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みんな大好きB12

 ヒナside



 鬼教官みたいだったシドウ隊長による訓練の賜物か、それとも私たちの努力の賜物か。


 ミチザネ隊は毎日少しずつ成長を遂げた。


 最初はみんなバラバラで、なにを考えているのかもわからなくて、なにがしたいのかもわからなくて、喧嘩して、衝突した。


 顕著となったのはハーモンくんとコウくん。シミュレーションは個人で取り組むから衝突はしなかったけど、演習になった途端、模擬戦でハーモンくんが問題行動に出て、シドウ隊長とコウくんと三つ巴の喧嘩になった。


 側から見ていることしかできなかった私は、同級生のアイリちゃんに愚痴ることしかできなかった。


 だって、ソータくんとユリンちゃんとシェリーちゃんって、正直なにを考えているのか、わからないんだもん。


 歪で、尖っていて、ゴツゴツしていて、なにひとつとして合致しない形状である私たち。


 例えるなら先端が長くて尖っている、星形のピースの私たちでパズルを作ろうとしているようなものだった。


 そんな手足が長いヒトデみたいなピースを額縁に押し込んだところで、綺麗な図面になるはずがない───と、私はすでに諦めかけていた。


 きっと金槌で叩いて砕き、ナイフで切るなどの、強制と支配でも敷かなければ、私たちは決してひとつにはならない。長い長い時間がかかると。


 でも………そうはならなかった。


 暴力、支配、強制、洗脳、諦観………これらのネガティブな要素をひとつも用いず、トゲトゲしていた私たちをピタリとひとつの図面にしてしまった要素があった。


 私たち学徒兵6人。シドウ隊長ひとり。計7人のうちの誰か? 違う。


 ミチザネ隊に所属しない、整備士見習いのひとり、エース・ノギ。通称エー先輩が、バラバラでトゲトゲしていた私たちをひとつにしたのだ。


 エー先輩は暴力と暴言を使わなかった。説得で、言葉だけでみんなをひとつにした。


 見事だった。だって、きっとみんな苦労するとわかっていたのに、たったひとりかつ短時間で、反骨精神の塊みたいだった不良のハーモンくんとコウくんを舎弟みたいにして、ハーモンくんの舎弟みたいだったクスドくんも仔犬みたいになって、シェリーちゃんは別人みたいになった。


 本当………別人みたいに。


 エー先輩に説得されたハーモンくんは素直になった。まだ口調は荒々しいけど、話してみるとちゃんとわかる子だった。コウくんは犠牲者を出すことが怖くて、近寄り難かったシェリーちゃんはただただ普通の可愛い女の子。私の勝手な偏見だった。


 エー先輩は水みたいなひと。


 常に決まった形状にはならない。容れ物によって形状を変える。そして時として川のように水の流れで私たちのトゲトゲしていた部分を削り、全員の形状を揃えた。さっきのパズルのピースの例えの正体がそれ。そして時として海のように私たちを包み込む。果てが見えず、底も見えない大海みたいだ。


 そんなエー先輩の活躍があって、私たちは順調に、きっと誰しもの予想を裏切って、最短で理想のチームになれた。


 色々なことがあった。決して楽な道ではなかった。学生ではなく軍人として、戦う防人として。アスクノーツ学園の授業では習ったことのない内容に取り組み、必死に食らいつく。


 でも、そんな日々があったからか、戦績は全戦全勝。被害は軽微。犠牲もない。救難信号を発した要救助者は必ず助けられた。


 エー先輩がミチザネ隊の副隊長に抜擢されたと聞いた時は嬉しかった。


 これでエー先輩もいつでも一緒だって。


 けど………思っていたより、一緒にいられる時間は少なかった。すれ違いの方が多くなった。


 果てにはエー先輩は過労で倒れてしまった。


 なんでこうなるのだろう。意味がわからない。看病だってしてあげたかったけど、いつも誰かが近くにいた。


 悲しくて、悔しかった。


 学園にいた頃はこんな感情になることなんてなかったのに。


 エー先輩がとても遠くに感じた。


 昨日、偶然だけど会って話しをすることができた。


 エー先輩は謝ってくれた。最近、ふたりで話ができなかったことを。とっくに過ぎた誕生日も祝ってくれた。


 ………そうじゃない。そうじゃないんだよ。エー先輩。


 惜しいけど、私が欲しかったのはもっと別にあって、でもきっと手に入らないものだから。日に日にそう感じていた。


 今日はとても良い日となった。


 エー先輩が操縦するドローンカメラが落とされたのは予想外だったけど、出撃した私たちの今の操縦技術だったら、ガリウスFが10機編成でなければ1匹倒せないと言われているアンノウンCタイプを、私とユリンちゃんで落とせるようになった。


