007. 怪しいのは誰か
(早く火を消さなきゃ ... !)
フウは我にかえり、水を探し始めた。
しかし、川は森の奥にあるため、川の水は使えない。
(それなら、水の力を持ってる精霊に手伝ってもらわないと ... 。)
これほどの規模の火事だとたくさんの精霊を集める必要がある。
しかし、突然の出来事で精霊たちはパニック状態。
その中でたくさん集めるのは困難だ。
どうしようかと悩んでいたとき、
「みなさん!水はここにあります!協力して火を消しましょう!」
と、ソラが水が入った大量の桶を持って叫んでいた。
フウはソラから水を受け取り、火にかけた。
(そういえば ... 火元はどこなんだろう。こんなに燃え広がるまで誰も気づかなかったなんてことある?)
フウはいろんなことを考えつつも、水をかける手を止めなかった。
しかし、いくらかけても火は消えず、むしろ火の勢いはどんどん増していった。
(なんで止まらないの?)
そのとき、フウはふと、手紙と一緒に入っていた赤い石のことを思い出した。
(もしかして、あれが何か関係があったりして ... !)
フウは急いで家に戻り、赤い石を探した。
見つけるのは容易だった。
「 ... えっ?」
赤い石は眩しい赤色の光を放っていた。
そして、フウはこの石が「原因」なのだと悟った。
石に、燃えている森の様子や、戸惑う精霊たちの様子、必死に火を消そうとするソラの様子などが映っていたからだ。
フウは石をもってソラのもとに走り出した。
「ソラ!この石が関係してると思うんだけど ... 」
「これ ... かすかだけど、精霊力を感じない?」
確かに石からは精霊力が漏れ出していた。
「ってことは ... この火事は"力"でつくられたものってこと?」
もしそうなら、火はこの石に水の"力"をかけることで消えるのかもしれない。
そう思い、水の精霊に水の"力"をかけてもらったが、
「全然消えてない ... ?」
火の勢いは少し弱まったが、火は止められなかった。
(じゃあ ... どうすればいいの?)
その時、
「 ... 石を割ってみたら?」
とソラが言った。
「原因はこの石だってわかったんだから、これを壊せば術も解けるんじゃない?」
他に方法がなかったため、フウは石を割った。
すると、赤かった石は灰色になり、燃え盛っていた火も消えた。
その様子を見ていた精霊たちは安堵した様子で、地面にへたりこんだ。
フウの誕生日祭は中止となり、急遽、この火事についての会議が開かれた。
「 ... この事件についての説明は以上です。」
ユウヒはフウとソラから聞いた情報をまとめ、発表した。
そこに精霊が入ってきて、ユウヒに何かを耳打ちした。
ユウヒは頷き、私たちを見渡して言った。
「今、新たな情報が入りました。火事があった森の中にフウ殿の元に届いた石と似た、赤い石が埋められていたそうです。フウ殿が石を触った瞬間に自動的に術が発動したのでしょう。しかも、犯人はちょうど6時くらいにフウ殿が封筒を開けるとわかっていた。これらのことから、犯人はフウ殿と親しい精霊だと考えられます。」
「フウお嬢様と親しく、火の"力"を持つ精霊はユウヒさんだけです。あと、ご友人のソラ様は空の"力"を持っていますが、どんなものかは不明です。」
それを聞いて、一人の精霊が、
「そういえば、ソラさんの今回の行動には少し不可解な点があると思いませんか?」
と言った。
「不可解な点?どういうことですか?」
「急遽、水を用意するには、水の"力"を使うか、森にある川の水をくむしかありませんが、あの状況下ではどちらとも不可能だと思います。となると、ソラさんは火事が起きることを知っていたのではないでしょうか。」
(確かに ... 。)
ソラが犯人なんて考えたくない。
(そういえば ... !)
ソラと話した時、ソラの手には土がついていた。
そして、森の奥には赤い石が埋められていた。
(まさか本当にソラが犯人なの ... ?)