ソラの能力
ソラは牢の中で、次はどうするべきかを考えていた。
村を壊滅へと導こうとした大罪人として、事件の数時間後に捕らえられた。
今朝、ソラが森に入っていくのを見た、という証言があったのだ。
火事を引き起こした原因となった石が森の中で見つかったこともあり、ソラへの疑いの目は強まっていた。
(どうしよう。どうにかして無実を示さないと。でも能力のことは言えないし ... 。)
ソラの能力はソラしか知らない。
この能力は貴重であるがゆえに、悪用されるリスクがあった。
そのため、この能力のことはこの能力の保持者にしか伝えてはいけないのだ、と同じく空の"力"を持っていた祖母に言い聞かされていた。
ソラは無実の証明をするために能力の開示をするべきかを悩み続けていた。
「フウちゃんになら ... 。」
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(どうしよう ... )
フウもまた、悩んでいた。
(本当にソラが犯人なの?でも、自分で火事を起こしておいて、わざわざ自分で火を消す意味はないし ... 。でも、もしかしたら疑いの目をそらすためかも ... 。)
その時、父とユウヒを見つけた。
「ソラはどうなったの ... ?」
「ソラ殿はひとまず、牢に入れられました。今のところ一番怪しいのはソラ殿ですから。」
「そんな ... !」
(やっぱりソラに本当のことを聞かないと ... !ソラは私の味方だって言ってくれたんだ。今度は私がソラの味方になる番だ ... !)
フウはソラのいる牢に向かって走り出した。
「ソラ!」
「 ... フウちゃん!」
(よかった ... 。思ったより元気そうだ ... 。)
「 ... 私、これからどうなるんだろう。私がやったことになってるんだよね。」
「うん ... 。」
「 ... フウちゃん。本当はダメなんだけど ... 、私の能力を教える。」
(ソラの能力って ... )
「空の"力" ...!でも、」
(空の"力"は知られたらいけないんじゃ ... 。)
「こんなことになった以上、これしか方法がないし ... 。」
「ん、何か言った?」
「ううん、フウちゃんのことは信頼してるから。」
「ソラ ... !」
「 ... じゃあ、全部話すね。 ... 空の"力"は"全能"なの。全部わかるの。過去のことも現在のことも、そして未来のことも。」
「未来のことも ... ?!」
「そう。だからこの火事のことも知っていたの。水が手に入れられなくなることもわかっていたから、今朝、森に水を取りに行ったんだけど ... 。まさか、それが仇になるなるとは思わなかったよ ... 。」
「じゃあ、手に土がついてたのは?」
「あれは ... 火事が能力によって起きるってわかってて、あの石が原因だっていうのもわかってたの。だから土を掘って探してたんだけど ... 。さすがに見つけられなかった ... 。」
「そんな ... 、じゃあずっと一人で ... ?」
ソラは頷いて苦笑した。
「結局火事になっちゃったから、探すのは無駄になったんだけどね ... 。」
(ソラはずっと一人で頑張ってたんだ ... 。誰にも気づかれないように、ずっと ... 。)
フウが自分の不甲斐なさに打ちのめされているとき、ソラが
「 ... 実は、確実ではないんだけど犯人らしき精霊も"見た"の。」
と言った。
「えっ!」
フウが驚くと、ソラは申し訳なさそうに、
「ごめんね。でも信じられなくて ... 。」
と言った。
「暗くて顔がわからなかったんだけど ... 、その、赤い髪だったの。毛先がオレンジ色になってる。夕焼けみたいな髪色だった。」
(夕焼けみたいな ... !?)
「まさか、その精霊って ... 」
「うん。そういう色合いの髪の精霊は一人しかいないよ。犯人はおそらく ... 」