 ペア、あるいはトリオで編成し、確実にCタイプを倒していく。編成は秒単位で変わっていく。シドウ隊長の考案したフォーメーションだ。


 今日はなぜだか、妙にみんなが息が合った。あっという間に5匹を倒すと、後続の知らせが入る。Cタイプが10匹増えたんだって。


『敵が増えた!』


 視力のいいシェリーちゃんが補足する。


『落ち着け! 冷静に対処するんだ!』


 シドウ隊長はそう言うけど、それは一応、形式的な指示だ。隊長としての。

 

 きっとシドウ隊長自身がわかってる。みんな落ち着いていて、冷静そのものだって。


 すごかった。もう、言葉にしなくても、みんながどう動くのかわかる。


 興奮と喜悦が頭を占める。呼吸が浅くなる。敵の後軍が10匹控えていようが、負ける気がしない。


 嬉しい。楽しい。面白い。初めての感覚。


『テメェら聞きやがれ! ここは俺が守ってやる。なにが来ようが1匹も通さねえ! だからテメェら、俺が止めたら確実にぶっ殺せ! グラディオスを守れェッ!』


 ハーモンくんが興奮気味に絶叫した。彼らしいなぁと苦笑した。


『よし、デクスターの指示を採用する。前に出ろ! デクスター。俺たちを信じて攻撃を託せ。その代わり、俺たちもお前を信じて防御のすべてを託す!』


『よっしゃぁああああああ!』


 本当に珍しい。あのシドウ隊長の言葉に、ハーモンくんが本気で喜んで返事を返した。


 これがチームとしてひとつになるってことなんだよね。エー先輩。


 すごい。すごいよ。


 後軍がすぐに迫る。タイタンジャケットを装着した四号機が受け止める。倍に近い体格差をものともしない出力で先頭を止めると、間髪入れずに私たち6人が止めた先頭を一斉攻撃で葬り去る。


 誰がなにを言わずとも、全員がどう動くか理解できて、弾道さえも見える。剣戟だって。私たちは一度も接触することなく、フレンドリーファイアすることもなく、ギリギリで交差する。


 もうなにも見なくても、誰がどこにいて、どんな攻撃をするのかがわかる。


 2匹、3匹。一旦ハーモンくんが下がって冷却している間に4匹、5匹。復帰して阻止して6、7、8、9。そして全員で集中砲火を浴びせて10匹目を撃破した。


 多分、20秒もかかってない。


 タイムレコードを大幅に縮小させた激戦。


『………よくやった。お前たち。過去最高の動きだった。文句のつけようがないな。お前たちはもうすでに一人前だ。俺が認める。誰にも文句は言わせん!』


 シドウ隊長がみんなを認めてくれた。


 本当にすごい連携だった。


 通信越しに、全員の歓声が聞こえる。


 私もドキドキして、叫んだ。




「みんな大好き───え?」




 私の機体のメインカメラが、遠くでチカッと瞬く光を捉えた。


 次の瞬間、どの機体、敵をもしのぐ速度で、銀色の閃光が空間を駆け抜ける。


「あ………」


 それは一直線に私へと接近した。


 咄嗟のことだったので反応が遅れる。どう対処していいか、わからない。


 防御? 回避? ………ダメ。間に合わない。


 いやだ………なんなの、これ。敵なの?


 隊長、ソータくん、アイリちゃん………。


 パパ、ママ、お兄ちゃん………。


 エー先輩………。


 たす、け───






『ヒナァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!』






 助けて、と呟こうとした時。


 通信に割り込んだ、憧れたあのひとの絶叫が聞こえた。




 そして、本来なら動くはずのない灰色の機体が、私の六号機と、銀色の閃光の間に割り込んだ。


ブクマありがとうございます!

さぁ、勝負です。3回目にして、なんと100部目にして、やっと灰色の機体に乗った誰かが、その人生を賭けた大勝負に出ます。

その結末は次回に。でもご安心ください。1時間後の13時頃にまた更新しますので、すぐに読めます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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