラスターをフルスロットルにして、より凶悪な加速に達する。
最前線はグラディオスからかなり遠のいたが、メインカメラを拡大化するまでもない。
「まずい! 俺がさっき見た光は、やっぱりDタイプだ!」
ドローンカメラが半壊して、右に回転した際に一瞬だけあの光を見た。
そして、アンノウンDタイプは、多くのガリウスFを屠った正体不明のアンノウンであり、ヒナをも殺すことになる。
「くそが! 俺の体なんてどうでもいい! 間に合えぇぇええええええ!!」
間に合え。間に合え。間に合え!
願うばかりで加速する。
光が大きくなる。原作どおりヒナを狙っていやがった。
「させる、か………なんのために、ここまで準備してきたと、思ってやが………ヒナには、絶対に………触れ、させ、ね………っ」
薄れかける意識を、怒りで繋ぎ止める。
間に合っても通過しては意味がない。タイミングを合わせる必要があった。
そして、特徴的な黄緑色のカラーをした、六号機を視界に捉え、
「ヒナァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
これまで溜め込んだ感情のすべてを、咆哮に乗せた。
サブスラスターすべてを用いて急制動をかける。血を吐くような苦痛に耐え、むしろ怒りで上書きする。なんとかうまくDタイプとヒナの間に入り込んだ。
『エー先輩!?』
『なにをして………なにをしに来たお前っ、いやなんだこれは!」
驚愕と非難の通信が届くが、応えを返す暇がない。
「ビームシールド発動!! 最大出力!!」
『了解』
ハルモニの補助があり、右腕でビームが迸る。
「テメェみたいなやつに、俺の大切なものが奪われてたまるかぁぁあああああっ!!」
右腕を翳す。Dタイプと接触。
ギャリギャリギャリッと、摩擦音と振動が機体の腕部を通じてコクピットに響いた。
だが───
『実証実験は成功。Dタイプの接敵を受け付けていません』
だろうな。
俺がカイドウの課題をクリアするために新たなアイデアでビームシールドの製造まで漕ぎ着けたのは、まさしくレイシアとイリスが例えた傘にヒントがあった。
平面ではなく、湾曲させるのだ。
ビームは放出して固定ではなく、放出し続ける。
これではエネルギーの消費が激しくなるが、受け止めるのではなく受け流すことを目的としているため、オンオフを制御すれば消耗を抑えられる。
ただ、Dタイプは俺の予想を遥かに上回った。
『アンノウンの回転が止まらず、受け流せません。このままでは機体がもちません』
「構うな! 最大出力を維持しろ!」
Dタイプめ。回転を強めて受け流すどころか傘の中央まで遡ってやがるのか。
アンノウンとは熱源の塊だ。タイタンジャケットを装備しておらず、装甲だってナンバーズと比較すれば紙みたいなものだ。モニターでは機体の至るところで故障が発生し、内部温度も上昇している。
『なにをしているエース! 離れろ!』
「離れたら誰かが狙われます! 俺が受け止めないと、みんなが危ないんです!」
『まさかお前………その装備は、こうなることを予想して製造していたというのか!?』
まぁね。という肯定をするとややこしくなる。黙秘しとこう。
それよりも、今は───
「ソータ! こいつをぶった斬、ぐぁがぁぁああああああっ!?」
『エー先輩っ? どうしたの!?』
「なんでも、ねぇ………操縦桿が熱持ってて、ちょっと火傷した………くらい、だ。早く仕留め………長くは、持たな………」
『わ、わかった!』
やっとソータが動いた。
ハーモンたちも続く。
Dタイプは長細いドリルみたいな姿をしていた。全長20メートルってところか。一直線にしか進めないが、全アンノウンのなかでも俊敏性はトップクラス。
「ぐぅ………っ」
『エー先輩………』
「そのまま、動くなよ? 守るって、言ったろ………?」
声が震える。
こんな痛み初めてだ。
ああ、くそ………何ヵ所刺さってんだ。
意識が本格的に薄れてきた。
しかし、成果はあった。
ビームシールドが消失する寸前で、ソータとシドウがDタイプをロングソードで両端から切断。
勝った。初めて、運命に打ち勝った。
そして、守れた。初めて守れた。
みんなが、俺が、失うはずだったヒナを。
やっとエースを機体に乗せて暴れ散らかすことができました。整備士なのに…
もう101回も更新していたんですね。こんなに書けたのは初めてです。
次回は15時頃に更新します。
やめてアンノウンDタイプの螺旋力でプロトタイプガリウスGが焼き払われたら原作破壊行為のツケが回ってエー先輩の精神まで燃え尽きちゃうお願い死なないでエー先輩あんたが今ここで倒れたらヒナやソータたちとの約束はどうなっちゃうの命はまだ残ってるここを耐えれば運命に勝てるんだから「次回エー先輩死す」原作ブレイクスタンバイ!(ノンブレス高速詠唱
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