表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし、精霊が人間と出会わなかったら  作者: 檸檬セレナ
出会いと旅の始まり編
7/18

誕生日プレゼント

精霊の寿命は大体、七百歳くらいです。

百歳の精霊は大体、中学生くらいの見た目です。

 ついに私の誕生日がやってきた。

 村長の娘の誕生日であるため、村はいつもよりも賑わっていた。

 ある店では私の姿が描かれた絵が売られていたり(いつの間に描いたんだろう ... )、ある場所では屋台が出ていたりして、外は精霊たちでいっぱいになっていた。

 もう、お祭り騒ぎである。

 そして、浮かれていたのは民たちだけではなかった。

「フウ、誕生日おめでとう。」

「お姉さま、お誕生日おめでとうございます!」

「フウお嬢様、お誕生日おめでとうございます。」

 母や妹、使用人までがハイテンションなのがわかった。

 ただ、娘の誕生日だからではない。

 この村には「人間との接触について」以外にもいくつかの言い伝えがある。

 そのうちの一つに、「天の子の誕生から百年目の日に"天からの贈り物"が届くだろう」というものがある。

 天の子とは村長の長子のことで、つまりフウの百歳の誕生日である今日、"天からの贈り物"が届くということだ。

 "天からの贈り物"は滅多に見ることができないため、みんながそれを楽しみにしているのだ。

(平和だなぁ。)

 明日にはこの村をでなければならない。

 家族や友人、使用人や民たちに別れを告げずに。

 ソラだけは計画を知っているため、別れを告げるつもりだ。

(でも、やっぱり寂しいな。自分で決めたことではあるんだけど。)

 そんなことを考えていると、ライが、

「お姉ちゃん!ちょっと外に出ててくれる?」

「え、どうして?」

「いいから、いいから!」

 と、フウは外に追い出された。


 フウが家を出た瞬間、ソラが駆け寄ってきた。

「フウちゃん、誕生日おめでとう!」

「ありがと。」

 フウはふと、ソラの手が土で汚れているのに気がついた。

「ソラ、その手どうしたの?」

「あれ、ホントだ。なんでだろ?」

 と、ソラはすこし焦った様子で土を払い落とした。

(?)

「ソラ、どうかし ... 」

「それより、フウちゃんにこれ!」

 ソラはフウの言葉に被せるようにしてフウにプレゼントを差し出した。

「 ... ?あ、ありがと。」

 プレゼントは空色の朝露で作られたブレスレットだった。

「フウちゃん、向こうにいっても私のこと覚えててね。私もフウちゃんのこと忘れないから。」

「 ... !忘れるわけないでしょ!」

 二人が笑いあっていると、

「お姉ちゃん、もう入ってきていいよ!」

 はやくはやく、とライが急かすようにフウを家に入れた。

「 ... !」

 家に入った瞬間、フウは本のなだれに飲み込まれたのだった。


「お姉ちゃん、本当にごめんなさい!せっかくの誕生日なのに ... 。」

「大丈夫だから。それに私のために用意してくれたんでしょ。」

 フウの言葉にライは泣きながら頷いた。

 なだれの原因になった本は全て人間についての本だった。

 言い伝えのこともあり、図書館や本屋には人間についての本がたくさんある。

 ライは人間の世界に行きたがっているフウのためにたくさんの本をプレゼントとして用意していたのだ。

 フウは本のページをパラパラとめくっていると、「ブラックロードについて」というページに目が止まった。

「これって ... !」


 夜になり、フウはお披露目のために服を着替えるため、自分の部屋に入った。

 ふと、机の上に見知らぬ封筒がおかれていた。

 どうやら手紙のようで、宛先は私、差出人は不明。

 不審に思いつつ、封筒をあけると、中には赤い石とメッセージカードが入っていた。

「午後6時にプレゼントをお届けします。」

 そして、ちょうど午後6時を示す鐘がなった。

 途端、外から悲鳴や大声が聞こえてきた。

 外に出ると、そこには炎の海が広がっていた。

( ... ?!これが"誕生日プレゼント"なの?)

 真っ赤な世界に、フウは困惑と恐怖で立ちすくんでしまうのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