誕生日プレゼント
精霊の寿命は大体、七百歳くらいです。
百歳の精霊は大体、中学生くらいの見た目です。
ついに私の誕生日がやってきた。
村長の娘の誕生日であるため、村はいつもよりも賑わっていた。
ある店では私の姿が描かれた絵が売られていたり(いつの間に描いたんだろう ... )、ある場所では屋台が出ていたりして、外は精霊たちでいっぱいになっていた。
もう、お祭り騒ぎである。
そして、浮かれていたのは民たちだけではなかった。
「フウ、誕生日おめでとう。」
「お姉さま、お誕生日おめでとうございます!」
「フウお嬢様、お誕生日おめでとうございます。」
母や妹、使用人までがハイテンションなのがわかった。
ただ、娘の誕生日だからではない。
この村には「人間との接触について」以外にもいくつかの言い伝えがある。
そのうちの一つに、「天の子の誕生から百年目の日に"天からの贈り物"が届くだろう」というものがある。
天の子とは村長の長子のことで、つまりフウの百歳の誕生日である今日、"天からの贈り物"が届くということだ。
"天からの贈り物"は滅多に見ることができないため、みんながそれを楽しみにしているのだ。
(平和だなぁ。)
明日にはこの村をでなければならない。
家族や友人、使用人や民たちに別れを告げずに。
ソラだけは計画を知っているため、別れを告げるつもりだ。
(でも、やっぱり寂しいな。自分で決めたことではあるんだけど。)
そんなことを考えていると、ライが、
「お姉ちゃん!ちょっと外に出ててくれる?」
「え、どうして?」
「いいから、いいから!」
と、フウは外に追い出された。
フウが家を出た瞬間、ソラが駆け寄ってきた。
「フウちゃん、誕生日おめでとう!」
「ありがと。」
フウはふと、ソラの手が土で汚れているのに気がついた。
「ソラ、その手どうしたの?」
「あれ、ホントだ。なんでだろ?」
と、ソラはすこし焦った様子で土を払い落とした。
(?)
「ソラ、どうかし ... 」
「それより、フウちゃんにこれ!」
ソラはフウの言葉に被せるようにしてフウにプレゼントを差し出した。
「 ... ?あ、ありがと。」
プレゼントは空色の朝露で作られたブレスレットだった。
「フウちゃん、向こうにいっても私のこと覚えててね。私もフウちゃんのこと忘れないから。」
「 ... !忘れるわけないでしょ!」
二人が笑いあっていると、
「お姉ちゃん、もう入ってきていいよ!」
はやくはやく、とライが急かすようにフウを家に入れた。
「 ... !」
家に入った瞬間、フウは本のなだれに飲み込まれたのだった。
「お姉ちゃん、本当にごめんなさい!せっかくの誕生日なのに ... 。」
「大丈夫だから。それに私のために用意してくれたんでしょ。」
フウの言葉にライは泣きながら頷いた。
なだれの原因になった本は全て人間についての本だった。
言い伝えのこともあり、図書館や本屋には人間についての本がたくさんある。
ライは人間の世界に行きたがっているフウのためにたくさんの本をプレゼントとして用意していたのだ。
フウは本のページをパラパラとめくっていると、「ブラックロードについて」というページに目が止まった。
「これって ... !」
夜になり、フウはお披露目のために服を着替えるため、自分の部屋に入った。
ふと、机の上に見知らぬ封筒がおかれていた。
どうやら手紙のようで、宛先は私、差出人は不明。
不審に思いつつ、封筒をあけると、中には赤い石とメッセージカードが入っていた。
「午後6時にプレゼントをお届けします。」
そして、ちょうど午後6時を示す鐘がなった。
途端、外から悲鳴や大声が聞こえてきた。
外に出ると、そこには炎の海が広がっていた。
( ... ?!これが"誕生日プレゼント"なの?)
真っ赤な世界に、フウは困惑と恐怖で立ちすくんでしまうのだった。